若い管理職が部下との関係性を深めていくためには
[最終更新日]2023/11/03
20代でも、前向きに仕事に取り組みきちんと実績を残せば、早々に管理職に抜擢されることがあります。
若くても結果を残す社員には往々にしてチャレンジ精神があり、体験を通して学ぶことも多く、経営陣はそれが会社に将来につながると考え、新たなステージを用意しようと思うからです。
しかし、20代の管理職の多くは年上や同僚が部下になり、コミュニケーションの取り方に悩むケースが多いのも事実です。
そこで今回は、若い管理職が部下とコミュニケーションをはかるうえで注意したいことについて、お話ししたいと思います。
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目次
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部下とのコミュニケーションの悩みが深くなる3つの理由
一般社員の時は自分に与えられた目標をクリアするだけで、結果を残すことができました。
しかし部署を率いる管理職となると、個人ではなくチームの成果を問われます。
その目標達成のためにも、部下とのコミュニケーションが重要なのですが、立場が変わるとコミュニケーションが取りにくくなると感じる若い管理職が多いのです。
では、なぜ部下とのコミュニケーションが取りにくくなるのか、その理由について考えてみましょう。
①部下と年齢が逆転してお互い「やりづらく」なる
若くして管理職に抜擢されたことで、それまで先輩として指導を仰いでいた年上の社員が部下になるのは珍しいことではありません。
つまり、職歴の長さと上下関係が逆転してしまうのです。
相手の立場に立つと、「自分より職歴が短く、人生経験も浅いヤツが上司になるなんて納得できない」という気持ちになるのは、致し方ないことです。
また、それまで後輩であった管理職が年上や同僚の社員に気を使ってしまうことも、往々にして見られます。
どちらにしてもそれまでと違い、双方に仕事がやりづらくなってしまうのです。
部署の目標を達成するためには、部署の社員の気持ちが一つになる必要がありますが、そうした雰囲気になりづらく、成果が上がらないというケースも少なくないようです。
②プレーヤーと管理職で、周囲から求められるスキルが異なる
プレーヤーである一般社員が目標達成する際に必要なのは、その職務に必要なスキルです。
営業職であってもエンジニアであっても、業務のスキルが長けていれば、成果をあげることができます。
しかし、管理職になって求められるのは、業務スキルではありません。
それまでと同じ業務の部署を任された場合でも、自分ができることが部下にできるとは限りません。
自分がその目標をクリアし、若くして管理職になった人ほど、なぜ部下が自分と同じようにできないのかにいら立ち、それを相手にぶつけてしまうケースも多くあります。
管理職として結果を出すためにはマネジメントスキルが不可欠ですが、それが若い管理職に備わっているかというと、なかなかそうはいかない現状があります。
③経験が少ないため、試行錯誤しながらコミュニケーションを取ることになる
管理職の仕事は部下を育成し、組織のマネジメントを行うことです。
ハーバード大学のバート・カッツ教授が提唱した「カッツ・モデル」では、管理職は段階に応じて求められるスキルが異なるとしています。
カッツ・モデルでは、管理職には「テクニカルスキル」「ヒューマンスキル」「コンセプチャルスキル」の3つが必要とされており、そのバランスが役職によって異なります。
若い管理職の場合は、3つのスキルのなかでもテクニカルスキルが突出しているのが一般的です。 しかし、組織運営において最も重要なのはヒューマンスキルで、ここには「リーダーシップ」や「コミュニケーション」「ファシリテーション」「コーチング」「プレゼンテーション」「交渉力」「調整力」などが含まれます。
若い管理職はこうした対人関係力を磨く経験が少ないことが多く、部下とのコミュニケーションも試行錯誤になりがちなのです。
「考え方」を少し変えるだけで、コミュニケーションの悩みが解消されることもある
それまで個人の目標達成を続けてきた人ほど、管理職になっても同じように結果を残すことにこだわります。
それは職務でもありますが、部下にはっぱをかけるだけでは、組織運営はうまくいきません。
また、一般社員と同じ考え方を持ち続けているうちは、部下の育成や組織のマネジメントは円滑に進まないものです。
つまり、管理職として結果を出すためには、まず自分の考え方を変え、部下とのコミュニケーションの取り方を見直す必要があるのです。
ではどうしたら自分の考え方を変えて、部下とのコミュニケーションを円滑にすることができるのか、次章でお話ししたいと思います。
誰もが悩む「年上部下との付き合い方」
