クリント・イーストウッド監督映画おすすめ10選
[最終更新日]2022/12/15
御年90歳になるクリント・イーストウッドは、未だに現役映画監督としてほぼ一年に一本のペースで新作映画を撮り続けています。
今回は、そんな「映画監督」イーストウッドの作品群を、キャリアを順に遡っていきながらご紹介していきたいと思います。
これを機に、イーストウッドの作品の奥深さを味わってみてください!
<スポンサーリンク>
Index
目次
- 『許されざる者』(1992/アメリカ/131分)
- 『パーフェクト ワールド』(1993/アメリカ/138分)
- 『マディソン郡の橋』(1995/アメリカ/135分)
- 『トゥルー・クライム』(1999/アメリカ/127分)
- 『ミリオンダラー・ベイビー』(2004/アメリカ/133分)
- 『父親たちの星条旗』(2006/アメリカ/132分)
- 『硫黄島からの手紙』(2006/アメリカ/141分)
- 『インビクタス/負けざる者たち』(2009/アメリカ/134分)
- 『ヒア アフター』(2010/アメリカ/129分)
- 『アメリカン・スナイパー』(2014/アメリカ/132分)
- まとめ)70年近い俳優・監督としてのキャリア。しかしテーマは一貫している!
『許されざる者』(1992/アメリカ/131分)
【あらすじ】
1870年代の米ワイオミング。かつては無法者として悪名を轟かせたウィリアム・マニーだったが、今は若い妻に先立たれ、2人の幼い子どもとともに貧しい農夫として静かに暮らしていた。そこに若いガンマン、キッドが立ち寄り、賞金稼ぎの話を持ちかける。
許されざる者とは誰か
本作『許されざる者』は、第65回アカデミー賞の作品賞含む主要4部門を制覇し、「映画監督クリント・イーストウッド」の看板をより強固なものにした記念碑的一作です。
数多くのマカロニ・ウエスタンや『ダーティハリー』シリーズのアウトロー役で、アクションスターとしては一定の位置を確立していたイーストウッドでしたが、監督としては今一つの評価を受けてきました。
本作でイーストウッド自身が演じるウィリアム・マニーは、過去の罪と向き合い、一切の犯罪からは足を洗い静かに暮らしている男。
過去の主演作の数々でアメリカの「マッチョイズム」を体現するような存在だった自身を清算するかのようなこちらの役は、イーストウッドの決意の表れだったのかもしれません。
しかし、そんなマニーの元に、町で極悪非道の限りを尽くしている悪党たちの首を獲るよう、依頼が来る。
生活苦から、マニーは再び銃を手に取る苦渋の決断を下す。
本作でマニーの敵となる存在が、ジーン・ハックマン演じる保安官。
自身の「正義」を行使するためには暴力も厭わない、かつてのマニーと鏡像関係にある男。
本作のテーマは「善と悪」と捉えることができるでしょう。
ある者にとっての「正義」は、またある者から見れば「悪」となり得る。
そんな終わりなき連鎖の果てに、男たちは罪を清算できるのか。
観終わった後、タイトル『許されざる者』の持つ意味がずしんと胸に迫る傑作西部劇です。
許されざる者
調査日:2020/07/14
○印は見放題配信。金額表示はレンタル料金です。動画の配信状況はマネージャーライフが調査した時点での情報です。詳細は各公式サイトでご確認頂けますようお願いします。
『パーフェクト ワールド』(1993/アメリカ/138分)
【あらすじ】
1963年、テキサス州。ブッチ・ヘインズ(ケヴィン・コスナー)は、アラバマ刑務所から同じ囚人のテリー・ピュー(キース・サセバージャ)と脱走した。途中、8歳の少年フィリップ(T・J・ローサー)の家に押し入った2人は少年を人質に逃亡するが、ブッチはフィリップに危害を加えようとしたテリーを射殺する。すぐに厳重な警戒線が張られ、州警察署長のレッド・ガーネット(クリント・イーストウッド)が陣頭指揮に当たった。
完璧な世界はどこにもない
イーストウッドがケヴィン・コスナーを主演に迎え映画化した1993年の作品。
刑務所から脱走した主人公が、8歳の少年を人質に取り逃亡を続ける中で、二人のあいだに絆が芽生えていく。
「ストックホルム症候群」という言葉があります。
