アカデミー作品賞受賞映画おすすめ12選
[最終更新日]2022/12/15
米国最大の映画の祭典であるアカデミー賞。
その中でも「作品賞」は、その年の顔となる映画に贈られます。
「作品賞はどこか堅い印象が……」と思われている方も多いかもしれませんが、蓋を開けてみれば意外にもジャンルを跨いだバラエティに富んだラインナップとなっています。
今回は「アカデミー作品賞」をテーマに、主に70年代~2010年代を焦点にあて、魅力をご紹介していきます。
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Index
目次
70~80年代
おすすめその①『ゴッドファーザー』(1972年/アメリカ/175分)
【あらすじ】
シシリーからアメリカに移住し、一代で財を成したドン・コルレオーネ。三男のマイケルはひとり堅気な人生を送ろうとしていたが、敵対するファミリーにドンが襲われ重傷を負った時、彼は報復を決意する。そしてニューヨークは抗争の場と化していった……。
マフィアのボスとして、家族の長として、そして一人の男としての人生
一代でファミリーを築き上げたマフィアのドン・コルレオーネの生きざまと、そこから連なるファミリーの系譜を描いたフランシス・フォード・コッポラ監督の傑作ギャング映画『ゴッドファーザー』は、三部作約9時間の一大叙事詩として、非常に見ごたえのある作品です。
マフィアとしての血にまみれた抗争も見どころの一つですが、そこから浮かび上がるメッセージは「組織のボス」として「一家の長」として、そして「一人の男」としての矜持を伝える人生哲学に溢れた作品でもあります。
「家族と時間を過ごさない男は、本物の男にはなれない」
劇中でコルレオーネが口にするこちらのセリフは、ストレートでありながら重みがあり、自分の生き方を見直すきっかけにもなります。
その圧倒的なカリスマ性によって順調にキャリアを積んできたように思えるコルレオーネですが、PARTIIではその若き日の葛藤と、彼の息子であるマイケルの人生を並列して描くことによって、よりコルレオーネという男のキャラクターを印象深くしています。
約9時間の鑑賞は「気軽に観る」という心持ちでは臨めないかもしれませんが、きっと忘れられぬ映画体験となることでしょう。
ゴッドファーザー
調査日:2020/08/17
○印は見放題配信。金額表示はレンタル料金です。動画の配信状況はマネージャーライフが調査した時点での情報です。詳細は各公式サイトでご確認頂けますようお願いします。
おすすめその②『カッコーの巣の上で』(1975年/アメリカ/133分)
【あらすじ】
刑務所の強制労働から逃れるため精神異常を装ってオレゴン州立精神病院に入ったマクマーフィは、そこで行われている管理体制に反発を感じる。彼は絶対権力を誇る婦長ラチェッドと対立しながら、入院患者たちの中に生きる気力を与えていくが……。
飛び方を忘れた鳥たちは……
ケン・キージーによる1962年の長編『郭公の巣』を原作に、ジャック・ニコルソンを主演に迎えた作品。
刑務所の強制労働から逃れるために精神異常を偽った男が、絶対的な権力を行使し患者を虐待する看護婦長と対決する。
今でこそ、精神疾患は薬で治療を行うことが可能となっていますが、薬が開発されたのは1950年代以降。
ではそれ以前は、どのように治療を行っていたのでしょう。
その昔、精神疾患は体内の物質が何かしらの影響を受け、精神に病を引き起こしていると考えられていました。
精神疾患に対抗する治療法として編み出されたのが「ショック療法」。
たとえば患者を湖に突き落としたり、椅子に縛り付け頭に電気を流したりと、今では考えられない拷問のような治療が当たり前に行われていたのでした。
本作『カッコーの巣の上で』の舞台も、まだそうした療法が横行していた精神病院を舞台にしています。
精神疾患を「偽っていた」マクマーフィという男を主人公に据えることによって、患者に行われている治療法は、虐待ではあっても決して治療ではない、という事実を観客に投げかけ、「マクマーフィvs病院」という対立構造を分かりやすくしています。
徐々に患者たちを先導し、活力を与えていくマクマーフィ。
ラストの強烈な幕切れに向け丁寧に紡がれる人間賛歌は、今の世相にも重ね大きな勇気を与えてくれることでしょう。
おすすめその③『クレイマー、クレイマー』(1979年/アメリカ/105分)
【あらすじ】
毎晩深夜に帰宅する仕事人間の夫テッドに愛想を尽かし、自分自身を取り戻すために家出した妻のジョアンナ。その翌日からテッドは7歳の息子を抱え、仕事と家庭の両立に励むが、家出から1年後、ジョアンナが息子の養育権を主張し、テッドを提訴する……。
「家族の定義」って何?
