部下への評価の際に、注意したい7つの評価ミスリード

[最終更新日]2022/12/15

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管理職ともなると、部下を評価する場面が多くなってくるのが一般的ですが、上手にバランスをとって評価しないと、部下との軋轢を生じさせたり、実態にそぐわない評価となって組織のプラスにならないなど、さまざまな弊害生じます。

今回は前半で評価の際に陥りやすい注意すべきポイントを説明し、後半では評価の際に意識すべき「4つの視点」を紹介します。部下を公平・正当に評価できるようになれば、より質の高い管理職に成長することができます。

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目次

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部下評価の際に、注意したいポイント7つ

問題 どんな内容か
1 中心化傾向(平均化傾向) 評価が真ん中を中心に集まってしまう
2 寛大化傾向 評価が甘めに集まってしまう
3 ハロー効果 1つの良いことが印象となって全体が引きあがってしまう(またはその逆)
4 逆算化傾向 はじめに結果ありきで、中身を決めていってしまう
5 論理誤差 体育会系は営業ができるはず、などと勝手に評価してしまう
6 対比誤差 自分自身と比べて、評価してしまう
7 期末評価 評価期全体ではなく、期末近くの観察で評価してしまう

まずは、部下を評価する上で「注意したいポイント」を7つ紹介します。これらはいずれも「評価する上で陥りやすいポイント」でもあり、極力これらの注意点を避けることが、「公平な評価」に寄与すると言えます。

これまで自身が部下を評価するときにこうしたポイントに当てはまった評価をしていなかったか振り返ってみるとともに、今後部下の評価をつける際に、下記のポイントに当てはまっていないか最後に確認した上で評価を確定することをおすすめします。

「中心化傾向(平均化傾向)」の傾向と対策

中心化傾向は、その名の通り、評価が「中程度」に過度に集まってしまい、個々人間の差をつけられてないことを指します。

実は伝統的な日本の大企業は年功序列の色が根強く残っていることにより、形式上の個々人の評価制度はあっても、この罠に陥っている企業は多く存在します。そもそも企業風土が「年功序列・個々人間の差をつけない」風土の場合は、まずその風土を徐々に変えていく必要があります。

一方、企業風土以外で管理職自身に原因があるとすれば「部下のことをよく知らず、自信がないので差をつけられない」という点が挙げられます。

現在の評価が中心に集まりすぎていると感じた場合は、もっと部下とコミュニケーションをとりながら、部下のことをもっとよく観察し、部下それぞれの仕事ぶりをよく知る必要があります。評価がみんな同じでは、評価をつけている意味がなくなってしまいますので、ぜひ改善を図ることをおすすめします。

「寛大化傾向」の傾向と対策

寛大化傾向」は「中心化傾向」の中央が高評価によってしまっていることを指します。これもまた日本の大企業ではよく見られる現象で、構成員の多くが「高評価」になっていて、いったい誰が本当に優秀なのか評価結果からわからなくなってしまう状況です。

こちらはまた部下の仕事ぶりをよく知らないことに加え、部下との軋轢を避けたい上司が行なってしまう評価上のエラーです。

また、個々人間の評価よりも、自分の部署全体の評価を他部署より高くしたいと考える上司が行なってしまうこともあります。このような「寛大化」がその部署の評価を引き上げてしまうのであれば、会社全体として評価体系を考え直す必要があります。

また、部下の仕事ぶりをよく知らないから寛大化してしまっている場合は、中心化同様に部下の仕事ぶりをよく知る必要があると言えますし、また、「評価の中央値はどこであるべきか」を自認した上で評価を進めることも重要です。

