「コミュニケーションは【質】より【量】」は本当?上司と部下の関係は「積み上げ」が大事!
[最終更新日]2023/11/03
「職場」とは、さまざまな年齢・バックグラウンドの人々が集まる場所でもあります。
その中で、相手との円滑なコミュニケーションの取り方について悩んでいるマネージャー、管理職の方も多いことでしょう。
その際に良く挙がるフレーズに、「コミュニケーションは質より量」というものがあります。
もちろんコミュニケーションの「質」を求めることは大事なのですが、実はまず密にコミュニケーションを取るようにする、いわばコミュニケーションの「量」を重視することで、相手との関係性は高まっていくというのが、この言葉の意図です。
ただし、ただ単純に「話す回数・量を増やす」だけで必ず相手との関係性が深まるという訳ではありません。
今回はコミュニケーションの「量の大切さ」にフォーカスしつつ、職場・プライベートにおいて相手との良質な関係性を育む手法を紹介していきます。ぜひご覧ください。
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目次
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なぜ「コミュニケーションは質より量」と言われているのか
はじめに、なぜ「コミュニケーションは質より量」と言われているのか、確認していきましょう。
ここでまず意識したいのは、「コミュニケーションは、言葉のやりとりだけはない」ということです。
たとえば、あなたにとって親しく思える同僚や部下がやってきたとき、あなたはその方に対して言葉だけではなく表情やしぐさといった「シグナル」をもって、反応し迎えるのではないでしょうか。
そしてそのシグナルは、相手にも伝わるものですし、もちろん相手からもシグナルを返されたりすることでしょう。
つまり、普段私たちは意識するしないに関わらず、他者と無言の「シグナル」を送りあいながら、関係性を育んで(または変化させて)おり、それら行為も広義の意味でコミュニケーションに含まれるのです。
心理学で、「ザイオンス効果」というものもある
「コミュニケーションでは量が大切」、「相手とのシグナルの送りあいが関係性を育む」といった事柄において、アメリカの心理学者ロバート・ザイオンスが発表した「ザイオンス効果」について知っておくと、より理解は深められることでしょう。
ザイオンス効果とは、「人は、同じ人やモノに接する回数が増えるほど、その対象に対して好印象を持ちやすくなる」効果のことです。「単純接触効果」と表現されることもあります。
ロバート・ザイオンスがこの効果を確認する上で行った実験は多岐にわたりますが、たとえば「特定の人物の映った写真を数パターン、被験者に繰り返し見せていった際、被験者は頻度の多かった写真の人物に好印象を持つ傾向がある」というものがあります。
私たちの日常においても、しょっちゅう目にするTVCMでそこで紹介される商品や登場するタレントさんに段々愛着を持つようになったというような経験は、多くの人がお持ちのことでしょう。
このように、単純に接触された人やモノ、事柄であっても、それが複数回繰り返されていくうちに、人は自然と愛着や好感を持ちやすくなる、ということですね。
一方で、「ザイオンス効果には限界がある」として、単に接触する行為だけでは一定の回数を経た後では好感度は上がりにくくなると言われています。
たしかに、私たちの感覚に立ち戻って考えたときに「500回接触した人より1,000回接触した人の方が好きになります」と言われても今一つピンときませんよね。
このことは、ザイオンス効果はあくまで「単純接触」における効果を見たものであって、そこに接触の具体的な内容からの影響が含まれていないことがひとつの理由と言えるでしょう。
さて、ここで「あれ…?でもそうなると、コミュニケーションはやっぱり量よりも質のほうが重要になってくるんじゃないの?」と思われた方もいらっしゃることでしょう。
ですが、「コミュニケーションは質より量」の話にはまだ先があります。続いては、冒頭でも触れた「相手とのシグナルの送りあい」について、更に深めてのお話をしていきたいと思います。
人は、相手の「言葉」以上に多くの「シグナル」を受け取っている
自己啓発書やコミュニケーション系の研修で、「メラビアンの法則」に触れた方は多くいらっしゃることでしょう。
メラビアンの法則とは、人が「好意・反感などの態度や感情を伴うコミュニケーション」を行う際、話し手が聞き手に与える影響の大きさを、大きく「言語情報」「聴覚情報」「視覚情報」の3つの要素に分け数値化したものです(アメリカの心理学者アルバート・メラビアンが提唱)。