一組の男女が互いに惹かれ合い夫婦になるのだとすれば、二人の心が離れた時に夫婦では無くなってしまうのもまた、仕方のないことなのかもしれない。
しかし、二人の間に子供がいた場合、その子供の心は誰が尊重してくれるのだろう……?
1979年に制作された本作が大ヒットを記録したのも、ひとえに夫婦の離婚劇を「子供の視点」から捉え直したことによる手腕が大きいでしょう。
主人公夫婦を演じるのは言わずと知れた名優ダスティン・ホフマンとメリル・ストリープ。
彼らの奏でる夫婦の不協和音は、ある日突然に壊れてしまった日常を体現するものですが、本作が演技初となる子役ジャスティン・ヘイリーの繊細で可憐な演技が、本作最大の華となっています。
これまで仕事にばかりかまけ、子育てを疎かにしてきた父テッドの家事奮闘と息子との止まったままの時計の針が再び動き出す気配はエモーショナルで、後半の母であり妻のジョアンナを交えた親権争いが、「家族とは一体何なのか?」というテーマをよりリアルで手触りのあるものにしています。
クレイマー、クレイマー
調査日:2020/08/17
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おすすめその④『普通の人々』(1980年/アメリカ/124分)
【あらすじ】
ごく普通の中流家庭であるジャレット一家。お互いに尊重し合い、家族4人で幸せな毎日を送っていた彼らに、長男の事故死と次男の自殺未遂という悲劇が降りかかる。そしてこの出来事をきっかけに、信頼しあっていたはずの家族の歯車が少しずつ狂いはじめるのだった……。
平和な一家の日常は、一つのボタンの掛け違いから終わりを告げる
現在は俳優業を引退してしまいましたが、かつて二枚目スター俳優としてキャリアを築いていたロバート・レッドフォードによる初監督作が『普通の人々』。
タイトルにもある通り、スポットがあてられるのはごくありふれた中流家庭であるジャレット一家。
しかし、そんな彼らの生活は、長男の事故死、次男の自殺未遂によって音を立てて崩れ去る。
一家の長であるカルビンは、再び家族の絆を取り戻せる日が来ると希望を捨てず毎日を生きますが、実はこの父こそが最も「助け」を必要としている存在であることが、その後の語りで明らかになっていきます。
本作は終始重たいトーンで展開していきますが、「他者の存在によって救われる」という事実を淡々と描き切った作風は、暗い光の中に一条の光をあてる「監督ロバート・レッドフォード」の作家性とも言えるでしょう。
普通の人々
調査日:2020/08/17
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90~00年代
おすすめその⑤『羊たちの沈黙』(1991年/アメリカ/118分)
【あらすじ】
若い女性を殺害しその皮を剥ぐという猟奇事件が続発。捜査に行きづまったFBIは、元精神科医の殺人鬼ハンニバル・レクターに示唆を受けようとする。訓練生ながらその任に選ばれたクラリスは獄中のレクターに接触する。レクターはクラリスが、自分の過去を話すという条件付きで、事件究明に協力するが……。
人ならざる悪の所業は、悪によって暴かれる
数多あるサイコ・サスペンスの映画群の中でも圧倒的な存在感を放つ「ハンニバル・レクター」を生み出した『羊たちの沈黙』。
1991年に公開されたこの作品により、その後の映画史に「シリアルキラー映画」のジャンルを確立させました。
FBIの女性捜査官クラリスは、若い女性を狙った連続猟奇殺人事件の捜査にあたっていたが、捜査は行き詰まりに陥っていた。
そこで、元精神科医であり「殺した人間の肉を食べる」猟奇殺人犯でもあるハンニバル・レクターに、一向に見えてこない犯人像のプロファイルを依頼するのだが……
本作でハンニバル・レクターを演じたアンソニー・ホプキンスは、わずか16分の出演時間でありながらその年のアカデミー主演男優賞を獲得。
冒頭の登場シーンからにじみ出る不気味さは、もはやホプキンス以外には思いつかない名演です。
一見、レクター博士の存在感に引っ張られがちな本作ですが、主人公クラリスの成長物語としても見ごたえのある作品になっています。
その後シリーズ3作とドラマシリーズも制作されるなど、作品世界を拡張し続ける本作。
その歴史の幕開けとなる一作目『羊たちの沈黙』を、ぜひご覧ください。
羊たちの沈黙
調査日:2020/08/17
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おすすめその⑥『フォレスト・ガンプ/一期一会』(1994年/アメリカ/142分)
【あらすじ】