ストックホルムにおいて起こった強盗事件で、人質が犯人に共感し、果てはその逃亡にまで手を貸してしまうなどの心理的混乱に陥ってしまう現象を指します。
はじめ主人公のブッチは、少年フィリップを「交渉の際の道具」としてしか見ていませんでしたが、逃亡を続けていく過程で、自身の親に愛されなかった過去を、フィリップに重ねます。
一方のフィリップもまた、宗教に傾倒しネグレクト気味の両親よりも、自身のことを理解してくれるブッチに心を開いていきます。
二人は次第に「疑似親子」のような関係を築いていきます。
そんな彼らを追う警察長のガーネットもまた、少年時代のブッチをよく知り、彼を息子のような眼差しで見つめている。
三者による血の繋がりを超えた絆が、本作の大きなけん引力になっています。
彼らの旅はどのような結末を迎えるのか。
ぜひこれを機会に見届けてみてください。
パーフェクト ワールド
調査日:2020/07/14
○印は見放題配信。金額表示はレンタル料金です。動画の配信状況はマネージャーライフが調査した時点での情報です。詳細は各公式サイトでご確認頂けますようお願いします。
『マディソン郡の橋』(1995/アメリカ/135分)
【あらすじ】
65年秋。フランチェスカは結婚15年目で単調な生活を送っていた。夫のリチャード(ジム・ヘイニー)と2人の子供がイリノイ州の農産物品評会に出掛け、彼女は4日間、一人で家にいることになった。新鮮で開放的な気分になった彼女の前に、プロ・カメラマンのロバート・キンケイド(クリント・イーストウッド)が現れ、道を尋ねた。彼は、珍しい屋根付きのローズマン橋の写真を撮りに来ていた。フランチェスカは彼の魅力に引かれ、その晩、夕食に誘う。
永遠の4日間
イーストウッドがロバート・ジェームズ・ウォラーの同名ベストセラー小説を映画化し、男女の恋愛を描いた作品。
夫と子を持つ主婦フランチェスカが、道を尋ねてきたカメラマンの男ロバートと出会い、互いに惹かれ合っていく4日間を描いています。
本作は「不倫」という道ならぬ行為を描いていますが、近年の芸能人の不倫に対する世間の執拗なバッシングに、違和感を感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
本作も、フランチェスカの夫や子供たちの視点に立てば「最愛の人に裏切られた」という事実以外残りませんが、当の本人たちの思いは、どこまでも純粋で揺るぎのないもの。
その先にどんな「破滅」が待っていようとも、それらもすべて織り込み済みのうえで、彼らは行動を起こしていく。
不倫を描いた作品の多くがそうであるように、本作もまた想像する結末を辿っていくのですが、雨の中のラストシーンには「永遠」を感じ胸がかき乱されるようです。
それまでアウトローの役を演じることの多かったイーストウッドのキャリアを並べてみても、本作での心優しい男役は新鮮に映ることでしょう。
マディソン郡の橋
調査日:2020/07/14
○印は見放題配信。金額表示はレンタル料金です。動画の配信状況はマネージャーライフが調査した時点での情報です。詳細は各公式サイトでご確認頂けますようお願いします。
『トゥルー・クライム』(1999/アメリカ/127分)
【あらすじ】
カリフォルニアの地元紙に勤めるベテラン記者エベレットは、交通事故死した同僚の仕事を引き継ぎ、死刑執行を目前に控えた囚人ビーチャムの取材を行なうことに。ビーチャムの無実を確信したエベレットは、刑が執行されるまでの残り少ない時間の中で真相を暴こうと奔走するが……。
粗野な男が見せる最後の善意
クリント・イーストウッドが監督・主演を務めるサスペンス映画。
新聞記者のエベレットは、不慮の事故で死んだ同僚の生前の仕事である、死刑囚への取材を引き継ぐ。
死刑囚ピーチャムとの対話を通じて次第に彼の無実を確信したエベレットは、単身調査に乗り出すのだが……。
本作はピーチャムが犯人なのかそうでないのかといったミステリ的な展開は一切なく、彼がいわれのない罪で投獄されてしまった事実は冒頭で明らかさにされます。
そのため、エベレットがいかにして彼を「信じるのか」に重きを置いた作品となっています。
イーストウッドが演じるエベレットは、人を寄せ付けず粗暴に振る舞う「ダメ人間」として描かれます。
