「部下・チームの【自分で考える力】を高めたい!」というときの対策7点
[最終更新日]2023/11/06

「部下・チームが『自分で考える』ことをしてくれない…」
「感覚的に『なんとなく』で考えを進めてしまうメンバーが多い」
「部下の出してくる企画や提案書の、ベースとなる考えがまだまだ浅い」
部下を持った際、またはチームをまとめる役割になったとき、上に挙げたような不満や悩みを持つことがあるかもしれません。
この記事では、部下やチームメンバーの「自分で考える力」を改善し高めていく為のポイント・対策について紹介しています。
他人の思考に対して直接的に働きかけることはとても難しく、多くの場合思い描く結果にはならないものです。
ですが、視点を変えてこちらから働きかける力点をずらしてみると、スッとうまくいくことも少なくありません。
ポイントは、当人たちに直接働きかけるのではなく、自然と働きかけるための「仕組み・仕掛け」を作ることです。
どういうことか、詳しくお伝えしていきます。
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Index
目次
1)あなたの部下・チームの「思考の習慣」は今、どんな状況?

自分自身が「もっと考えて行動しよう」と考えて実践するのでしたら、比較的簡単でしょう。自分で「学ぼう」「実践しよう」と決め、行動するだけですから。
ですが、他者に働きかける場合はその前段に「動機付け」が必要になります。「なぜそれが必要なのか?」の疑問に対する答えがなければ、(多くの場合)人は動きません。
また、必要な理由を伝えて理解させようとしても、あまりうまくいかないでしょう。その「理由」はあなたのものであって、相手のものでは(まだ)ないからです。
ではどうすれば良いかというと、相手にその動機付け(必要性を感じてもらう機会)を持ってもらうための「仕掛け・仕組み」を作っていくのです。
適切な仕組み・仕掛けとは、その部下・チームの状況によって変わるものです。
以下3つの状況のうち、あなたの部下・チームの状況として近しいものがあったら、それに対応する仕組み・仕掛けからチェックしてみてください。
部下・チームの状況 | 仕組み・仕掛け |
---|---|
自分で考えることをあまりしない |
|
主観的・感覚的に考える傾向が強い |
|
論理的な思考がまだ浅い |
|
次章からは、それぞれの状況ごとに、対策を詳しく説明していきます。
2)「自分で考えることをあまりしない」部下・チームへの対策3つ

「自分で考えることをしない」部下・チームに対しては、以下の仕組み・仕掛けが効果的です。
- 「行動目標」から「成果目標」へのスイッチング
- ルーティン:非ルーティン「5:5」構造
- 振り返り(経験学習)の定例化
「行動目標」から「成果目標」へのスイッチング
仕事とは、常に達成すべき「目標」ありきです。
掲げられる目標は業務やその人に課せられたミッションによってさまざまで、「今日までに、この業務を終わらせる」というような目標もあれば、「今月中に、売上●●万円を目指す」というような目標もあります。
ちなみに、目標とは以下の3つのタイプがあるといいます※。
行動目標 | 日々の業務における各アクション・行為に関する目標 ex)「今月内に新規顧客開拓〇〇社を目指す」「サービス〇〇の開発をバグなく完成させる」 |
---|---|
成果目標 | 売上や会員数またはそれに関わる指標値等の、数値や状態に関する目標 ex)「今月問い合わせ数〇〇件を目指す」「今月売上〇〇万円を目指す」 |
意義目標 | 組織ビジョンやミッションなどの、「このチーム・組織が存在する・活動し続ける」上での意義に関する目標 ex)「サービス〇〇を通じて、世の中の人達の生活を変革する」 |
※「THE TEAM 5つの法則」(麻野 耕司著 幻冬舎)を参考。
上記の目標タイプは、対象者の経験年数や役割・ポジションによって振り分けられるものと思われがちですが、そんなことはありません。
例え入社1~2年目の若手社員であっても、「成果目標」や「意義目標」を持つことによってチーム・組織にポジティブな影響を与えていくことができるのです。
もちろん、どの目標も大切なものでありこれらタイプに優劣をつけるべきではありませんが、注意すべきは「行動目標のみに終始する人は『自分で考える機会』が少なくなりがちになる──」ということです。
参考:3つの目標のそれぞれの特徴・傾向