年上部下も、年下上司もお互い反発心を覚えやすい
では、年下の管理職と年上の部下の組み合わせだと、トラブルが起こりやすい理由は何なのでしょうか。
リクナビNEXTが運営しているエンジニアライフ応援サイト「Tech総研」で紹介されている具体例に基づき、整理してみましょう。
ここではエンジニアのケースについて紹介されているのですが、年下上司が年下部下に感じやすい不満として
- キャリアへの自負があるため、年下上司の指示に従わない
- クライアントに年下部下が上司だと勘違いされて気まずくなる
- 年下上司にミスを指摘された時、素直に認めない
- 経験の少ない年下上司をバカにする
などがあげられました。
一方の年上部下の年下上司に対する不満としては、
- 実力が伴っていないのに態度が大きい
- 失敗した責任を部下に押しつける
- 業務全体の流れや進行、関連部署に対する配慮に欠ける
- 理屈ではなく、感情的に年下上司に頭を下げたくない
などがあげられていました。
双方が自分の感情を優先させるので、お互いに反発心を覚えてしまいがちになります。
コミュニケーションのポイントは「好意を表現すること」
とはいえ、年上部下と年下上司が常に反目しているかというと、そうではないようです。
2013年に東京労働局が発表した「高齢者の継続雇用に関する実態調査」をみると、「定年時に自分の部下、同僚であったものの下で働くことにストレスを感じるか否か」という設問に対する回答の約7割が、「感じない」を選択しています。
20代・30代・40代の年上部下の意識に多少の違いはあると予想されますが、終身雇用制度が崩壊し、能力主義で企業運営されている現代では、年下上司を受け入れざるというのが本音でしょう。
しかし、年下上司になる管理職側の意識によって、組織運営がうまくいくかどうかが決まることを忘れてはいけません。
若くして管理職に抜擢されるのは、プレーヤーとして能力が高かったことのあらわれですが、年上を含めた自分の部下も同じように成果を出せるとは限りません。
部下の不出来さを嘆いたり、努力を認めず結果だけを重視しているようでは、部署の目標を達成することはできないのです。
管理職として組織をマネジメントするうえで大切なのは、部下に信頼されることです。
信頼関係を築くためには、お互いに好意を持つことのが大きなポイントになります。
だからこそ、年下上司である管理職自身がまず部下に好意を示すから始めたいところです。
残業が続いている時に差し入れをしたり、旅行の際にお土産を買ってきたり、「がんばってくれてありがとう」と一言添えるだけで、人間関係が好転するきっかけがつかめます。
まず、自分から歩み寄る努力を始めましょう。
上司は「傾聴」の意識があると、関係性は育みやすい
年下上司に限らず、管理職が組織をマネジメントするにあたり、意識してほしいことがあります。
それは、部下の話を積極的に傾聴する姿勢を持つことです。
傾聴とは、アメリカの心理学者であるカール・ロジャース氏が、自らのカウンセリング経験に基づき提唱した理論です。
カウンセリングに限らず、聴く側が「共感的理解」「無条件の肯定的関心」「自己一致」という3つの要素を持ち、相手の話を100%理解しようとすることが、良好な人間関係や信頼関係の構築に役立つのです。
なぜ職場で部下の話を傾聴することが重要かというと
- 部下にとって上司に話を理解してもらえることは喜びや安心感につながる
- 部下は話を聞いてもらうことで悩みの解消や不安を軽減できる
- 部下が悩みを言語化することで客観視でき、考えを整理できる
- 上司にとっては、部下が置かれている状況や気持ちが理解できる
- 上司は部下の状況を改善する手を打つことができる
など、組織運営にプラスになることばかりだからです。
「仕事を任せる技術」を身につける
特にプレイングマネージャーは仕事量が膨大になりがち
若い管理職であってもマネジメント業務専任であれば自ら学び、さまざまな経験を通してスキルを磨いていくことができるでしょう。
しかし、若くして管理職に抜擢される場合、プレイングマネージャーになることが多いものです。
プレイングマネージャーは個人としての目標と、管理下にある部署の目標を両方達成しなければなりません。
それを実現するためには、どうしても業務過多になりがちです。
そして、能力が高い若い管理職ほど「他人に任せるより自分でやる方が早いし確実」という思考になりがちで、1人で抱え込む傾向が強いです。
とはいえ、1人ですべての業務を完璧にこなすのは、かなり難しいと言わざるをえません。
そう考えると、管理職が意識を変えて部下に適度に仕事を割り振り、サポートを受けながら仕事をするという意識を持つことが大切なのです。
能力はあるのに「若さ」が原因で仕事が上手くいかない人も多い
20代で管理職に抜擢される人は、業務遂行能力が高いものです。
