「振り返り」が重要というけれど、具体的に仕事でどうやるの?PDCA、PDS、KPT、YWT紹介
[最終更新日]2022/12/15
同じ部署での仕事が長くなると、ある程度の業務はルーティンワークとして処理できるようになります。
ですが、同じことをくり返しているだけでは人間は成長しませんし、どんな仕事にも改善点はあるものです。
そう考えると、管理職であればなおさら、仕事を振り返って内省する機会を設けたいところです。
そこで今回は、仕事で重要な振り返りの方法について、具体的な方法も含めてお話ししたいと思います。
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目次
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「振り返り」が重要な理由
「振り返り」(≒内省)とは
まず、「振り返り」とは何かについて、説明しましょう。
振り返りは「内省」といわれることもある言葉です。
内省とは、過去の自分を振り返りながら自身の内面を省みて、考えを整理することをいいます。
そして、過去を後悔する、あるいは過去から学ぶという意味も併せ持ちます。
内省のなかでも過去を後悔するというのは、自分のしたことを自ら責めることにほかなりません。
管理職の場合、部下への指示やビジネス上の決断を間違った時に、そうした気持ちに苛まれるものです。
しかし、失敗にとらわれて後悔しているだけでは、かえって仕事のモチベーションを下げるだけです。
一方の過去から学ぼうとする内省であれば、指示や決断の間違った点を客観的に見つめ、次に同じような状況になった時にどうすべきなのか、失敗をリカバーするために今できることは何かを考えることができます。
その場合、過去から学び失敗を糧にして、新たな視点に気づけるチャンスが生まれます。
これこそ、仕事に対するモチベーションやパフォーマンスをアップするうえで、必要な内省といえるのです。
コルブの経験学習モデルについて
みなさんは「経験学習」という言葉を知っていますか?
人材育成の領域では、実際の経験を人間が省察することでより深く学べるという考え方のことを、経験学習といいます。
デービット・コルプ氏は、経験を通して学びを獲得していくプロセスについて、体系的に理論化した学習モデルを「経験学習モデル」として提唱しました。
それまでは、体系的に汎用化された知識を受動的に習得するという、知識付与型の学習やトレーニングが行われるのが一般的でした。
経験学習モデルはそれとは一線を画し、経験を通して自ら築き、さまざまな視点から振り返りながら省察し、自らの持論あるいは教訓としてほかでも応用できるよう概念化し、新たな場面でそれを試行してみるという、4つの学習サイクルで成り立っています。
この経験学習を日々の仕事のなかに取り入れれば、同じ失敗をくり返すことなく、冷静に粘り強く問題に対処したり、トラブルを予見して回避したり、的確な改善案を思いつくなど、できることが増えるのです。
振り返りの代表的な手法は、「PDCA」と「PDS」
管理職は部署の目標達成のために、マネジメントサイクルについて考えることが多いでしょう。
それは、より効率よく業務を推進するために、どんなプロセスで仕事を進めていくかを考える必要があるからです。
その手法に「PDCA」と「PDS」がありますが、これは振り返りの手法でもあります。
その違いを、以下にまとめてみました。
- PDCA (PLAN─DO─CHECK─ACTION)
- PDS (PLAN─DO─SEE)
それぞれ、順を追って見ていきましょう。
振り返りの手法#1 PDCA (PLAN─DO─CHECK─ACTION)
まずは、実践されている方も多いであろうPDCAサイクルについて説明します。
PDCAサイクルとは、PLAN(計画)、DO(実行)、CHECK(評価)、ACT(改善)という4つのプロセスをくり返すことで、業務の改善や品質の向上など、円滑に管理業務を進めるための手法で、アメリカのW・エドワーズ・デミング博士を中心とするグループが提唱しました。
これを仕事の振り返りに活用する方法を、具体的にご紹介しておきましょう。
まずPLAN(計画)ですが、5W1Hといわれる、いつ・どこで・誰が・何を・どのように・どうして行うのかを明確にすることから始めます。
すると、目標達成のための具体的な計画を考えやすくなります。
DO(実行)は、PLAN(計画)をきちんと実行することをさします。
その際、立案した計画や方針を忠実に守り、結果をデータなど数値化することがポイントです。
CHECK(評価)は、DO(実行)の結果を客観的に判断することです。
ここでは、データだけに注目して判断してください。