「自分の頭で考えない」と感じられる部下やチームメンバーがいたとき、その人は日々の業務において「行動目標」に終始している可能性が高いです(もしくは目標への意識自体が薄まっている場合もあります)。
その場合、行動目標だけでなく「成果目標」や「意義目標」についても段階的に設定させていくことが、有効な解決策となるでしょう。
成果目標や意義目標を設けて運用することは、決して簡単なことではありません。
ですが一方で、「部下への目標設定」は上司が行う業務でもっとも重要なものであり、もし現在「部下やチームメンバーに対して、適切な目標設定ができていなかった」と感じるようでしたら、部下の課題よりも上司であるあなたのその課題を解決すべきです。
目標設定のポイントは、「達成可能と思える目標から、期間を決めてはじめる」ことです。当人たちとじっくり話し合いながら、進捗を振り返りながら徐々に目標レベルを高めていくと良いでしょう。
ルーティン:非ルーティン「5:5」構造
「ルーティン:非ルーティン『5:5』構造」とは、「頭を使わずに行えるルーティン業務と、頭を使って行う非ルーティン業務をバランスよく、部下またはチームに業務を与え運用する」ことです。
割合を「5:5」に厳密にきっちり合わせる必要はありませんが、ルーティン業務の占める割合によって「自分で考えよう」という意識が影響されるのは想像に難くないでしょう。
ここで注意しておきたいのが、「ルーティン業務」という言葉に対する捉え方です。
あなたが「この業務は非ルーティンだ」と思っていても、相手(部下やチームメンバー)はルーティン業務と認識していることもあるでしょうし、その逆もまた然りです。
また、ルーティン・非ルーティンは職務内容によって明確に分けられるものではありません。
例えばデザイン業務はクリエイティブ性が強い印象がありますが、「毎日同じデザインを描くばかり」であったり、「依頼書に細かく指示があるので、それに沿ってデザインするだけ」でしたらそれはルーティン業務になります。
では、ルーティン業務をどのように定義すると良いか。──例えば、以下の図のように業務を3つの区分で表わすと理解を進めやすいでしょう。

「イノベーションの業務」とは、実施する上でチームまたは組織に必要なノウハウ・事例が無いまたは乏しく、一定数の試み、試行錯誤、集団的ブレーンストーミングが不可欠な業務です。
続いての「複雑な業務」は、現実的な数値や結果を求める業務に多いです。意識すべき指標値が複数あり、かつ携わる関係者が多いため、高度な思考や頻繁なコミュニケーション、そして課題解決・改善への取り組みが求められます。
そして「ルーティンの業務」とは、不確実要素がほとんどなく、アクションに対する結果・成果が明確な業務です。イノベーションの業務・複雑な業務と比べて、考える要素があまりないのは明らかでしょう。
一度、部下・チームの業務内容が、イノベーションの業務・複雑な業務・ルーティンの業務の3区分のうち、どこに寄っているかを確認してみてください。可能でしたら、当人たちと話しながら確認してみると良いでしょう。上司のあなたが「ルーティンの業務」と思っていても、部下やチームの人たちは「複雑な業務」「イノベーションの業務」と思っていることもあるかもしれません。
どんなに優秀な人でもルーティン業務の割合が高くなると、仕事上で「自分の頭で考えよう」という意識・習慣は低減するものです。一方で、「考えるのが苦手」という人でも複雑な業務やイノベーションの業務に関わっていくうちに、だんだんと自発的な思考の習慣が付いてくることは多いです。
もちろん、当人たちの知識・スキルの成熟度に合わせて業務を渡していくことが前提ではありますが、ときに少し背伸びをさせるような業務を依頼することは、「仕事において、自分の頭で考える」ことを習慣づけしていくうえで、とても大切なことだと、私は思います。
振り返り(経験学習)の定例化
「仕事において、自分で考えることをあまりしない」社員は、自身の「成長」や「スキルアップ」への関心も低いことが多いです。
もしそのような傾向が実際に見られる(感じられる)のなら、上司はまず当人の成長意識を刺激させていくことが求められるでしょう。
具体的にどうするかというと、「当人が目指そうと思える目標」を設定すること、そして携わった業務に対して「振り返り」の機会を持たせることです。
振り返りとは、出来事(行った業務やその結果)と、そのときの環境・周囲の状況、そしてそこにいた自分自身について「客観的」に(ポジティブ・ネガティブかかわりなく、ニュートラルに)見つめなおすことをいいます。
なぜ振り返りが大切なのかというと、「ビジネスにおける個人の学習は、およそ70%を経験から学ぶ」※1と言われているからです。
ただし、単に経験しただけで学びになるかというとそうではなく、多くの場合その経験を「振り返る」ことによってはじめて、「新たな気づき」や「概念化」に繋げられる※2のです。

