管理職体験談:管理職になったとき、部下の大半は私の一回り年上だった。

[最終更新日]2023/11/03

体験談
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管理職体験談:管理職になったとき、部下の大半は私の一回り年上だった。

建築業界で防水工事業を営んでいる会社の支店長をやっています。

「防水工事業」とは、家にあるバルコニーや屋根に防水加工を施す施工業者のことです。
新築の家に対して防水工事を施工する仕事がメインです。

支店内に営業、事務、業務はもちろんのこと、職人もいますので、そうした人たち全員のマネジメント業務を行うのが私の仕事です。

職人は毎日違う現場に向かうことになるので、その予定管理も私がやります。

土日祝日が休みですが、クレーム処理など緊急の呼び出しがあればその日のうちに対応しなければなりません。「長期休暇を取って旅行に行く」というのがなかなか難しく、そこがいちばんの悩みどころです。

おすしさん(男性 35歳)
職業
建設業
職種
営業
年収
450万円
従業員規模
150名(うち部下10名)
地域
愛知県

Index

目次

美容師として社会人デビュー。その後、営業職に転身。

営業のイメージ

私はもともと美容師として社会人デビューをしていました。
ですが、キャリア6年程積み上げたところで体力的にきつくなってきて、挫折してしまいました。

その後、訪問販売の会社に転職して、新規の個人宅への営業を行ってきました。
そこでは「とにかく毎日、営業活動をすること」の繰り返しでした。
体力的にきつくなって転職したのに、そこでもまた体力が求められる仕事だったのです。

──明らかに私の調査不足ではあったのですが、一方で営業の面白さ、醍醐味のようなものも知れました。

(個人対象の営業だと、なかなか大きなお金を動かしにくい。法人営業の方が、もっと大きな仕事がしやすいだろう)

私はそう考え、わずか2年程でその会社を退職。
そして、現在の防水工事業の会社に転職しました。

3社目の職場で当時私は30歳も超えていましたので、もうそう簡単に「また転職」という訳ではありません。ここできちんと結果を出さなくてはという想いで、がむしゃらに新規や既存への営業をかけていきました。

その必死さを買われたのもあったのでしょうが、実績を上げられたことによって私は入社2年目で管理職に任命されました。

──営業職は、実績を作りやすいんですよね。日本企業で、営業上がりの管理職がとても多いのはそれが大きな理由だと思います。私もそのような、ありきたりな経歴でした。

「若造が、偉そうにしている」と言われて。

陰口のイメージ

今までは個人単位での営業成績が重視されましたが、管理職になってからは支店での売上と利益を追求されるようになりました。

管理職になること自体は、嫌ではありませんでした。
小さいころから「人の上に立つ」ことが大好きな性格でしたので笑、就任当初はかなりモチベーションが上がりました。

一方で、周りの社員はほぼ全員私より一回り近く年上でしたので、これにはやりづらさを感じました。

かなり平均年齢の高い職場ということもあって、年功序列を重んじる人間も多かったです。
あいつは何もわかっていない」、「若造が偉そうにしている」など、陰で言われることも少なくありませんでした。

支店の業績もそこまで良い時期ではありませんでしたのでそれにも苦労しましたが、そうしたコミュニケーションもかなり大変でした。
年上の部下への接し方というものが、当時の私はまったくわからなかったのです。

管理職になって大変だったことは。

落ち込むイメージ

管理職になって一番大変だったことは勿論、利益を上げ続けることでした。

そして、「利益を上げ続ける」ためには業務のあらゆるすべてのことに目を向けなくてはなりません。
たとえば、職場の人間関係や、チームワーク。

私はまず、営業部内のチームワークを高めることに活動の重きを置きました。
なにしろ学生時代とは違って、年齢も価値観も全く違う人間の集まりです。色んな人が色んなことを言って、意見が合う時と言えば会社や上司(私も含めて)の悪口の時くらい。

皆が同じ方向を向いて頑張ることが、実はとても難しいことなのだとそこではじめて知りました。

何人かの社員は、あからさまに私のことを嫌っていました。

色んな陰口が、風の噂で私の耳にも入ってきます。
前の週に散々私の悪口を言っていた部下が笑顔で「この件、よろしくお願いします」と言ってきたり、「あいつとは出張に行きたくないね」と言っている部下と新しく出張に行かなくてはならなくなったり。

自分のことを嫌っていると分かっている相手と共に働くのは、想像以上にキツかったです。

いつの間にか、業績もよりも「居心地の良さ」を求めていた私。

悩むイメージ

とにかく、全員にもっと好かれるようにしないと」といつも思っていました。

でも今思えば、それ自体が間違いだったんです。

管理職になってからしばらくは、色々な人の話を聞こうと無理して呑みに誘ってみたり、休日に遊んでみたりしました。

ですが、それによって上手くいくこともありますが、何も変わらないときのほうが多かったです。
なにより、時間が足りませんでした。

それでも何とかしようと奮闘していましたが、結果として私は相手の言うことをとにかく聞く「御用聞き」になってしまっていたのです。

業績も改善されず、部下からの信頼も勝ち取れず、そしてあるときまた風の噂で、「あいつはいつも人のご機嫌取りばかりしている」という評判を聴きました。

さすがにとても頭に来ましたし、もう辞めてやろうかとも思いましたが、こんこんとそのことについて考えているうちに、ふと「私はもしかして、業績よりも自分の居心地がよくなることを考えていたのではないだろうか」ということに思い当たりました。

もともとは売上・利益の追求のために取り組んでいたつもりでしたが、それだったらここまで部下に対して低姿勢になる必要がどこにあったのだろうか、と。
もちろん関係性が良くなればチームワークも活性して業績も上がりやすくなるかもしれません。でも、それが唯一の道ではない。まず業績を上げて、皆に信頼と安心を提供してから関係性を構築するという道だってあったはずです。

でも、私はとにかく部下との交流がストレスで、「まずそれをいち早く取り除きたい」という想いでいっぱいになっていました。

私が思う、管理職にとって一番大切なことは。

管理職のイメージ

管理職になって2年が経過しようとしています。

コロナ禍もあって、部下と呑みに行ったりする機会は殆どなくなりました。
ですが、以前よりも彼らからの信頼は得られるようになってきていると思います。

恐らく、支店の業績を少しずつ回復することができたことによって、私に任せても大丈夫だろうと感じてくれたのでしょう。

管理職としての働きかけで大切なことはたくさんありますが、一番はやはり結果を出すことだと、私は思います。
どんなに頑張っていても結果が出ていない管理職や上司に、部下は「ついていきたい」とは思わないものです。

そして、頑張っても結果が出ないことの方が圧倒的に多いです。だから、常に改善の繰り返しを続けること。これができるかが、管理職としてうまく行く人と行かない人を別けるポイントだと思います。

私が管理職になりたての頃、ちょうど支店の業績が下降し始めた時期でした。
恐らく古参の社員達は、「これから先どうなるんだろう」と不安がっていたことでしょう。そんなとき、へらへらと低姿勢で呑みにばかり誘う若造の管理職が出てきたら、誰だっていい気はしないだろう──と、今ではなぜ私があそこまで嫌われたのかがよく分かります。

つまり、私は社員達から求められていることをしっかり把握できていなかったのです。

仕事に対して「結果がすべてだ」というと、寂しく感じてしまう人もいるかもしれません。
でも、こう言いかえることもできると思います。「すべての道は、結果に繋がる」。

今自分の取っている行動がどんな結果に繋がるのかをしっかりイメージしながら、決して目先のことや感情だけにとらわれずにいれることが、管理職として大事な意識づけであると思います。