最新作『TENET テネット』も話題! クリストファー・ノーラン監督全作品解説
[最終更新日]2022/12/15
現在、最新作『TENET テネット』が絶賛公開中のクリストファー・ノーラン監督。
複雑なストーリーラインと、哲学性のあるテーマによって、世界中に多くのファンを獲得しています。
「時間の逆行」をテーマにした『TENET テネット』にちなんで、今回はクリストファー・ノーラン監督全11作品をキャリアを”逆行”しながらご紹介していきたいと思います!
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Index
目次
- 『TENET テネット』(2020年/アメリカ/150分)
- 『ダンケルク』(2017年/イギリス・アメリカ・フランス/106分)
- 『インターステラー』(2014年/アメリカ/169分)
- 『ダークナイト ライジング』(2012年/アメリカ/164分)
- 『インセプション』(2010年/アメリカ/148分)
- 『ダークナイト』(2008年/アメリカ/152分)
- 『プレステージ』(2006年/アメリカ/130分)
- 『バットマン ビギンズ』(2005年/アメリカ/140分)
- 『インソムニア』(2002年/アメリカ/119分)
- 『メメント』(2000年/アメリカ/113分)
- 『フォロウィング』(1998年/イギリス/70分)
- まとめ)「革新性」によって第一線を走り続ける鬼才
『TENET テネット』(2020年/アメリカ/150分)
【あらすじ】
ウクライナでテロ事件が勃発。出動した特殊部隊員の男は、捕らえられて毒を飲まされる。しかし、毒はなぜか鎮静剤にすり替えられていた。その後、未来から「時間の逆行」と呼ばれる装置でやって来た敵と戦うミッションと、未来を変えるという謎のキーワード「TENET(テネット)」を与えられた彼は、第3次世界大戦開戦の阻止に立ち上がる。
未来を、取り戻す
2020年9月18(金)より日本でも公開が始まった『TENET テネット』は、『007』シリーズのファンを自認するクリストファー・ノーラン監督によるまったく新しいスパイ映画となっています。
ある日、特殊部隊員の「名もなき男(主人公)」は、来る第三次世界大戦を防ぐための極秘ミッションに駆り出されることになります。
未来で起こるとされる世界大戦を、なぜ事前に察知することができたのか。
それは、「時間の逆行」を起こす装置が、未来から送られてきたため。
本作は、多くのSF作品で用いられる「タイムトラベル」とは異なり、未来も過去も現在も、すべて「一つの時間軸上」に存在しているところがポイント。
そのため、10分前に戻るには、10分間「逆に進む」必要がある。
回転扉を模した時間装置によって行われる時間の逆行も見どころの一つですが、本作の白眉はラストで展開される「順行する時間」と「逆行する時間」が入り乱れながらの戦闘シーン。
CG技術による映像加工が当たり前となった現在において、なお新しい映像表現にこだわるノーラン監督による最新作は、同時に彼のキャリアの中でも最難関の複雑な物語になっています!