図中の「新たな気づき(概念化)」がなければ、どんなにたくさんの経験をしても新しい行動は起こしにくくなるので、成長やスキルアップはあまり期待できません。
ですが、経験後に「振り返り」の機会を持ち続けることによって、人は新たな気づきや概念化の機会、そしてその後の「行動」と「経験」の機会を持ちやすくなり、その循環が自身の成長速度を高めていきます。
※1 経営コンサルタントであるマイケル・ロンバルドとロバート・アイチンガーの研究による。「ビジネスにおいて人は70%を仕事上の経験から学び、20%を先輩・上司からの助言やフィードバック、10%を研修などのトレーニングから学ぶ」
※2 組織行動学者デイビッド・コルブの「経験学習」を参考。「経験を単なる経験に終わらすことなく、自身の学びへと昇華させ、次のアクションへと繋げ、自身で概念化する」
部下やチームに振り返りの機会を持ってもらう上で有効なのが、「1on1ミーティング」でしょう。
例えば週1回「1on1ミーティング」を行い、そこで例えば以下について話し合います。話し合いの際は、なるべく部下やチームメンバーに考えて話してもらうように進めると良いでしょう。

ここで上司の方々が事前にやるべきことは、上の図の「目標(主なミッション)」を定め、当人たちと共有しておくことです。
「振り返り」の作業は、明確な目標・目的のないまま行っても適切な効果は得られません。前述した「行動目標、成果目標、意義目標」も意識しつつ進めてみてください。
3)「主観的・感覚的に考えがち」な部下・チームへの対策2つ

自律的・能動的な働きは一定以上できているものの、そこでの思考が感覚的・主観的になっている部下・チームに対しては、以下のアプローチが有効です。
- 「点」ではなく「プロセス」を見る視点
- 「ベンチマーク思考」
「点」ではなく「プロセス」を見る視点
主観的・感覚的に物事を見る傾向のある人は、捉える事象について「点」の視点になることが多いです。
例えば企画書の制作業務の場合、「企画書の完成」に意識がフォーカスされ、その後の「クライアントからの企画書の評価」であったり「企画書をもとにプロジェクトを開始する」といった点がおざなりになる──ということです。
その際に、上司は部下やチームメンバーに任せる業務・タスクを「点」で渡すのではなく、「プロセス」自体を渡していくのが効果的です。
先に挙げた「企画書の制作」業務でしたら、依頼する際に「点」で渡すケースと「プロセス」で渡すケースは以下のように表わせるでしょう。

上記図を見てわかるのが、「プロセスの視点で渡す場合」では「クライアント」や「関係メンバー」など多くの関係者(ステークホルダー)が登場することです。もちろんこれにより考えることは多くなり、業務の難易度は高まりますが、おのずと主観的思考から客観的思考に重きを置かれるようにもなるでしょう。
業務をプロセスで渡す場合、その進捗については前述の「PLAN-DO-SEE」のサイクルで確認していくのが効果的です。