知能指数が人よりも劣っていたが、母親に普通の子どもと同じように育てられたフォレスト・ガンプは、小学校で優しく美しい少女ジェニーと運命的な出会いを果たす。俊足を買われてアメフト選手として入学した大学ではスター選手として活躍。卒業後は軍隊に入り、ベトナム戦争で仲間を救って勲章をもらい、除隊後はエビ漁を始めて大成功を収める。しかし、幼い頃から思い続けているジェニーとは再会と別れを繰り返し……。
「人生はチョコレートの箱のようなもの。開けてみないと分からない」
ロバート・ゼメキス監督、トム・ハンクス主演による『フォレスト・ガンプ/一期一会』は、映画という虚構世界の主人公フォレスト・ガンプが、私たちの生きる現実の出来事と時にリンクしながら人生を奔走するヒューマンドラマです。
フォレスト・ガンプは、知能は人よりも低いが、母の教えにより素直に誠実に毎日を生きている。
彼の登場シーンで、一言目にこんな台詞が放たれます。
「人生はチョコレートの箱のようなもの。開けてみないと分からない」
これは彼の母親の口癖でもあったのですが、フォレスト・ガンプはまさにこの言葉に導かれ「一期一会」の人生を懸命にひた走る。
人生、様々な出会いもあれば、同時に様々な別れの連続です。
そんな喜怒哀楽、波乱万丈な一人の男の人生を追いかけるだけでも十分に楽しめる一作なのですが、その中で放たれる数々の「金言」にも注目。
時に歩みを止めてしまいたくなるような世の中、フォレスト・ガンプのような人生哲学を持ってすれば、きっと乗り越えられる。そんな勇気を与えてくれる作品です。
フォレスト・ガンプ/一期一会
調査日:2020/06/09
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おすすめその⑦『アメリカン・ビューティー』(1999年/アメリカ/117分)
【あらすじ】
郊外住宅地で妻と高校生になる娘と平和に暮らすレスター。ところがある日、勤めていた広告代理店からリストラ宣告を受けてしまう。これをきっかけに、一見幸せに思えた彼の日常の歯車が少しずつ狂い始め…。
これは、どこにでもある家族の物語
時代を問わず、多くの作品で重要なテーマに掲げられてきた「家族」映画。
本作『アメリカン・ビューティー』も、アメリカのある一家の日常を切り取り、徐々に歯車が噛み合わなくなっていく家族の不協和音を、コメディタッチで描いた作品。
しかし、本作が他の家族映画と一線を画するのは、「血の繋がり」としての家族の絆ではなく、「家族の無意味さ」を説いてみせた物語構造にあります。
レスター家の長、レスター・バーナムは、広告代理店に勤める至って平凡な男。
妻のキャロラインと娘のジェーンと3人で一見すると、何不自由ない生活を送っていたが、彼らの間の絆は「虚飾」にまみれた空疎なものだった。
本作は冒頭のバーナムのナレーションにより、彼が1年後に死ぬことを提示し、物語はその通りに進み、幕を閉じます。
彼の家庭が崩壊していく様を、我々観客はカメラの視点から「傍観」するしかない。
様々な価値観の多様化が進み、家族の在り方も見直されてきている中で、90年代の終わりに放たれたこの怪作は、今の世ではもはや当たり前になりつつあるかもしれない。
本作を観て、この家族は「おかしい」とあなたは思うでしょうか? それとも……。
アメリカン・ビューティー
調査日:2020/08/17
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おすすめその⑧『ノーカントリー』(2007年/アメリカ/122分)
【あらすじ】
狩りをしていたルウェリンは、死体の山に囲まれた大量のヘロインと200万ドルの大金を発見する。危険なにおいを感じ取りながらも金を持ち去った彼は、謎の殺し屋シガーに追われることになる。事態を察知した保安官ベルは、2人の行方を追い始めるが……。
悪意のない「悪」に対峙した時、人は打ちひしがれるしかない
小説家コーマック・マッカーシーの『血と暴力の国』を、『ファーゴ』などの作品で知られるコーエン兄弟が映画化したノワール映画。
本作で最も異彩を放つ殺し屋シガーを演じるのは、ハビエル・バルデム。
おかっぱ頭に据わった目、片足を引きずりながら歩く朴訥とした見た目から一転、ターゲットを抹殺する段になると驚異的な身のこなしで冷酷に殺しを実行する。
その姿は恐怖以前に、悪を突き詰めた「カリスマ性」をも感じさせます。
本作はトミー・リー・ジョーンズ演じる老保安官のベルの視点によって進んでいきますが、本来ならば悪を討つ立場である保安官が、「悪」そのものを擬人化したようなシガーを前にまったく歯が立たない。
原題は『No Country For Old Med』直訳すると「老人のための国は無い」。
圧倒的な悪と対峙してしまった時、人は、その姿の前にひれ伏すしかない。