対するピーチャムは、娘を愛する善良な父として描かれる。
本来なら「善と悪」で切り分けられそうな二人が、実際は正反対の境遇に陥っている。
エベレットはピーチャムの瞳の中に、あるべき自分の姿を見たのかもしれません。
ついにピーチャムの刑が執行される当日、真相を追うエベレットは彼を救うことができるのか。
最後まで息つく暇もない傑作です。
トゥルー・クライム
調査日:2020/07/14
○印は見放題配信。金額表示はレンタル料金です。動画の配信状況はマネージャーライフが調査した時点での情報です。詳細は各公式サイトでご確認頂けますようお願いします。
『ミリオンダラー・ベイビー』(2004/アメリカ/133分)
【あらすじ】
ロサンゼルスの寂れたボクシングジムの門を叩いた田舎育ちのマギー。ジムのオーナー兼トレーナーのフランキーは彼女を拒んでいたが、彼女の真剣さに打たれ、彼女のトレーナーとなる。お互いに父娘の関係をなくしている2人は、激しいトレーニングの中で人間的に歩み寄っていく。
そして2人が下した決断は――。
勝利を夢見てボクシングジムの扉を叩く主人公の女性と、彼女を指南する老境のトレーナーの究極の師弟関係を描いたのが2005年の『ミリオンダラー・ベイビー』。
今作は第77回アカデミー作品賞にも輝きました。
赤字ボクシングジムに駆け込んできたのは、女性ボクサーのマギー。
しかし、トレーナーのフランクは「女は教えないんだ」と冷たくあしらいます。
それでも食い下がるマギーのひたむきな姿に光るものを感じ、フランクは彼女の指導役を買って出ることになったのですが、それはマギーとフランクにとって、大きな人生の転機となるきっかけでもあった。
本作は「スポ根」映画として楽しむこともできますが、作品を観終わったとに残る余韻は、スポーツ映画の枠を飛び越えた衝撃的な結末です。
実の娘とは疎遠になり、マギーに「父」としての自分を投射するあたり、実生活でのイーストウッドの実像とも重なり、その後数作にわたり「父と娘の確執」はイーストウッド映画の重要なテーマの一つにもなっています。
師として、父として、フランクが最後に下す”決断”とは?
ミリオンダラー・ベイビー
調査日:2020/07/14
○印は見放題配信。金額表示はレンタル料金です。動画の配信状況はマネージャーライフが調査した時点での情報です。詳細は各公式サイトでご確認頂けますようお願いします。
『父親たちの星条旗』(2006/アメリカ/132分)
【あらすじ】
第2次世界大戦の重大な転機となった硫黄島の戦いで、米軍兵士たちはその勝利のシンボルとして摺鉢山に星条旗を掲げる。しかし、この光景は長引く戦争に疲れたアメリカ国民の士気を高めるために利用され、旗を掲げる6人の兵士、ジョン・ブラッドリー(ライアン・フィリップ)らはたちまち英雄に祭り上げられる。
掲げられた星条旗に秘められた真実
太平洋戦争末期の「硫黄島の戦い」を、日米双方の視点で二部作として描いたのが本作『父親たちの星条旗』と後述する『硫黄島からの手紙』です。
アメリカ人が硫黄島の戦いを知るうえで最も有名な写真として、擂鉢山(すりばちやま)という場所に星条旗を立てる6人の兵士たちを写した一枚があります。
本作はその写真に写る6人にフォーカスし描かれています。
アメリカ軍は戦争にあたり、軍資金として国民から金を集める必要がありました。
そのためには、国民の心を一つにできる「英雄」を用意するのが手っ取り早い。
そこで硫黄島から生還した3名を集め、国民へ演説をさせるのです。
いわゆる「プロバガンダ」というやつですね。
戦争での内的・外的な傷を抱えたままの3人は、「英雄」として祭り上げられていくことで混乱していく。
このテーマは、後にイーストウッドが監督した『アメリカン・スナイパー』でも語られています。
本作で描かれる日本人は、底の見えない悪魔的な恐怖の対象として描かれており、快く思われない方もいらっしゃるかもしれませんが、それも後述する『硫黄島からの手紙』を浮き立たせるためのあえての演出であったと、二作を比べて観ることで分かる造りになっています。
父親たちの星条旗
調査日:2020/07/14
○印は見放題配信。金額表示はレンタル料金です。動画の配信状況はマネージャーライフが調査した時点での情報です。詳細は各公式サイトでご確認頂けますようお願いします。