『ダンケルク』(2017年/イギリス・アメリカ・フランス/106分)
【あらすじ】
ポーランドを侵攻し、そこから北フランスまで勢力を広げたドイツ軍は、戦車や航空機といった新兵器を用いた電撃的な戦いで英仏連合軍をフランス北部のダンケルクへと追い詰めていく。この事態に危機感を抱いたイギリス首相のチャーチルは、ダンケルクに取り残された兵士40万人の救出を命じ、1940年5月26日、軍艦はもとより、民間の船舶も総動員したダイナモ作戦が発動。戦局は奇跡的な展開を迎えることとなる。
新兵たちの地獄の戦場巡り
クリストファー・ノーラン監督による10本目の監督作品は、キャリア初の「史実」を基にした戦争映画。
映像派の監督が、戦争をどのように描くのか、公開前から注目されていた話題作です。
「ダンケルクの戦い」は、第二次世界大戦下のドイツ軍と英仏軍の戦いです。
ドイツ軍の猛攻により海岸に追いつめられた英仏軍は、輸送船、小型艇、民間船など、あらゆる手を尽くし40万人の兵士たちを脱出させた奇跡的な作戦を決行しました。
本作『ダンケルク』では、撤退までの推移を「陸:一週間前」「海:一日前」「空:一時間前」という異なる視点・時間軸で描いていきます。
これら3つの視点はそのまま「陸:逃亡者」「海:傍観者」「空:戦闘者」の物語として観ることが可能です。
陸視点ではドイツ軍の姿は一切描かれず、いつ、どこから飛んでくるか分からない攻撃に怯えながら逃げ続ける新兵たちの姿。
海視点では戦地から離れた場所から見守るしかない民間人の姿。
空視点では、作戦の成功を援護するためドイツ空軍と闘うパイロットの姿。
三者の視点が、撤退作戦を前に徐々に交差していく語り口は、まさにノーラン監督の真骨頂です。
ダンケルク
調査日:2020/09/25
○印は見放題配信。金額表示はレンタル料金です。動画の配信状況はマネージャーライフが調査した時点での情報です。詳細は各公式サイトでご確認頂けますようお願いします。
『インターステラー』(2014年/アメリカ/169分)
【あらすじ】
近未来、地球規模の食糧難と環境変化によって人類の滅亡のカウントダウンが進んでいた。そんな状況で、あるミッションの遂行者に元エンジニアの男が大抜てきされる。そのミッションとは、宇宙で新たに発見された未開地へ旅立つというものだった。地球に残さねばならない家族と人類滅亡の回避、二つの間で葛藤する男。悩み抜いた果てに、彼は家族に帰還を約束し、前人未到の新天地を目指すことを決意して宇宙船へと乗り込む。
未来を生きる子供たちのために
ノーラン監督作の中でも最長となるのが本作『インターステラー』。
食糧難に陥った近未来を舞台に、人類移住の惑星を探すためのミッションに挑む宇宙飛行士たちの姿が描かれます。
宇宙空間を舞台にしたSFとなる本作では「特殊相対性理論」や「不可逆性の時間」などの科学的考証の末に紡がれたオリジナル脚本で、ある惑星での数十分が地球での23年間に相当するなど、神秘に包まれながらも恐ろしい宇宙が描かれています。
また、本作のテーマは「愛」。
未知の領域に触れ、さまざまな困難に陥る宇宙飛行士たちは、最後には「愛」だけを信じ、突き進んでいく。
物語の前半に差し挟まれる印象的な「本棚の幽霊」のシーンが、クライマックスでの重要なシークエンスに繋がるなど、監督お馴染みの巧みなストーリーテリングも健在。
CGを極力排し、実写での撮影にこだわる監督による映像など、間違いなく映画史に名を残す傑作となっています。
インターステラー
調査日:2020/04/28
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『ダークナイト ライジング』(2012年/アメリカ/164分)
【あらすじ】
ジョーカーがゴッサム・シティーを襲撃するものの、ダークナイトが死闘を繰り広げ彼を撃破してから8年後。再びゴッサム・シティの破壊をもくろむベインが現われ……。
伝説、終焉
2005年の『バットマン ビギンズ』から始まったバットマン三部作の完結編が『ダークナイト ライジング』。
