これからの管理職に求められる“3つのスキル”とは?
[最終更新日]2024/02/05
会社でキャリアと実績を積むと、管理職のポストが見えてくるものです。
昇進や昇給は喜ばしいことですが、管理職になるということは、組織に求められている成果をあげる責任を負います。
その方法として部下への指導や管理を強める管理職も多いですが、部下のモチベーションを維持するうえでマイナスに作用することも少なくありません。
そこで今回は、結果を出せる管理職になるために必要なスキルや、それを身につけ伸ばす方法についてお話しします。
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目次
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これからの管理職に求められる“3つのスキル”とは?
管理職ならば押さえておきたい3つの「マネジメント・スキル」
会社の中で管理職が求められる基本の役割は、「業務の企画と遂行とその改善」「部下の育成」「組織に経営理念やルールを浸透させる」という3つです。
この3つが、マネジメントスキルといわれます。
とはいえ、マネジメントスキルは課長や部長などの職位によって、求められる内容が異なります。
管理職に求められるスキルを説明する時に用いられることが多いのが、「カッツ理論」です。
これは、1955年にハーバード大学のロバート・カッツ教授が発表した、管理職の人材スキルに関する理論を指します。
カッツモデルでは管理職に求められるスキルを、「テクニカルスキル」「ヒューマンスキル」「コンセプチャルスキル」の3つに分けて提唱しました。
3つのスキルが何かを具体的に説明すると、「テクニカルスキル」とは業務遂行に不可欠な知識や技術に関する能力のことです。
「ヒューマンスキル」とは、仕事に関わる人間関係を構築する際に必要な対人関係能力のことをいいます。
「コンセプチャルスキル」とは、目標達成するための手順や方法を概念化する能力のことです。
管理職の各階層ごとに「求められるスキル」が変化する
カッツ理論では、前述した3つのスキルは人材の階層によって割合が変化するとしています。
例えば新入社員であれば、ヒューマンスキルとテクニカルスキルがあれば、コンセプチャルスキルがなくても問題視はされません。
ですが管理職になるには、この3つのスキルはすべて持っていることが原則となります。
さらに、管理職には職位があり、求められるマネジメントが異なります。
主任や係長に求められる「ロワーマネジメント」、課長や部長に求められる「ミドルマネジメント」、経営陣に求められる「トップマネジメント」に大別されるのです。
どの管理職であってもヒューマンスキルの比率は変わりませんが、ロワーマネジメントとミドルマネジメントではテクニカルスキルの比率が、トップマネジメントになるとコンセプチャルスキルのウエイトが高くなります。
そうした管理職の階層によって異なる求められるスキルを念頭に置き、必要な能力を磨く教育や研修を行う必要があるのです。
求められるスキル1-テクニカルスキル
テクニカルスキルとは?