『硫黄島からの手紙』(2006/アメリカ/141分)
【あらすじ】
戦況が悪化の一途をたどる1944年6月、アメリカ留学の経験を持ち、西洋の軍事力も知り尽くしている陸軍中将の栗林忠道(渡辺謙)が、本土防衛の最後の砦ともいうべき硫黄島へ。指揮官に着任した彼は、長年の場当たり的な作戦を変更し、西郷(二宮和也)ら部下に対する理不尽な体罰も戒めるなど、作戦の近代化に着手する。
極めて誠実な「アメリカが描く日本」
1944年太平洋戦争、硫黄島で行われたアメリカ軍との戦いを、「日本軍からの視点」にフォーカスした戦争ドラマ。
本作の何よりの魅力は、生粋のアメリカ人であるイーストウッドが、敗戦国である日本人を極めてフラットな視点で描き切ったことにあります。
そこには過剰な感動や非情さもなく、彼らが確かに生きていたこと、そしてそれから連綿と続く時代の果てに、今の私たちの暮らしがあることを観る者に訴えかけます。
本作の撮影にあたって、イーストウッドはシナリオを日系アメリカ人のアイリス・ヤマシタに依頼し、現場スタッフにも日本人を複数取り入れるなどして、日本人から見ての違和感や不自然さを極力排除することに努めました。
同じく硫黄島での戦いをアメリカ軍から切り取った『父親たちの星条旗』とは違い、異国の文化や感性を取り入れつつの制作は大変な作業であったに違いありません。
渡辺謙、嵐の二宮和也をはじめとする日本人キャストたちの熱演により、日本人の目で観て本作をどのように感じるか、ぜひご自身の目で確かめてみてください。
硫黄島からの手紙
調査日:2020/07/14
○印は見放題配信。金額表示はレンタル料金です。動画の配信状況はマネージャーライフが調査した時点での情報です。詳細は各公式サイトでご確認頂けますようお願いします。
『インビクタス/負けざる者たち』(2009/アメリカ/134分)
【あらすじ】
1994年、マンデラ(モーガン・フリーマン)はついに南アフリカ共和国初の黒人大統領となる。いまだにアパルトヘイトによる人種差別や経済格差の残る国をまとめるため、彼はラグビーチームの再建を図る。1995年に自国で開催するラグビー・ワールド・カップに向け、マンデラとチームキャプテンのピナール(マット・デイモン)は、一致団結して前進する。
人種を超えた絆
昨今でも散見される人種間の対立が生む悲惨な事件。
イーストウッドが「人種差別」に真っ向から挑み、黒人の運動家であるネルソン・マンデラを主人公に据え描いたのが本作。
南アフリカ共和国では、90年代の初頭に至るまで「アパルトヘイト」と呼ばれる、白人と非白人との隔離を強要した負の歴史があります。
ネルソン・マンデラは「アパルトヘイト」に反対する運動を行ったために27年ものあいだ犯罪者として投獄されていました。
本作はマンデラが27年ぶりに釈放される場面から始まります。
マンデラはその後、「ノーベル平和賞」を受賞し、南アフリカ大統領にまでのぼりつめます。
彼はラグビーを通し、白人によって統治されてきた伝統を塗り替えようと試みます。
日本でも近年、池井戸潤原作のドラマ『ノーサイドゲーム』や日本チームの快進撃により、ラグビー人気に火が付きました。
日本が「One Team」という標語を掲げていたように、様々な個性を持った人々が一致団結する姿は、イーストウッドが、そしてマンデラ自身が望んだ「自国のあるべき姿」なのかもしれません。
マット・デイモン演じる弱小チームの主将フランソワとマンデラの絆も胸を熱くする感動作です。
インビクタス/負けざる者たち
調査日:2020/07/14
○印は見放題配信。金額表示はレンタル料金です。動画の配信状況はマネージャーライフが調査した時点での情報です。詳細は各公式サイトでご確認頂けますようお願いします。
『ヒア アフター』(2010/アメリカ/129分)
【あらすじ】
霊能力者としての才能にふたをして生きているアメリカ人のジョージ(マット・デイモン)、津波での臨死体験で不思議な光景を見たフランス人のマリー(セシル・ドゥ・フランス)、亡くなった双子の兄と再会したいイギリスの少年マーカス。ある日のロンドンで、死に取りつかれた3人の人生が交錯する。
“あの世”はあるのか?