前作での宿敵ジョーカーとの闘いの直後から連なる物語で、新たな敵の襲来によって窮地に陥ったゴッサム・シティを救うため、前作でヒーローから一転して「市民の敵」となったバットマンが再び立ち上がります。
成り立ちからして負の要素の強いバットマンは、本作中盤まで敵の支配下に置かれ、崩れ行くゴッサム・シティをただ黙って見守るしかない。
彼は暗い穴の中で自分自身と向き合い、再び這い上がるまでを丁寧に描くことで、後半からのアクションシーンをより説得力のあるものにしています。
ノーラン監督によるバットマン三部作は、ヒーロー映画にしてヒーロー映画に非ず。
犯罪多発の街ゴッサム・シティを守るヒーロー:バットマンと、大富豪:ブルース・ウェインという2つの顔を持ち合わせる主人公が、最後に選んだ選択。
本作のラストこそが、これまで幾度となく映画化されてきたバットマン作品のいずれとも異なる余韻を残し、「暗黒神話」として唯一無二の存在へと、作品を昇華させました。
ダークナイト ライジング
調査日:2020/09/25
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『インセプション』(2010年/アメリカ/148分)
【あらすじ】
人が眠っている間にその潜在意識に侵入し、他人のアイデアを盗みだすという犯罪分野のスペシャリストのコブは、その才能ゆえに最愛の者を失い、国際指名手配犯となってしまう。そんな彼に、人生を取り戻す唯一のチャンス「インセプション」という最高難度のミッションが与えられる。
他人の夢を映像化
レオナルド・ディカプリオ、渡辺謙の共演でも話題になった『インセプション』は、人間の夢の中という「インナースペース」を舞台にしたSFアクション巨編です。
レオナルド・ディカプリオ演じる主人公のコブは、他人の意識化に侵入し、アイデアを盗む犯罪者。
ある日、日本の大富豪から、競合会社の次世代社長の脳内に侵入し、別のアイデアを植えつけるという、最高難度の「インセプション」の依頼が舞い込んでくる。
本作の肝は、いかに「夢の中」を映像的説得力をもって描けるかにあります。
ある意味、何が起こっても不思議ではない夢の中であるだけに、そのハードルは決して低くはなかったはず。
その点、ノーラン監督は夢の中を三階層に分けることによって、複雑かつ奇抜な世界観を創り上げました。
夢の中は『インターステラー』で描かれた相対性理論にも通ずる時間間隔で、一階層目では橋から水面に着水するまでの時間の中、二階層目では天地がひっくり返ったホテル内での戦闘シーンが並行して描かれるなど、さまざまな見せ場の連続で飽きさせません。
この世界から抜け出すためには「夢から醒める」しか方法はないのですが、ラスト、果たしてコブは夢から醒めたのか、それとも……。
その答えは観客一人一人に委ねられています。
インセプション
調査日:2020/07/07
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『ダークナイト』(2008年/アメリカ/152分)
【あらすじ】
ゴッサム・シティに現れた史上最悪の犯罪者ジョーカー。バットマン=ブルース・ウェインは、協力するゴードン警部補や新任地方検事ハービー・デントらとともにジョーカーに立ち向かうが……。
誰が”闇の騎士”か
ノーラン監督によるバットマン三部作の二作目にあたる『ダークナイト』では、原作コミックでも屈指の人気ヴィランであるジョーカーが登場し、演じるヒース・レジャーの熱演も含め、世界中で大ヒットを記録しました。
昨年はジョーカーの背景を描いた『ジョーカー』が話題になりましたが、本来のジョーカーは、生い立ちから何からすべてが謎に包まれているがゆえにある種の崇高さまで放つ悪役キャラ。
そんな最強の宿敵を前に翻弄されるバットマンは、ゴッサム・シティの新地方検事ハービー・デントらとともにジョーカーを捕まえる作戦を企てますが、ジョーカーによって張り巡らされた罠により、事態は困窮を極めていく。
中盤で登場するもう一人のヴィランの出現により、バットマン、ジョーカーを交えての三つ巴の闘いへと舵を切っていく本作。
それは同時に、「悪の相対化」をテーマにして「正義とは? 悪とは?」という問いを観客へと投げかけます。