そんなこの世の「暗部」を生々しく浮き彫りにする本作は、古き良き「アメリカ」という国の終焉を告げる警鐘として、多くの観客の心を鷲掴みにしました。
ノーカントリー
調査日:2020/08/17
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2010年代
おすすめその⑨『アーティスト』(2011年/フランス/101分)
【あらすじ】
1927年のハリウッドで、サイレント映画のスターとして君臨していたジョージ・ヴァレンティンは、新作の舞台あいさつで新人女優ペピーと出会う。その後オーディションを経て、ジョージの何げないアドバイスをきっかけにヒロインを務めるほどになったペピーは、トーキー映画のスターへと駆け上がる。一方ジョージは、かたくなにサイレントにこだわっていたが、自身の監督・主演作がヒットせず……。
無声映画の終わり。時代に取り残された男の悲哀に満ちた喜劇
映画の誕生を紐解いていくと、その昔、映画は「動く写真」と解釈されていました。
台詞のない物語映像に合わせ、劇場内でオーケストラが演奏したり、日本では「活動弁士」と呼ばれる職業の方が、その弁舌を駆使し、映画の内容を解説したりと、様々な工夫が凝らされていたのです。
そんな無声映画の歴史に幕が下ろされるのが1927年。本作『アーティスト』も、この1927年を舞台に物語が描かれます。
本作の主人公ジョージは、サイレント映画時代を席巻したスター俳優。
しかし、徐々に訪れるトーキー映画(音声のある映画)の時代の波に呑まれ、キャリアの幅を狭めていく。
本作の魅力は、2011年の制作時時点で、サイレント映画の魅力を改めて世に問い直そうという「懐古主義」に流れず、あくまで「CGや映像技術の優れた現代において、あえてサイレント映画に挑む」野心作であるところにあります。
「サイレント映画には台詞が無い。観客は、生きた感情を心で感じる。そんな経験を2012年に贈りたかった」という監督のメッセージの通り、膨大な文字による情報に溢れた現代だからこそ、多くを語らない空白を持つ本作の魅力は大きいはずです。
アーティスト
調査日:2020/08/17
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おすすめその⑩『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(2014年/アメリカ/120分)
【あらすじ】
かつてヒーロー映画『バードマン』で一世を風靡した俳優リーガン・トムソンは、落ちぶれた今、自分が脚色を手掛けた舞台「愛について語るときに我々の語ること」に再起を懸けていた。しかし、降板した俳優の代役としてやって来たマイク・シャイナーの才能がリーガンを追い込む。さらに娘サムとの不仲に苦しみ、リーガンは舞台の役柄に自分自身を投影し始め……。
再起をかけた俳優の魂の彷徨を、驚異のワンカットで魅せる
少し変わった長いタイトルの本作は、その撮影手法も一風変わっています。
主人公リーガンの後ろを付け回すようにしてカメラが固定され、「全編ワンカット」で撮影されています(実際には目立たぬように編集点を設け、カットを割っているのですが、それは極めて気づきづらいように工夫されています)。
リーガンはかつて『バードマン』という名のヒーロー映画で一世を風靡した俳優でしたが、現在はキャリアは落ち目。彼は自身の再起をかけた舞台『愛について語るときに我々の語ること』にすべてを賭けている。
本作が面白いのは、リーガンを演じるマイケル・キートンのキャリアに重なるような魅力あふれる主人公造形にあります。
視点は終始リーガンから離れない造りになっていますので、当然ながら観客はリーガンの心情に寄り添うように誘導されていきます。
演じるマイケル・キートンは、90年代に『バットマン』を演じたことによって人気に火が点きましたが、その後はぱっとしないキャリアを歩んできました。
かつて『バットマン』を演じた俳優が「『バードマン』を演じた役者が再起をかける」映画の主人公として、再起をかけている、いわゆる「メタ・フィクション」の作品でもあるのです。
ワンカットでありながら様々な人間模様や事件が交錯する作劇も非常に面白い一作です。
バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)
調査日:2020/08/17
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おすすめその⑪『シェイプ・オブ・ウォーター』(2017年/アメリカ/124分)
【あらすじ】