日本では2011年2月に公開され、冒頭の大津波のシーンが、その後の東日本大震災を想起させる内容であったために封切からわずか数週間で公開中止になってしまった、いわばイーストウッドの「幻の一作」が本作『ヒア アフター』です。
本作は群像劇として進行し、主に3人の登場人物の視点から物語が紡がれていきます。
一人は死者と交信することができる力を持っているが、その力を「呪い」だと感じ、葛藤する男ジョージ。
不倫相手と訪れていたリゾート地で津波に遭遇し、数分間の臨死体験を通じて「あの世」を体験したフランス人女性ジャーナリストのマリー。
そして、双子の兄を目の前で看取った少年マーカス。
住む場所も関係もバラバラだった彼らが「死」を通じて交差していく。
タイトルの『ヒア アフター』とはそのまま「Here(ここ)」「After(後)」、つまりは「あの世」を意味します。
三者三様の喪失を抱えた彼らが、互いの存在によって再生していく様を描いた必見の一作です。
ヒア アフター
調査日:2020/07/14
○印は見放題配信。金額表示はレンタル料金です。動画の配信状況はマネージャーライフが調査した時点での情報です。詳細は各公式サイトでご確認頂けますようお願いします。
『アメリカン・スナイパー』(2014/アメリカ/132分)
【あらすじ】
イラク戦争に出征した、アメリカ海軍特殊部隊ネイビーシールズの隊員クリス・カイル(ブラッドリー・クーパー)。スナイパーである彼は、「誰一人残さない」というネイビーシールズのモットーに従うようにして仲間たちを徹底的に援護する。人並み外れた狙撃の精度からレジェンドと称されるが、その一方で反乱軍に賞金を懸けられてしまう。故郷に残した家族を思いながら、スコープをのぞき、引き金を引き、敵の命を奪っていくクリス。4回にわたってイラクに送られた彼は、心に深い傷を負ってしまう。
「アメリカの伝説」とよばれた男
イラク戦争に従軍し、その天才的な狙撃技術によって「伝説」と呼ばれるに至った実在の狙撃手クリス・カイルの半生を描いた戦争ドラマ。
一見してクリスに感情移入できる造りに意図的にし、果ては観客すらも「クリス・カイル=アメリカ軍の英雄」と思わせかねない淡泊な演出を行っていますが、敵側から見ればクリスもまた「味方を死に至らしめる殺人者」でしかありません。
アメリカでは公開当時、「これは戦争賛美だ」と批判する声も少なくありませんでしたが、イーストウッドは一人の男が戦争によって感情を失っていく様をリアルに描くことによって、戦争が持つ無意味さを説くことに成功しています。
クリス・カイルは退役後、自身も苦しめられたPTSDに悩む兵士たちを助けるためにカウンセリングに努めますが、皮肉にも、彼の最期は彼が親身に相談に乗っていた患者の男に射殺される、という悲惨なものでした。
まったくの無音で流されるエンドロールに、あなたは何を思うでしょうか。
アメリカン・スナイパー
調査日:2020/07/14
○印は見放題配信。金額表示はレンタル料金です。動画の配信状況はマネージャーライフが調査した時点での情報です。詳細は各公式サイトでご確認頂けますようお願いします。
まとめ)70年近い俳優・監督としてのキャリア。しかしテーマは一貫している!
イーストウッドの作品群(特に監督作)を一本の線で見てみると、長いキャリアの中でもそのテーマ性だけは失うことなく一貫していることが見えてくると思います。
このように、一人の俳優・映画監督の作品を複数本まとめて観てみると、よりその人の核としている思想・思考に近づけて、より新鮮な映画の楽しみ方ができるはずです。
まだまだ元気なイーストウッド。
これからも新しい作品を携えて、私たちの前に現れてくれることを願います。
<スポンサーリンク>