本作のラスト、タイトルにもなっている「ダークナイト=闇の騎士」へと変貌し暗闇へ消えていくバットマンの後ろ姿に、次作への期待感も最高潮に達することでしょう。
ダークナイト
調査日:2020/09/25
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『プレステージ』(2006年/アメリカ/130分)
【あらすじ】
若く野心に満ちたロバートとアルフレッドは、マジシャンの助手をしていた。ある晩、舞台の事故でロバートの妻が亡くなったことが原因で二人は敵対するようになる。その後、彼らは一流のマジシャンとして名声を得るが、その争いは次第に激しさを増す。
稀代のマジシャン2人の究極の化かし合い
小説家クリストファー・プリーストの原作『奇術師』を、ヒュー・ジャックマン、クリスチャン・ベイルという二大スターの共演で映画化したのが『プレステージ』です。
本作は「いかにして相手を欺くか」という妄念に囚われた二人の男の対決となっています。
かつては互いにマジシャンの助手を務めながらも、自らの力でマジシャンとして独り立ちしたロバートとアルフレッド。
しかしある日、アシスタントであるロバートの妻が、脱出マジック失敗による事故で亡くなってしまったことから、ロバートはアルフレッドに疑念を抱き始めるようになります。
敵対関係となった彼らは「瞬間移動」という未だ誰も成し遂げたことのないイリュージョンの達成に挑んでいくことになります。
マジックをテーマにした映画作品の弱点は、いかなる現象も「映像で加工したもの」と見なされ観客の驚きが得られにくい点にありますが、ノーラン監督はまさにそこを逆手に取り、観客を煙に巻きます。
二人の男がそれぞれに辿り着いた「瞬間移動」のトリックとは?
結末は誰にも暴けないミステリー作品です。
プレステージ
調査日:2020/09/25
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『バットマン ビギンズ』(2005年/アメリカ/140分)
【あらすじ】
両親を殺害されたブルース・ウェインは、世の中に幻滅し、不当な闘いを終わらせ、弱者を餌食にする悪党を倒すことを心に誓う。
彼はいかにしてヒーローになったのか
これまで小規模の作品を撮り続けてきたノーラン監督による長編第4作目は、まさかの人気アメコミキャラ、バットマンの映画化。
それまでにもバットマンは幾度か映画化されてきましたが、コミック・ヒーローらしい娯楽性を重視したアクション大作として描かれるのが主流でした。
しかし、『バットマン ビギンズ』でノーラン監督はこれまでのバットマンの歴史を一新、両親を殺されたブルース・ウェインが「なぜバットマンとなったか」をじっくり、丹念に描いた重厚な一作となっています。
幼い頃に事故で井戸の底へと落ちてしまったブルース少年は、暗がりの恐怖と、井戸の底に巣くっていたコウモリによってトラウマを植えつけられてしまう。
そんな彼が大人になり、あえて自身のトラウマの対象であるコウモリを模した衣装を身に纏うことで、彼のトラウマの克服と、恐怖を秘めながら悪と闘うことの正当性を提示する、三部作の序章として重要な作品となっています。
バットマン ビギンズ
調査日:2020/09/25
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『インソムニア』(2002年/アメリカ/119分)
【あらすじ】
白夜の季節のアラスカの小さな町で、全裸の少女の猟奇殺人事件が発生、ロサンゼルス警察のベテラン警部ドーマーと相棒は捜査に赴く。が、ドーマーは警察上層部から彼の内偵を命じられていた相棒を事故死させ不眠症に陥り、猟奇殺人犯は彼の弱みを知り取引きを申し出る。
終わらぬ夜の殺人
『インソムニア』は、ノーラン監督のキャリアで唯一脚本を務めていない作品となっています。
そのため、監督ならではの斬新な語り口は期待できないものの、地に足の着いた重厚なサスペンス映画となっています。
タイトルにもなっている「インソムニア」は英語で「不眠症」を意味します。