上記のPLAN-DO-SEEの流れにおいて、上司の方ははじめのうち「PLAN」と「SEE」を部下やチームメンバーと一緒に行い、プロセスの運用に慣れてくるのに合わせて徐々に当人たちに任せていくと良いでしょう。
「ベンチマーク思考」
本来ベンチマークとは、「指標」や「基準」という意味ですが、ビジネス上では「自社の事業や商品・サービスについて、優良他社のそれらと比較する」際にも用いられます。 つまり、「ベンチマーク思考」とは自分たちの会社や商品・サービスをよりよくしていく為の比較材料を持ち、改善に向けての取り組みをする、ということです。
例えば商品・サービスを扱う業務の場合は、より優秀な商品・サービスをベンチマークとし、それを超える品質を目指すための取り組みを考えます。よりイメージのつきやすい表現で「ライバルを見つける」と言い表すこともできるでしょう。
主観的・感覚的にとらえる傾向の強い人は、判断基準の多くを「自身の内側」で持ってしまうことが多いです。それに対してベンチマーク思考は、「思考を外側に向ける」行為でもあり、視野の広がりや新たな気づきにつなげやすいのです。
ここでポイントとなるのが、「ベンチマークの対象」と、「評価軸」です。なにをベンチマークにして、そして比較する評価軸をどこに置くか──ということですね。
それぞれの設定するポイントを以下にまとめます。
ベンチマークの対象を選ぶ際のポイント
同業他社、競合商品・サービス、または社内の他事業・他チーム内で、かつ
- 「自分たちよりも優れているところ」があり、かつ「頑張れば手に届く」と思えるもの
- 比較的情報を入手しやすいもの
を優先して選出する。
評価軸を設定する際のポイント
- ①改善したい課題(目標)を定める(ex:商品の売り上げ、業務効率性、HPのアクセス数 等)
- ②その目標を適えるうえで、影響値の大きい要素を3~4つピックアップして、それを評価軸にする
たとえば、自社で運営しているHPのアクセス数を伸ばしていこうという際は、以下のように検討していきます。
ベンチマーク例:自社サイトとベンチマーク設定した他社サイトA~Cの比較
ベンチマーク候補 | 月間のアクセス数 | 情報網羅性 | 記事内容の品質 | デザイン・見やすさ |
---|---|---|---|---|
他社サイトA | 推定300万ユーザー | ◎ | ◎ | 〇 |
他社サイトB | 推定200万ユーザー | 〇 | ◎ | ◎ |
他社サイトC | 推定150万ユーザー | 〇 | ◎ | ◎ |
参考:自社サイト | 50万ユーザー | ◎ | △ | △ |
上記ベンチマーク例の場合ですと、他社サイトA~Cと比較した結果、自社サイトには「記事内容の品質」に改善ポイントがあることが解ります。どう改善して行けば良いかについても、そのままベンチマークとしたA~Cのサイトをみることによってヒントを得られやすいでしょう。
これらベンチマークの対象と評価軸は、はじめのうちは上司が設定しておいた方が良いかもしれません。当人たちの状況(モチベーションやその分野での知識成熟度)によっては、はじめから部下・チームメンバーに探してもらっても良いでしょう。
ベンチマーク思考の進め方は、以下の通りです。

もしかしたら、「すでに似たようなことをやっている」という上司の方も多いかもしれませんね。
その場合は、より効果的・効率的に進める方法が無いかを見ておくと良いでしょう。
4)「論理的な思考がまだ浅い」部下・チームへの対策2つ

「頑張っているんだけど、まだ考えや判断が甘い」「自分で考える習慣はあるが、適切な行動に繋げられていない」という部下・チームメンバーに関しては、以下の仕組み・仕掛けを設けていくと良いでしょう。
- 「2W1H+BIG WHY」フレームワーク
- 「直線的思考」から「円環的思考」へのスイッチング
「2W1H+BIG WHY」フレームワーク
2W1Hとは、業務などのアクションを「WHAT(何をやるのか)」、「WHY(何の目的で)」、「HOW(どうやって)」の3つを明確にしていくことです。

例えば、「売り上げのデータ入力作業」でしたら以下のようになるでしょう。
WHAT(何をやるのか) | 売り上げのデータ入力 |
---|---|
WHY(何の目的で) | 日々の売り上げ状況の可視化 |
HOW(どうやって) | Excelを使って入力 作成後は上長および関係メンバーに報告 |
ここまでの内容ですと、「書いている内容は当たり前のことだ(わざわざ書かなくても済む内容)」と感じられそうですよね。では、ここにWHYの更に根本にある「BIG WHY(真の目的)」を加えてみるとどうでしょうか。
WHAT(何をやるのか) | 売り上げのデータ入力 |
---|---|
WHY(何の目的で) | 日々の売り上げ状況の可視化 |
BIG WHY(真の目的) | 関係メンバーの売り上げ向上に向けての意識向上 数値変動が起きた際にいち早く察知し、原因・対策を検討できるようにする |
HOW(どうやって) | Excelを使って入力 →関係者が確認する際に、見やすいレイアウトにする →直近の数値変動についてコメントエリアに記す 作成後は上長および関係メンバーに報告 →数値確認をスムーズにできるように、メール文に数値のサマリーを書いておく →メールやチャットだけでなく、口頭でのコミュニケーションも意識 |
2W1Hで考えたときよりも、「HOW」の内容がより具体的かつ効果的になっているのが分かるでしょう。
このように、一つの業務・アクションにおいて「BIG WHY」まで意識を向けられていると取るべき行動は大きく変わるのです。
2W1HにBIG WHYを加えて考えるプロセスイメージは、以下のように表わすことができます。