ACT(改善)は、CHECK(評価)後に見えた課題について考え、再度PLAN(計画)を練り直したうえで、改善に向けてアクションを起こすことです。
このサイクルを、らせん階段を上るイメージで継続することで、組織だけでなく個人の業務スキルを研鑽することが可能です。
PDCAの注意点
PDCAサイクルを回すうえで、注意してほしいことがあります。
それは、同じサイクルを回し続けても意味がないので、常に改善点を見つけられるように実践することです。
PDCAサイクルがうまく回らない要因として、PLAN(計画)が忠実に実践されていない、あるいはCHECK(評価)のためのデータ収集や数値化に問題があるケースが少なくありません。
そうした事態に陥らないためにも、目標やPLAN(計画)はより具体的に設定する、決められたことはルールを守って実践することを徹底しましょう。
また、個人がスキルアップのためにPDCAサイクルを回す際には、PLAN(計画)を立てることにとらわれて、CHECK(評価)での振り返りが浅くなるケースも多いようです。
その点にも配慮しながら、取り入れてみてください。
振り返りの手法#2 PDS (PLAN─DO─SEE)
もう一つのマネジメントサイクルであるPDSでは、PLAN(計画)、DO(実行)、SEE(検討)の3つのプロセスをくり返します。
マネジメントにおいては、組織全体で共通目標を明確化し、それを達成するためのPLAN(計画)を立て、それをDO(実行)し、その結果得られた成果や課題点をSEE(検討)することで、次のPLAN(計画)づくりにつなげるという回し方になります。
実はPDSサイクルは経営者の視点でつくられており、DOは「命令」という意味を持つともいわれています。
いずれにせよ、PDSサイクルも個人の振り返りツールとして用いることは可能です。
立てたPLAN(計画)をDO(実行)、その結果をSEE(検討)というサイクルだと、区切りがつけやすいというメリットがあります。
そこから次のPLAN(計画)を検討する時点で、ワンステップ上がることを意味するので、向上心の強い人にはおすすめです。
PDS (PLAN─DO─SEE)の注意点
とはいえ近年では、PDSよりPDCAを用いる組織が増えているようです。
それは、PDSサイクルには注意すべき点があるからです。
その理由は、前述したようにPDSサイクルは区切りがつきやすいので、SEE(検討)で総括したことに満足してしまい、次のPLAN(計画)に進まないケースが散見されることがあるようです。
長期間のプロジェクトを終わらせることが目的であれば、PDSサイクルで問題はありませんが、人材育成のための振り返りに用いるのであれば、サイクルを回し続けるしくみが必要です。
部下にPDSサイクルを回してほしいのであれば、それが継続できるよう、管理職が対話やサポートを行っていく方が望ましいでしょう。
「KPT」と「YWT」を有効活用できると、業務品質を高め協働を活性できる
仕事の振り返りに使えるのは、マネジメントサイクルであるPDCAやPDSだけではありません。個人やチームの振り返りには、別な手法がよいケースもあります。
そこで活用してほしいのが、振り返りツールです。
振り返りツールとは、業務効率や質を向上するために、計画を立てて実践する、振り返る、課題点を抽出して対策を練るという作業を支援するためにつくられたものです。
「KPT」や「YWT」などが振り返りツールに分類され、以下のような内容となっています。
- KPT (KEEP─PROBLEM─TRY)
- YWT (Y:やったこと─W:わかったこと─T:つぎにやること)
それぞれ、順を追って見ていきましょう。
振り返りの手法#3 KPT (KEEP─PROBLEM─TRY)
KPTとは、「継続」「問題点」「挑戦」という3つの視点から仕事を振り返ることで、業務改善のスピードをアップするためのフレームワークを指します。
もともとは、開発期間が短い案件いついて、リスクを最小化するために考えられた開発手法の一つです。
そのため、個人というより、チームの仕事を振り返る際に用いられることが多い手法です。
実践方法ですが、ホワイトボードに上図のように「KEEP(定着)」「PROBLEM(新しい視点)」「TRY(改善策)」という3つの要素に基づき、現状分析を行うことが多いです。
この3つの要素ですが、
- KEEPは良かったこと、あるいは今後も続けること
- PROBLEMは悪かったこと、あるいは今後はやめること
- TRYはこれから挑戦すること
を意味します。
まずは、チームメンバーが個々にKEEPとPROBLEMについて付箋に書き、それを全部ホワイトボードに貼ったうえで、全員でPROBLEMとして可視化された課題解決の方法やアイデアを、TRYに書いていくという進め方が一般的です。