主人公の警部ドーマーは、殺人事件の捜査中、誤って相棒を射殺してしまう。
その日から彼は、罪悪感による不眠症に悩まされますが、彼の元に「事件の犯人」を名乗る男から電話がかかってくる。
主人公のドーマーを演じるのは『ゴッドファーザー』シリーズや『スカーフェイス』などのアル・パチーノ、犯人の男をロビン・ウィリアムズと、二大スターの共演も見どころの本作。
後に『バットマン ビギンズ』でハリウッド大作を手掛けるに至るノーラン監督は、本作でスター俳優を演出する術を学んだのかもしれません。
『メメント』(2000年/アメリカ/113分)
【あらすじ】
強盗犯に襲われて妻を失い、頭部を損傷し、約10分間しか記憶を保てない前向性健忘という記憶障害になったレナード。彼は、ポラロイド写真にメモを書き、体中にタトゥーを彫って記憶を繋ぎ止めながら、犯人を追う。
最初の記憶は、妻の死
ノーラン監督による長編第二作目は、デビュー作『フォロウィング』に引き続き、時間軸をシャッフルしたミステリー作品です。
主人公のレナードは、強盗に襲われたことによる後遺症で、10分間しか記憶を保てない前向性健忘を抱えることに。
そんな彼が後遺症を抱える前の一番新しい記憶として保持しているのは、強盗によって最愛の妻を殺害されたこと。
犯人への復讐を誓う彼は、犯人へと繋がる新たな情報を忘れないため、ポラロイド写真とメモ、そして自身の身体に刻み付けたタトゥーを手掛かりに、犯人へと迫っていきます。
本作は、ついにレナードが犯人へと辿り着き復讐を果たすカットから始まり、そこから時系列を遡っていくことで事件の真相が明かされる語り口となっています。
「時間軸の反転」は、最新作の『TENET テネット』にも通じます。
複雑なパズルのピースが完成されていくような快感と、ラストで明かされる真相は、間違いなく映画作家クリストファー・ノーランだからこそ為せる業です。
メメント
調査日:2020/07/07
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『フォロウィング』(1998年/イギリス/70分)
【あらすじ】
作家志望の青年ビルは、創作のヒントを得るために通りすがりの人々の後を尾けている。ある日、いつものようにある男を尾行していたら、男にばれてしまう。コッブと名乗るその男もまた、他人のアパートに不法侵入しては、私生活の秘密を探る行為に取りつかれていた。ビルはコッブに感化され、行動を共にするように。数日後、ふたりで忍び込んだアパートで見た写真の女に興味を惹かれたビルは、彼女の後を尾けはじめる……。
「尾行」がもたらす数奇な結末
ノーラン監督による記念すべきキャリアの一作目は、わずか70分のインディーズ映画。
監督・脚本・製作・撮影・編集をすべて一手に引き受けた本作は、低予算ながら後に見られる入り組んだストーリーテリングの妙味が詰まった作品になっています。
作家志望の主人公ビルが、街で見かけたある男を尾行することから辿る数奇な出来事を、ノワール調のモノクロ画面で時系列をシャッフルしながら描き出していきます。
「尾行」という、ある種安全圏から一方的に相手を見つめる行為が、彼の尾行対象であるコップという男にバレてしまうという一連の流れは、「監督と、作品を観る観客」のメタファとしても置き換えることが可能です。
コップに誘われるままに他人の部屋に侵入する行為を繰り返していたビルは、ある日ついに事件に巻き込まれてしまう。
その事件の顛末は、そしてコップの正体とは?
その巧みな語り口に酔いしれてみてください。
まとめ)「革新性」によって第一線を走り続ける鬼才
いかがでしたか。
クリストファー・ノーラン作品を並べて鑑賞してみると、それぞれ異なるストーリーでありながら、通底するテーマの一貫性が浮かび上がってきます。
それはインディーズ時代からハリウッド大作を手掛ける名監督となった現在でも、変わらず持ち続けているノーラン監督の資質です。
約3年周期でやって来るクリストファー・ノーラン監督作。
次なる新作が今から待ちきれません!
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