また、離職率が高い会社で勤続年数が長くなった結果、管理職に登用される人もいます。
会社に評価されたから管理職になったわけですが、周囲の先輩や同僚がその結果を素直に受け止めてくれるとは限りません。
また、キャリアの浅い若い管理職は経験が浅く、仕事でトラブルが起こった時の判断や対処法に迷うこともあるでしょう。
さらに社内では能力が評価されていても、社外のクライアントが信頼してくれるかどうかは別問題です。
役職がついていることより見た目の年齢で判断する担当者の場合、上司として自分が同行したことで、火に油を注ぐ可能性もあります。
そうした事態に陥った時に頼りになるのは、やはり経験豊富な年上部下ではないでしょうか。
周囲の力を借りることで社内外の仕事がスムーズに進むなら、部下と良好な関係を築き、積極的にサポートを受けられる環境をつくる方法を考えるのも、管理職の実力のうちかもしれません。
「怒る」と「叱る」の違いを知る
注意するときのポイントは「怒る」ではなく「叱る」こと
管理職の仕事の一つに、部下の育成があります。
仕事をするなかでミスをするのは誰にでもあることですが、管理職の場合は部下が失敗した時に注意をする必要があります。
基本的に、人は誰でも注意を受けることを好みません。
特に年上部下の場合、年下上司に注意されることを屈辱と感じる人も少なくないようです。
そこで、部下に注意をする時には「怒る」のではなく、「叱る」ことを意識することをおすすめします。
そもそも怒ることは、相手の行動に対して自分がどう思ったかをぶつける、自分本位の行為です。
一方の叱ることは、相手に気づきを促し、取るべき行動や成長につなげる、相手本位の行為となります。
とはいえ、自分は叱っているつもりでも、相手がその通り受け取らなければ、人間関係を悪化させるきっかけになりかねません。
そこで、部下に注意をする時には、管理職としての自分の考えを部下に理解させるための「説得」ではなく、部下が指摘された注意点が腑に落ちるように「納得」させることを意識しましょう。
そのためには、叱るプロセスを理解しておくことが大事です。
そのポイントは、
- 叱るのは、その場・その時を原則とする
- 人前や個室では叱らず、他者に聞かれないように配慮する
- 叱る本人に直接話す
- 叱る前に事実確認をする
- 事実確認に主観を入れない
- 起こったミスに対して、管理職である自分がどんな気持ちになったかを伝える
- そのうえで今後取るべき行動について具体的に示す
- 相手が納得しているかどうかを確かめ、最後はポジティブな言葉をかける
などです。
ぜひ、実践してみてください。
年上部下から「叱られた」ら、受け入れて行動を変える
社内の立場は年下上司の方が上であっても、年上部下より経験が少ないのは事実です。
管理職になったことでやる気が空回りし、周囲との溝をつくっている年下上司がよく見られます。
また、管理職になったことで居丈高になり威張り始めたり、反対に年上部下に気を使って謙虚になり過ぎる年下上司も少なくないようです。
そのどちらであっても、年上部下にとっては一緒に仕事をやりづらい上司といえます。
かつて仕事を教えてくれた先輩が部下になった場合、管理職になった後輩を思って、あえて立場を超えて苦言を呈してくれることもあります。
その時に、年上部下から叱られたことをどう受け止めるかで、その後の管理職としての成長度合いが変わると認識しておきましょう。
自分を思って叱責してくれたこと、そこで言われた内容を真摯に受け止め、自分の行動を変える努力をすれば、やがて周囲に認めてもらえるようになるはずです。
しかし、年上であっても部下が自分を叱ったことが許せないと感じるなら、組織のなかで良好な人間関係を築くのは難しく、その後の組織運営にマイナスに作用します。
立場や年齢ではなく、人として相手の言葉を受け入れようとする姿勢が、管理職には必要といえるのではないでしょうか。
円滑な組織運営にはコミュニケーションが不可欠!
今回は、若い管理職が部下とコミュニケーションをはかるうえで注意したいことについて、お話ししました。
若い管理職が年上部下を含めた組織を円滑に運営していくためには、
- コミュニケーションをとる際に相手への好意をあらわす
- 部下の話を聞くときは傾聴することを意識する
- 何でも自分で抱えず、周囲に協力やサポートを受けられる人間関係を築く
- 部下の叱り方に配慮する
- 自分の未熟さを指摘された時には真摯に受け止める
という姿勢が大切です。
年上の部下をもっても、しっかり組織運営して結果を残している若い管理職はたくさんいます。
管理職として手腕を発揮するために、この記事を参考にできることから始めていただけたら幸いです。
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