業務遂行能力に直結するテクニカルスキルとは、特定の職務を行ううえで必要な知識と技術、熟練度を指します。
そのため、業種や職種によってテクニカルスキルは異なります。
とはいえ、テクニカルスキルの中には汎用性の高い能力があります。 それは、
- 商品知識
- 市場理解
- 情報収集力
- 分析力
- 文章作成能力
などです。
商品知識とは、自社の製品のコンセプトやターゲットを理解するだけでなく、競合商品を把握し分析的視点で説明できるスキルのことをいいます。
市場理解は、商品知識がベースになければ身につかないスキルで、製品の開発や販売に関わる戦略を練るうえで不可欠な能力です。
情報収集力とは、市場理解や企画提案など、製品の開発や販売を行うためのロジックを固めるために必要な情報を、適切なソースから迅速に探し出せる能力をいいます。
分析力は収集した情報を理解し、信頼に値する内容かどうかを判断できる能力のことです。
文章作成能力とは、誰でも見やすい要点が簡潔にまとめられた資料作成ができる能力をいいます。
テクニカルスキルは、勤務先や担当業務に必要なレベルに達しているかどうか、試験などを行うことで評価できます。
管理職こそ見直したい「テクニカルスキルを身につける際のポイント」
業務遂行能力をあらわすテクニカルスキルは、「ビジネススキル」と混同されることが多いです。
例えばWordやExcelを使いこなせるPC能力や語学力、業務に関わる資格・検定などは、ビジネススキルに分類されるでしょう。
業務や職種によっては、そうしたビジネススキルを習得していることが重視されるのも事実です。
とはいえ、履歴書の資格欄に記入できるビジネススキルが自分が所属する会社や部署に必要なければ、何の意味もありません。
現代の日本企業では仕事の専門職化が進んでいますが、管理職は必ずしも精通した業務や組織を率いるわけではないという現実があります。
資格や検定として可視化できるビジネススキルは、管理職になっても習得可能です。
しかし、資格や検定を取得することとビジネススキルが高まることはイコールではありません。 業務を遂行するうえで必要なビジネススキルを身につけるために、勉強した結果として資格や検定を取得するという考えで臨まなければ、マネジメントに生かすことはできないのです。
自分が管理職として描くビジョンを達成するために、必要なビジネススキルやその方法についてきちんと考えることが大切です。
テクニカルスキルを伸ばす方法
管理職に必要とされるテクニカルスキルは、自ら業務を実践するためのものではありません。
むしろ、職場環境や部下の人事査定を行う際に評価を適正に行うために役立つものです。
また、部下の能力を適正に判断できれば、メンバーの長所・短所を踏まえたうえで組織運営を行うこともできます。
では、業務が多岐にわたり時間を取りにくい管理職がテクニカルスキルを伸ばすためには、何をしたらよいのでしょうか。
まず、テクニカルスキルの訓練を受けることです。
職場内であれば「OJT(On-the-Job Training)」という、業務に精通したベテラン社員からマンツーマンで指導を受ける訓練が有効です。
管理職は実務以外のテクニカルスキルを求められる機会が増えるので、職場外で行われる「Off-JT(Off-the-Job Training)」を活用するとよいでしょう。
自社内だけでなく、他社のテクニカルスキルを学ぶことで、それぞれの汎用性や専門性について見極めるスキルも育まれます。
また、自分のペースで学びたい管理職には「eラーニング」がおすすめです。
IT機器とネットワークがあればどこでも学習できますし、スマートフォンやiPadに対応するものも増えています。
自ら学ぶ機会を、積極的につくりましょう。
求められるスキル2-ヒューマンスキル
ヒューマンスキルとは?
対人関係能力を指す「ヒューマンスキル」は、円滑に業務を遂行するうえで欠かせないものです。
価値観の異なるメンバーと良好な人間関係を築くために、一人ひとりを観察・分析し、個々に適した働きかけを行う能力のことをいいます。 具体的には、
- コミュニケーション力
- 調整能力
- コーチング力
- リーダーシップ
- ファシリテーション力
- プレゼンテーション力
- 交渉力
- 論理的思考力
- 向上心
などが、ヒューマンスキルに含まれます。