「ハロー効果」の傾向と対策

ハロー効果」とは1つの印象的なできごとのせいで、全体の評価が定まってしまうことを指し、評価を上げる場合も、下げる場合双方を指します。

これは伝統的な日本企業にかかわらずあらゆる企業が注意しなければならないポイントと言えます。正当・公平な評価とは、本来業績への影響度を評価軸に評価期間の各時点・各項目を満遍なく評価をつけていく必要があります。(全ての評価軸を「同配点」にするということではなく、将来性も含めた業績へのインパクトを評価軸にして配点の重みを持たせるべき、ということです)。

しかし実際には必ずしも業績へのインパクトを鑑みて合理的ではない一要因の印象が強いせいで、評価全体が、いい方向、悪い方向によってしまうことがしばしばあります。

管理職自身があくまで「業績への好影響・悪影響」を軸に評価しているか考えながら評価をつけるべきであるとともに、会社全体としても、1つの事柄の評価が全体の評価に影響を与えすぎることのないように、評価の仕方を工夫する必要があります。

「逆算化傾向」の傾向と対策

逆算化傾向は、多くの場合にみられる「最高点が決まっている評価」ではしばしば発生するリスクのあるエラーです。

例えば評価の合計最高点が100点と決まっていた場合、100点をつけられるのは「最高の社員」のみということになります。この意識が働くことで「優秀でも後ろでもっといい社員が現れるかもしれない」と考えて、より高い点を与える余地を残すためにあらかじめ合計点を決めてしまいます。そこから各項目と合計点が平仄をとれるように各項目の評価点を逆算で配分してしまうことです。

これにより、各項目の点数配分に歪みが生じてしまいますし、合計点についても最高点を超えてはいけないという心理的制約の存在により実勢を示さない数字となってしまいます。

評価点の最高点を定めない、というのも一案です。そう簡単に最高点のルールを変えられないという場合は、管理職自身において、まず「最高得点は誰なのか」を明確にした上で最高得点者の評価をまずおこなうことで、それ以降の評価をより正当に行うことが可能となります。

「論理誤差」の傾向と対策

論理誤差」は「体育会系だから営業ができるはず」などといったように、自分の固定観念が原因で勝手な論理をつくってしまうことで、部下を正当に評価できなくなってしまう状況のことを指します。特に、これにより、自身の勝手な期待と部下の実態に乖離があることで低い評価をつけてしまっているのだとしたら特に問題です。

こうした固定観念は誰しも少なからず抱いてしまうリスクがあります。特に、中心化傾向や寛大化傾向とは対照的に、一定程度部下のことを理解していることで、却って発生しやすいエラーであるとも言えます。

まずは、「〇〇だから」というラベル付けをせずに部署内で共通した評価軸に従って(できれば営業成績など定量的な数値を伴って)公平に評価するように意識づけることが重要です。部下各々に役割期待を抱くことは大切ですが、その役割期待により部下の評価に歪みやバイアスがかかるようなことは避ける必要があります。

「対比誤差」の傾向と対策

対比誤差」とは自分自身と照らし合わせて「足りていない、劣っている」と判断して部下に不必要に低い評価をつけてしまうことを言います。こちらは、いくつかの観点から、自身がプレーヤーだった時と比較してはいけないと意識する必要があります。

まず、究極的にいうと、管理職である人が部下より優れているのは当たり前で、むしろ優れていないのであれば管理職を交代する必要があります。そしてもう一点、特に好景気を経験している方には注意して欲しいのが、競争環境が当時といまでは異なります。

もちろん一概に言えませんが、日本の国際競争力の低下などを念頭に置けば、概して競争環境が厳しくなっている領域が多いと想定されます。つまり部下は管理職がプレーヤーだった時より厳しい条件で戦っている場合もあるのです。

こうしたポイントを加味すれば、管理職の方が、部下に自分と同じくらいのクオリティの仕事を求めるのは不合理であるとわかります。こちらは意識の問題で、自身がプレーヤーだった頃と部下を比較するのは避ける必要があります。