そして、その法則で言われる「3つの要素」とそれぞれが与える影響の割合は、以下の通りです。
要素 | 説明 | 相手に与える影響の割合 |
---|---|---|
言語情報 | 実際に話された、または言語化されたメッセージの情報 | 7% |
聴覚情報 | コミュニケーションの際の、声のトーンや口調からの情報 | 38% |
視覚情報 | 表情や目線、ボディランゲージ、その他見た目からの情報 | 55% |
参考:メラビアンの法則(3Vの法則)
「メラビアンの法則」の法則は、あくまで「好意・反感などの態度や感情のコミュニケーション」の際の実験結果から導き出した法則であり、すべての会話・コミュニケーションに当てはまるものではありませんが、これらの結果からも「人はシグナルの送りあいで関係を育んでいる」ことは伺えるでしょう。
「コミュニケーション=シグナル」と捉えた際にも、やはり「量」を意識すべき
前節では、コミュニケーションでやりとりされる内容は、言語だけではなく視覚や聴覚も用いられており、かつそれらは一層の影響を与え合っていることをお伝えしました。
では、そういった言語・聴覚・視覚の複合的なコミュニケーション(シグナル)を、私たちはどう扱っていくと良いでしょうか。
ここでもやはり、「質」を重要視したほうが良いという意見も挙がってくることでしょう。
ですが、ここでいう「コミュニケーションの質」とは、どう評価していくと良いのでしょうか。
例えば、自分が「質の高いコミュニケーションを行えた」と思っても相手がそう思うとは限りませんし、その逆もしかりでしょう。
クライアントやプレゼン相手といった、接触頻度の低い相手に対して「コミュニケーションの質」を重要視すべきシーンもあるでしょうが、上司対部下であったり、対同僚、対家族といった身近な人たちにおいては、それよりも相手への信愛の意を表す「シグナル」を普段から送り続けることが有効であるように、私は思います。
そして、相手との信頼関係というものは、一朝一夕で出来上がるものというよりは、長い年月を経て「積みあがっていくもの」です。
そのためには、「シグナル」についても一回一回の品質を意識していくよりも、絶え間ない積み上げの習慣を持つことの方が大切と言えるのではないでしょうか。
「相手との信頼関係」を効果的に積み上げていくためのポイント5点!
ここまで、コミュニケーションは言葉だけではないシグナルも含まれるものであり、その頻度(量)を高めることで、他者との信頼関係は積み上がりやすくなることをお話しました。
ここからは、実際に相手との関係性・信頼関係を効果的に「積み上げていく」ための、実践的な手法をお伝えしていきます。
今回お伝えする手法は全部で5点です。これら全部とは言わずとも、たとえばできそうなものから1つずつ意識的に行うようにするだけでも、相手との関係性を良い方向に変化させていくことができるでしょう。
- #1 自身が普段から発信している「シグナル」の性質を知る
- #2 好感を持てる「シグナル」を発信し続けている人を参考にする
- #3 相手と「その場・その時間」を共有することを大切に扱う
- #4 短い時間でも、コミュニケーションを交わす機会を積極的に作る
- #5 話しあいたい「話題」を、日頃から考える
それぞれ、順を追って見ていきましょう。
#1 自身が普段から発信している「シグナル」の性質を知る
「コミュニケーションは質より量」とは言いましたが、そうはいっても「質」があまりにも問題のあるものだったら、せっかくコミュニケーションの機会を多く取っても、相手からの好感や信頼は得られにくくなってしまうことでしょう。
まずは、あなた自身が普段から発信している「シグナル」に敏感になることが大切です。
一番手っ取り早いのは、家族や友人に、普段接しているときに自分がどんな印象を与えているか聞いてみることです。おそらく、ご自身で認識しているものと少なからずのギャップを感じることもあるでしょう。
例えば管理職・マネージャーの方々では普段の仕事で忙しくされている方も多いでしょうから、「すごく疲れているように見える」であったり、「話しながらも、頭の中では別のことを考えてたり悩んでたりしてそう」というコメントが返ってくることもあるかもしれません。
もしくは、相手によっては「いつも話をちゃんと聞いてくれる安心感がある」であったり、「関心・愛情をもって接してくれている」という感想をもらえることもあるかもしれませんね。