1962年、米ソ冷戦時代のアメリカで、政府の極秘研究所の清掃員として働く孤独なイライザは、同僚のゼルダと共に秘密の実験を目撃する。アマゾンで崇められていたという、人間ではない“彼”の特異な姿に心惹かれた彼女は、こっそり“彼”に会いにいくようになる。ところが“彼”は、もうすぐ実験の犠牲になることが決まっており……。
「持たざる者」の心の触れ合いを描いた大人の寓話
第90回アカデミー作品賞に輝いた『シェイプ・オブ・ウォーター』は、作品賞受賞作品としてはかなり「異色」な作品として注目を集めました。
その訳は、本作がラブストーリーでありながら、同時にれっきとした「モンスター映画」でもあるからです。
米ソ冷戦時代を背景に、清掃員として働く発話障害を抱える女性イライザは、自身の勤め先である研究所の被験対象である「半魚人」の彼に恋をする。
本作の監督を務めるのは『パンズ・ラビリンス』『ヘルボーイ』などのギレルモ・デル・トロ。
日本の特撮映画をこよなく愛する彼は、2013年に自身の怪獣オタクぶりを一心にぶつけ、日本でも大ヒットを記録した『パシフィック・リム』の監督でもあります。
本作の主人公である「半魚人」のフォルムは、怪獣好きのデル・トロ監督のこだわりの結晶。
人間の女性と恋に落ちる設定ゆえ、過度に人間離れしたデザインを避け、愛嬌と不気味さのバランスが徹底された唯一無二の存在として、物語世界に君臨しています。
幻想的かつまがまがしい世界観により「大人のための寓話」として、まだ見ぬ映画体験を提供してくれることでしょう。
シェイプ・オブ・ウォーター
調査日:2020/08/17
○印は見放題配信。金額表示はレンタル料金です。動画の配信状況はマネージャーライフが調査した時点での情報です。詳細は各公式サイトでご確認頂けますようお願いします。
おすすめその⑫『グリーンブック』(2018年/アメリカ/130分)
【あらすじ】
1962年、ニューヨークの高級クラブで用心棒を務めるトニー・リップは、クラブの改装が終わるまでの間、黒人ピアニストのドクター・シャーリーの運転手として働くことになる。シャーリーは人種差別が根強く残る南部への演奏ツアーを計画していて、二人は黒人用旅行ガイド「グリーンブック」を頼りに旅立つ。出自も性格も違う彼らは衝突を繰り返すが、少しずつ打ち解けていく。
「人種差別」を下敷きにアメリカを浮かび上がらせる、正統派ロードムービー
バディ映画は観客との親和性が高く、それというのも多くの場合で「価値観の違う凸凹コンビが、多くの困難を乗り越える中で互いに理解し合っていく」というプロットが、観客の心に刺さりやすいためでしょう。
本作も、実在するトニーとシャーリーという、人種も性格も違うバディが、ロードムービーのプロットに乗りつつ絆を深めていく、いわば王道の作品。監督もこれまでに数多くのコメディ映画を世に送り出してきたファレリー兄弟。これもバディです。
本作にさらに付加されるのは「60年代当時の人種差別の背景」。
シャーリーは天才ピアニストとして豊かな生活を送っており、訪れるパーティー会場でも手厚くもてなされますが、一方で「このレストランでは、申し訳ありませんが、黒人の方の入店をお断りさせていただく決まりとなっています」など、「手厚く」差別されたりもする。
タイトルにもなっている「グリーンブック」とは、当時アフリカ系アメリカ人のために発行されていた旅行ガイドブックのこと。
そこには「黒人が入れるレストラン」や「黒人の泊まれるホテル」が記されていました。
はじめの内こそシャーリーを「黒人」と見なし、差別心を捨てきれずにいた(というよりも、時代によって差別が当たり前に植えつけられていた)トニーも、シャーリーとの旅を通して直面する差別の眼差しを理解し、彼を守ろうと心を改めていく。
王道のプロットに乗り、王道の展開が用意されている本作は、本作が実話を基にしている点も含め、作品賞受賞も疑いの余地のない傑作です。
グリーンブック
調査日:2020/08/17
○印は見放題配信。金額表示はレンタル料金です。動画の配信状況はマネージャーライフが調査した時点での情報です。詳細は各公式サイトでご確認頂けますようお願いします。
まとめ)時代を反映した作品。それは決して米国だけの問題ではない!
作品賞はいずれも、アメリカ合衆国の「今」を反映した作品が受賞する傾向にありますが、たとえば昨年の受賞作は韓国映画の『パラサイト 半地下の家族』が受賞するなど、より世界レベルの「今」を背景にした作品が注目されるようになってきました。
決して他国の問題で片づけることのできない重要なテーマを孕んだ諸作品を、ぜひこの機会に堪能してみてください!
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