職場におけるコミュニケーション力とは、単に会話がスムーズに進められることではありません。
相手の言葉に耳を傾け、言葉にならない本音を読み取ることも含まれます。
近年は対話せずにメールでやりとりが終始することも多いので、文章を書く際の言葉選びや文面に隠された本心を読み取る読解力や共感力も重要です。
調整能力とは、価値観の異なるメンバー間で意見が対立した時に、折り合いをつけるうえで欠かせないスキルです。
双方の意見を聞き、その本音を見極めつつ、組織にとって最善の解決手段へ導くのが基本です。
コーチング力は、動機付けとも呼ばれます。
部下が主体的に目標達成に向けて行動できるように、知識や指示を一方的に与えるのではなく、一緒に伴走するイメージで、モチベーションを維持させるための働きかけ力のことです。
リーダーシップと聞くと、組織をまとめることを連想する管理職が多いと思いますが、それだけでは片手落ちです。
組織を率いる管理職は、自分の言動や行動が部下によい影響を与えるように、率先垂範することが大切です。
また、重要な局面で的確にジャッジできる、判断力も含まれます。
ファシリテーション力は、集団で行うプロジェクトや会議をスムーズに進行するうえで必要な能力です。
会議であれば参加者の意見をまとめながら、最終的に全員が合意できる結論を出すための舵取りを行います。
組織の活性化や問題解決のためにも、ファシリテーターとしての役割を担うことが、管理職に求められます。
プレゼンテーション力とは、自分の考えを正確に伝えられる能力です。
管理職に求められるのは、会社の方針を部下に伝えるだけでなく、現場の要望を経営陣に理解してもらうためのプレゼンテーション力です。
相手が誰であっても、わかりやすく説得力のある話ができなければなりません。
交渉力は、社内外で発揮することが求められます。
顧客やメンバー間でのトラブル対応や難しい要望に対する落としどころの見極め、拒否を含めて自分たちに有利に進めるためには、不可欠となるスキルです。
論理的思考力は、ロジカルシンキングといわれることもあります。
協働するメンバーの個人または集団が感情的になると、正常な判断が難しくなります。
そのため、複雑な状況を客観視しながら分析し単純化する力が重要なのです。
ヒューマンスキルを伸ばすメリット
対人関係能力を指す「ヒューマンスキル」は、近年注目を集めています。
その背景には、日本の経済状況やグローバル化の加速など、ジネスを取り巻く環境が変化していることがあります。
ビジネス環境が変化する中でも、企業が恒久的に業績を維持しなければなりません。
ビジネス環境の変化に即応できる人材の育成が、企業の利益を確保するためにも不可欠となっているのです。
また、近年は人材の多様性とも呼ばれる「ダイバーシティ」が声高に叫ばれています。
終身雇用が保証されていたかつての日本では、上意下達でマネジメントが成立していました。
しかし現代は、価値観が多様化していることを踏まえて、個人を尊重しながら目標達成できるマネジメントが求められます。
企業の利益追求のためにも人材育成が不可欠であることを前述しましたが、一人ひとりの部下の人となりを知り、それを受け入れ、信頼関係を築くとともに、それぞれの特性が生かせる組織づくりを考えるうえで、ヒューマンスキルは欠かせないのです。
ヒューマンスキルを伸ばす方法
とはいえ、ヒューマンスキルはテクニカルスキルのように、学ぶことで身につくものではありません。
管理職がヒューマンスキルを伸ばすためには、職場環境や人と向き合う姿勢が大事なポイントになります。
具体的には、
- 自己
- 他者
- 状況
- 人間
の4つを理解しようという姿勢です。
自己理解とは、自分の本心や行動がわかるだけでなく、他者の指摘やアドバイスを真摯に受け止める姿勢も必要です。
他者理解とは、他者の言動や行動からその気持ちを汲み取り、受け止めるために不可欠な姿勢です。
状況理解とは、協働する組織の中での自分の立ち位置を客観視する姿勢で、それによりメンバー間と意見をすり合わせていくことができるようになります。
人間理解とは、メンバーそれぞれの長所・短所を受容し、時に指摘し合う人間関係を築くために、異なる価値観を知る姿勢を指します。
この4つの姿勢を持つよう意識して、積極的に人と関わっていく中で、ヒューマンスキルは磨かれていくのです。
求められるスキル3-コンセプチュアルスキル
コンセプチュアルスキルとは?