意識したいのは、それらの感想は、「相手が勝手に感じたこと」ではなく、ご自身が発信している「シグナル」に少なからずの影響を受けてのものだということです。
あなたが普段周囲の人たちに発信している「シグナル」がどういうものかをより深く知ることができれば、コミュニケーションの際にも相手をより慮った対応を取りやすくなることでしょう。
#2 好感を持てる「シグナル」を発信し続けている人を参考にする
自身のシグナルへの感度を高めた後は、他人の「シグナル」にも意識を向けておくと良いでしょう。
日常のコミュニケーションで印象の良い人が、どんなシグナルを発信しているのかをチェックしておくのは、ご自身のコミュニケーションをより良いものにしていくうえでも有効です。
そのほか、例えば懇親会やパーティ会場といった多数の人が触れ合う場(コミュニケーションが苦手という方はこういう機会がとても憂鬱であったりすることもあるでしょうが)においては、そのなかで多くの人に好印象を与えている人のシグナルを観察することによって、多くの気づきが得られるはずです。
そうして得られた気づきの中で、「あ、このシグナル良いな」「自分でも出来そう」といったものを取り入れていくと良いでしょう。
#3 相手と「その場・その時間」を共有することを大切に扱う
コミュニケーションを「言葉」だけでなく「シグナル」として捉えた場合、私たちがコミュニケーションを発信するうえでの選択肢の幅は、より広がりを持たせることができるはずです。
たとえば、表情や目線(アイコンタクト)、姿勢や身体の向き等──。前項で挙げたように、他の人が発信しているシグナルを参考にするのも良いでしょう。
そして、関係性を深めたい相手と時間と場所を共にした際は、その機会を「大切に扱う」ことを意識すべきです。
無理になにか気の利いたことを話すというよりも、相手と共有できたその場・その時間を大切にしていくことで、自然とあなたの「シグナル」は発信されていくものです。
#4 短い時間でも、コミュニケーションを交わす機会を積極的に作る
前項1~3に対して抵抗感なく臨めるようになったら、「短い時間でも、コミュニケーションを交わすとる場機会を積極的に作る」ことを意識していくと良いでしょう。
たとえ数分のちょっとした接触機会であったとしても、相手への好印象を与えやすいことは前章のザイオンス効果でもお伝えした通りです。
また、その際のシグナルを交わしあうことはその人との信頼関係の積み上げに持繋げられます。
#5 話しあいたい「話題」を、日頃から考えておく
最後にお伝えする手法は、なんのことはなく、「話す内容を日頃から(事前に)考えておく」ということです。
なんだそんなことか、と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、意外にこの行為をやられている方はそれほど多くありません。
また、その際は話す内容を「共通テンプレート」的に持つのではなく、相手ごとにその人に合う話題を用意しておくことをおすすめします。
特定の相手に対して、「今度会った時にこんなことを伝えてみよう」と想いを馳せることは、すなわち相手に対してより深い関心を示すことになります。
そして、他者との信頼関係というものは、関心があってこそ形成されていくものでしょう。
たとえ今現在において、相手があなたに関心をそれ程多く持っていないと感じたとしても、コミュニケーションの姿勢で大切なことは「まず与えること」です。
そういった想い・行為は、いずれ相手からも「与えられる」機会に繋がっていくことでしょう。
コミュニケーションの、「シグナル」の量を増やせば質はついてくる
ここまでお読みになられて、いかがでしたでしょうか。
今回「コミュニケーションは質より量」をもとに、他者との信頼関係の築き方について述べてきましたが、振り返ってみたときに、私たちは日ごろ他者とのふれあいの際にふとすると変に考えすぎたり深読みしすぎてしまい、結果思うようなコミュニケーションに至らなくなってしまうケースも少なくないように感じます。
一方で、私たちは「存在している」だけで、その意思に関わらず周囲に影響(シグナル)を発信していくことができます。私たちはそのことをより深く認識していたうえで、他者と向き合っていき、そして、その頻度を高めていくことが、他者との良質な関係を育むもっとも効果的なアプローチと言えるのではないでしょうか。
この記事を読まれた方々が、職場やプライベートにおいて、多くの方と価値のあるコミュニケーションの機会に多く恵まれることを、心より願っております。
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