チームで行うミーティングで日常的にKPTを行うことで、常に改善点について考える習慣ができるのは大きなメリットといえそうです。
KPT (KEEP─PROBLEM─TRY)の注意点
KPTを実践するにあたって、注意してほしいことがあります。
それは、KPTを行う目標や目的を明確にしておくことです。
例えばチーム全体で今後も定着させたいKEEPについて考える際、できて当たり前のことはあえて言語化しようとしないので、考えを掘り下げることなく、短絡的な内容に終始する可能性が高いのです。
クライアントに提出する企画書の作成を例にあげて、KPTの短絡的な事例について考えてみましょう。
現状の企画書をブラッシュアップすることが目的であれば、ですが、本来の目標を忘れると、Kでは企画書のレイアウト・デザインをきれいにすること、Pではレポートを補完する調査が足りないと気付くこと、Tでは再調査を行うことで十分です。
ですが企画書作成の目的は、クライアントにその提案を受けいれてもらうことだと考えると、こうした短絡的な考えでは成果につながりません。
そうした事態を避けるためには、些細なことでもできたこと、よかったことを言語化する習慣をつけ、さらに改善可能な点を探す視点が必要になります。
また、ホワイトボードに書いた付箋をアトランダムに貼っていくプロセスのなかで、まだ考えている人がいるのに、ほかのメンバー間で議論が始まってしまうなど、個々の振り返りに支障が出るケースもあります。
そのため、自分の考えをまとめて言語化する時間、それを貼りだして全員で議論する時間など、ミーティングの進行方法にも配慮が必要です。
振り返りの手法#4 YWT (Y:やったこと─W:わかったこと─T:つぎにやること)
近年注目を集めているのが、「YWT」という手法です。
YWTはJMACの研究開発・技術開発をコンサルティングする家庭で生まれた概念で、現在はPDCAに対抗するマネジメントサイクルともいわれています。
YWTは
- Y=やったこと
- W=わかったこと
- T=次にやること
という意味です。
マネジメントサイクルとしては、管理職が部下の個人面談を行う際に利用することが多いですが、個々のスキルアップにも活用できます。
具体的には、自分の過去を振り返り、やった仕事を書き出すことからスタートします。
そして、やった仕事の経験を通して何を学んだのかを、加筆していきます。
その際、わかったことがない場合は無理に書く必要はなく、より高レベルで理解できたと思うものがないか、考えを深めるのがポイントです。
ここで、内省する力が求められるのです。
次にやることは、わかったことを踏まえて考えます。
より業務の効率や質を上げるために、次にやるべきことは何かを言語化するのです。
これをくり返すことで、個人のスキルアップにつながります。
くり返し行うのはKPTも同じですが、この方法はプロジェクトなどチームで行う業務に適しています。
というのも、KPTは目標達成のために改善案を確実に遂行していくために行いますが、YWTは経験を通しての学びから生まれた変化に気づくことを重視するからです。
振り返りを実行する際も、KPTは有言実行型ですが、YWTは試行錯誤型といえます。
その違いを理解して、使い分けましょう。
YWT (Y:やったこと─W:わかったこと─T:つぎにやること)の注意点
YWTは、経験学習の能力が高い人が行う分には、とても有効な手法です。
ですが、仕事で経験を積もうとしない、起こった出来事を多様な視点で振り返ろうとしない、経験をほかでも応用できるように概念化しようとしない、新たな取り組みの際に試行・実践をしないなど、経験学習する能力が低い人だと効果が低くなります。
その場合は、管理職として部下が経験できる場を意識的につくる、対話のなかで本人の振り返りをさせるなどの働きかけが必要です。
また、わかったことに対する考察が甘いと、業務効率や質をあげるために次に取り組むべきことが何かを見つけられない事態に陥りがちです。
部下によっては任せきりにするのではなく、管理職がYWTをサポートし、ポジティブなフィードバックを実践しながら、手法を体得してもらう方がよいかもしれません。
まずは振り返りを実践してみよう!
今回は、仕事で重要な振り返りの方法について、具体的な方法も含めてお話ししました。
この記事をまとめると
- 振り返りの手法には「PDCA」「PDS」「KPT」「YWT」などの手法がある
- 個人やチーム、部署など対象によって、適した手法が変わる
- 自分あるいは他者の能力によっては、サポートが必要なケースもある
の3つがあげられます。
マネジメントサイクルとしても、個人の成長にも振り返りは役立つので、この記事を参考に継続して実践できる方法を見つけてくれたら嬉しいです。
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