普段からBIG WHYまで意識しながら業務出来ている人は少数派かもしれません。
ですが、常に深い思考で高いアウトプットを発揮し続けている人の多くはBIG WHYについてしっかり押さえていることが多いです。
また、企画系業務や戦略業務において、ひとつひとつの業務・アクションにおいて「BIG WHY(真の目的)」まで思考を及ぼせているかは成否に大きく関わるでしょう。
BIG WHYを考えることはそれほど難しいことではなく、誰でも実践できることです。
上司であるあなたの方で「あまり意識していなかった」ということでしたらまずご自身から積極的に取り入れ、部下やチームメンバーに伝播させていくと良いでしょう。
「直線的思考」から「円環的思考」へのスイッチング
部下やチームメンバーにより深い思考を習慣づけさせたい際のもうひとつの働きかけとして、「円環的思考」があります。
円環的思考とは、「物事は巡り巡って関連・影響しあう」という考え方です。
どういうことか、例を持って説明しましょう。

上の図の「直線的思考」は、仕事への取り組みを高めることによって慣れや経験を積んでいき、それが提案の品質や受注の確率に繋がることを現しています。
もう片方の「円環的思考」も同様のことを伝えつつも、同時に「それら取り組みは巡り巡って、経験・スキルとして積みあがっていく」ことも表現しているのが分かります。こちらの方が「一つ一つの行動が次(未来)につながっている」感覚を持ちやすく感じる人が多いでしょう。
直線的思考はいわば「結果論」的な思考です。
最終的な結果を良いものにしていく為に有効な思考と言えるでしょう。
一方、円環的思考は「プロセス・成長」的な思考と言えます。単一の結果にこだわることなく、一連の行動を一つの構造(システム)として捉え、構造全体がより良い循環にしていくた際に求められます。
直線的思考は短期的な問題解決には向いていますが、プロセス・成長を大切にしたいフェーズや思考を深めていく行為にはあまり適していません。それに対して円環的思考は、物事を大局として捉え、可視化されにくい成長や進歩のプロセスを感じやすくできるのです。
当然、円環的思考の方が思考の深まりは実現されやすくなります。
そもそも、世の中で「直線的なプロセスで完結する」物事はそう多くありません。ほとんどの物事は周囲から影響を受けたり逆に与えたりしながら存在し続けているのです。
複雑かつ変化していく事柄においては、直線的思考ではなく円環的思考でアプローチしたほうが適切な見解・判断を持ちやすくなるでしょう。
円環的思考の進め方
円環的思考を行う際は、以下の流れで進めていくと良いでしょう。
- ① 積み上げていきたい(進歩・成長させたい)要素を定める
- ② その要素を高めていく為に必要なものを考える
- ③ その要素を高めた結果、何が実現できるか(自分にとってどんなメリットがあるか)を考える
- ④ ②と③で挙げた要素に対しても同様に、その要素に必要なもの、結果として得られるものを挙げて矢印で結んでいく
- ⑤ 矢印が「円環」になる(循環する)ところを見出していく
- ⑥ 作成された構造で、どの部分から着手すると効果的かを検討する(テコ入れ箇所を見出す)


円環的思考を進める際のポイントは、上記手順の①に挙げた「積み上げるもの」を何に定めるかです。
例えば、「●月の売り上げ」というような一定のスパンでリセットされてしまうものではなく、中長期的に積み上げて高められるものを選ぶと良いでしょう。
例えば、「部下のプレゼン力を高めたい」という場合は、「プレゼン力」自体を積み上げるものとして設置しても良いでしょうし、「企業やサービスのブランド力」という要素で作成しても良いかもしれません。
また、円環的思考は上記のように図に表しておくと、他者と考えを共有したり、より良い円環にしていく為のブレストも発展しやすくなります。
まとめ) 「自分で考える力」は、環境と習慣によって育まれる

部下・チームの「自分で考える力」について、ここまで6つの仕組み・仕掛けについて紹介しました。
この中で「効果がありそう」と思えるものがありましたら、ぜひ取り組んでみてください。
「自分で考える力」とは、その人の能力や資質からというよりも、そこでの環境や習慣によって力強く育まれるものだと、私は思います。
そして、現在部下やチームを担う方々は、その環境や習慣自体を創っていくことができる立場にあります。
部下・チームの「自分で考える力」を育んでくための環境づくりで、この記事が少しでもお役立てできることを、心より願っています。
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