コンセプチュアルスキルとは、持っている知識や集めた情報を体系的に組み合わせることで、複雑な事象を概念化し、物事の本質を的確にとらえる能力をいいます。
管理職の中でも、経営陣に求められるスキルです。
コンセプチャルスキルの構成要素は、
- 論理的思考力
- 水平思考力
- 批判的思考力
- 多面的視野
- 柔軟性
- 受容性
- 知的好奇心
- 探求心
- 応用力
- 洞察力
- 直感力
- チャレンジ精神
- 俯瞰力
- 先見性
など多岐にわたります。
特徴的である「論理的思考力」「水平思考力」「批判的思考力」について、具体的に説明しておきましょう。
論理的思考力は、ロジカルシンキングと呼ばれることもあります。
物事を理論立てて整理したり、説明できる能力のことです。
水平思考力はラテラルシンキングとも呼ばれ、既成概念にとらわれず、自由な発想ができる能力をいいます。
批判的思考力とはクリティカルシンキングを指し、物事を分析的に捉えて思考できる能力です。
コンセプチャルスキルはテクニカルスキルやヒューマンスキルと違い、後天的に伸ばすのが難しい傾向にあります。
コンセプチュアルスキルを伸ばすメリット
コンセプチャルスキルはある意味センスに通じるところがあり、先天的な要素が大きいです。
しかし、経営陣であれば個々というより、組織のコンセプチャルスキル向上を図る必要があります。
それは、組織のコンセプチャルスキルが向上することで、さまざまなメリットがあるからです。
具体例をあげてみると、
- いかなる業務にも好影響を与えられる
- イノベーションを生み出す源泉となる
- 業務の生産性や質の向上につながる
- リスクマネジメントに有効である
- 正しく優先順位が設定できる
などがあげられます。
コンセプチャルスキルに含まれる問題解決力により、現場での目標達成やトラブルの解消ができるほか、相互理解を深めようという姿勢が良好な人間関係の構築にもつながります。
また、論理的思考力と水平思考力を併せ持つことで、それまでの知識や経験に基づき、製品開発や職場環境の改善などの場で、イノベーションを生み出す可能性が高いです。
それは、生産性や品質の向上にも好影響を与えます。
合わせて、短期・中期・長期という視野で戦略を練ることで、リスクマネジメントや経営上の優先順位の決定にも役立つはずです。
コンセプチュアルスキルを伸ばす方法
後天的にコンセプチャルスキルを身につけ向上させることは、それほど簡単なことではありません。
そのため、まずコンセプチャルスキルの構成要素を理解することが大切です。
前述したコンセプチャルスキルの構成要素は、「課題発見」「困難な課題への対応」「情報収集」「問題解決」「対処法評価」という、5つのスキルに大別できます。
一度にすべてのスキルを習得することはできなくても、段階的に身につけていくことは可能なはずです。
ただし、職場にスキル・アプローチを考慮した人事評価制度がなければ、コンセプチャルスキルの習得・向上に対するモチベーションを維持するのは難しいものです。
管理職を含めた社員がスキルアップを目指し、より有用な人材として活躍してもらうためにも、会社がスキル向上のモデルケースを紹介したり、評価基準を可視化することをおすすめします。
また、管理職とひとくちにいっても、階層によって求められるスキルは異なります。
そのため、コンセプチャルスキルの研修も階層別に行うとよいでしょう。
そうした研修の中で、論理的思考と水平思考を共存できるよう、思考回路を見直すプログラムを取り入れるという方法もあります。
また、物事や事象の概念化には、瞬間的思考と継続的思考の両面が必要です。
課題を細分化した際に、局地的に集中する瞬間的思考と、全体を俯瞰して考える継続的思考を使い分けられるよう、日ごろから意識して業務に臨んでみましょう。
合わせて、外部研修などを活用すると、より視野が広がるはずです。
まとめ 管理職のスキルアップ=組織力向上
今回は、結果を出せる管理職になるために必要なスキルや、それを身につけ伸ばす方法についてお話ししました。
- 管理職にはカッツ理論に基づく3つのスキルが必要
- 3つのスキルのバランスは階層によって異なる
- それぞれのスキルの特性とそれを向上させる方法
については、理解していただけたと思います。
管理職がスキルアップすると、組織や会社の業績向上にもつながります。
自分の立場やキャリアビジョンを考慮しながら、この記事を参考にスキルアップを実践していただけると幸いです。
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