「期末評価」の傾向と対策

評価が一定の期間に区切って行われている以上、どうしてもこちらのエラーは避けるのが難しい部分があります。人間は結局「近い出来事ほどよく記憶している」ために、期末に近い出来事ほど、評価するうえで重みをつけて評価してしまう傾向にあります。例えば期末ギリギリでの成約が期初の同程度の成約より2倍も3倍も高く評価されてしまうなどです。

人力に頼っていては、これを覆すのは容易ではありませんが、極力細かく成績を記録して評価していくことである程度避けることができます。恐らく部全体の評価は四半期や半期ベースで行われる会社が多いですが、これを期末だけで集中して行うのではなく、可能であれば日次、難しくても週次や、せめて月次で評価をプロットしていくのです。

そして期末の評価においては、人間の印象に左右されずに、このプロットされた数字をもとに評価を定めていくのです。こうすることで、期末の印象に引っ張られてバイアスのかかった評価を行なってしまうことを回避できます。

そもそも、評価は何のためにあるか

ここまで、評価で陥りやすい注意点と対策について説明してきましたが、そもそも評価は何のために行なっているのか理解することで、より意味のある評価がしやすくなりますので、ここでは、評価の意味について紹介します。

評価を提示することで部下に対する役割期待を明確にする
評価においては自ずから部下に「評価基準」を提示することになります。これにより部下は自分がどのようなことをどの程度期待されているか把握できます。

適切な評価により部下に成長を促す
正当な評価の中では部下の秀でているところ、足りていないところが明確になりますので、部下は足りないところを改善し、秀でているところを活かすことで成長機会を得ることができます。

成功を適切に認めることで部下にモチベーションを与える
成功をきちんと評価することで、部下は成功体験を獲得し、また待遇面でも評価を反映してプラスとなることで、部下はモチベーションを高めることができます。

部下とのコミュニケーションを増やす
評価をすればフィードバックを行い、また管理職は部下をよく知ろうとします。これらにより部下とのコミュニケーションを増やすことができます。

評価にはこうした4つの意味が存在します。このことを念頭に、これら4つの利点を適切に具現化する評価を実践するように努めることが管理職には期待されております。

評価をする際に意識したい、「4つの視点分析」

将来の部下、ひいては組織全体の成長につながるような「適切な評価」を行う上では、下図にもある「4つの視点分析」を行うことで、「過去や現在」だけでなく、将来を意識して評価をまとめていくことが肝要です。4つの領域を順に説明していきます。

何が起きたか
まずは過去〜現在までの現状把握を実施します。評価する対象の部下が実際にどうであったか、「事実」を正当に把握します。

なぜ起きたか
次に、部下が「事実」がそうなっている背景を把握します。評価の場合は、良い所、悪い所、それぞれ「なぜそのようになっているか」分析します。

今後どうなるのか
続いて、ここからが「将来」の視点です。現状を元に、評価対象が「良い点をどう伸ばし、悪い点をどう改善する」すなわちどう成長すべきかを明確にします。

その為に何をなすべきか
最後に、あるべき成長を実現する上で、対象者はどのような対策を行うべきか、どのような改善を試みるべきかを明確にします。

不適切な評価においては、「将来」の視点が欠けていて、ただ現状と原因の把握にとどまっていることが多々ありますが、評価で大事なのは、評価対象の成長につなげることにありますので、このように評価に将来の視点を持たせることが肝要です。上記の4つの視点を加味した評価を徹底することで、将来につながる評価を実現することが可能になります。

部下の成長を促す公平・適切な評価を行えば組織全体にプラスになる

ここで紹介した通り、適切な評価を行うことはそう容易なことではなく、さまざまな注意点が存在します。一方で正当な評価を行うことは、部下を成長させる上で重要です。

また個々が成長することで、組織全体としても強くなっていくことが期待できます。この記事で紹介した注意点や評価の視点などを理解することで、部下を成長させる正しい評価ができる人間になることが、管理職として成功していく上では重要と言えます。

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