「プレイングマネージャーってどうなの?」あなたがプレマネになったときに意識すること
[最終更新日]2019/08/06
管理職・マネージャーの方でしたら、一度は「プレイングマネージャー」という言葉について考えたことはあるでしょう。
実際、国内で管理職業務と現場業務の両方を担う管理職・マネージャーの方は、非常に多くなっています(特に中小企業や、企業間もない新興企業においては、その傾向は顕著です)。そして、「プレイングマネージャー」に対して人々が持つイメージと言えば、「忙しい」、「難しい」であったり、「本来の管理職業務がおざなりになる」、「上司からはチームビルディングと業績向上の両方を同時に求められる」などなど、ややネガティブな要素が多いようです。
(もちろん、プレイングマネージャーについて肯定的な意見を持つ方もいらっしゃいます。ここでは、あくまで「そういう声が多い」程度に捉えていただければと思います。)
さて、この「プレイングマネージャー」という役割は、(多くの人がそう抱くように)あまり良くない、改善していくべきものなのでしょうか。
それとも、これから先の未来、どんどん増えていき一般化されていくものなのでしょうか。
──ということで、今回は、「プレイングマネージャー」について詳しく見ていきたいと思います。
Index
目次
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プレイングマネージャーの定義
はじめに、「プレイングマネージャーとはそもそもどんなものか」について見ていきたいと思います。
プレイングマネージャーとは、「自らがチームや組織の成果や利益を出していくプレイヤーとして従事し、その一方で部下の育成や評価といった、チーム・組織の体制面も担う」役割を持つ人のことです。
いわば、スポーツ界の「選手兼監督(コーチ)」といったところでしょう。
ですが、「名選手名監督にあらず」という格言があるように、選手兼監督しかりプレイングマネージャーもまた、プレイヤーと管理職・マネージャー両方の役務を順調にこなせるという人は、そう多くはありません。
なぜプレイングマネージャーが発生したのか?
プレイングマネージャーにまつわる書籍やWeb記事では、「プレイングマネージャーはバブル崩壊後の人件費削減、管理職ポストの激減により増加してきた」と記しています。
もちろんその要素も少なからずありますが、それよりも、もともと日本ではプレイングマネージャーの風土が育まれやすい環境にあったということにも注視しておくべきでしょう。
──と言いますのは、日本従来の「組織」や「マネージメント」に対する考え方は、欧米で主流とされていた考えと若干異なっていたのです。
日本と欧米の、組織内における経営者・管理職(マネージャー)・現場(プレイヤー)の概念比較
欧米 | 日本 | |
---|---|---|
経営者(オーナー・トップ) | 資本家が多い 「金を持ち、労働力を買う」スタイル | トッププレイヤーとしての、株主権経営者が多い。 「情熱をもって一緒に仕事してくれる仲間を雇う」スタイル |
管理職(マネージャー) | マネジメント業務がメイン(現場業務は殆ど行わない) | マネジメント業務の他、現場業務も行うことが多い。 (=プレイングマネジャー) また、部下育成に相応の時間をかける必要がある場合が多い。 |
現場(プレイヤー) | 「その仕事ができる人」が雇われる | 「情熱を持って一緒に仕事してくれる仲間」が雇われる 業務をしながらスキルを向上させていく |
※ 上記表は、これまでの組織に対する、欧米と日本の概念比較になります。現代社会においては上記三軸の概念は多様性が出てきていること、また境界もあいまいになりつつありますので、その点も加味しつつご参考ください
組織を「経営者」、「管理職(マネージャー)」、「現場(プレイヤー)」という3つの軸に分けてみた場合、欧米では古くから「経営者=資本家」という概念が色濃くありました。そこで雇われる労働者(現場スタッフ)は、「その能力と時間を買われる」イメージです。
一方、これまで日本における経営者のイメージは、「トッププレイヤーとしての、株主権経営者」です。こういった経営者の場合、労働者(現場スタッフ)に対して求めるのは、「能力と時間」というよりも、「情熱をもって一緒に仕事をしてくれる」ことでした。
経営者と現場(プレイヤー)の概念が違えば、その中間を担う管理職(マネージャー)の概念も変わっていきます。
欧米はあくまでマネジメント業務がメインであるのに対して、日本の管理職・マネージャーはマネジメント業務のほか、部下が一定のスキルを持つまでは自身も現場業務を担うという傾向も(元々)有していたのです。
もちろん、だからと言って、「プレイングマネージャーは欧米には存在せず、日本独特の傾向であった」というわけではありません。海外においてもプレイングマネージャーである人はいるでしょうし、日本においても管理職・マネジメント業務に専念して働いている人もいます。
ただ、国内のプレイングマネージャー増加の傾向において、「そもそも日本には、その習慣があった」といった点は、意識してくべきでしょう。
「プレイングマネージャー」は悪しきもの?それともしょうがないもの?
さて、ここで「それでは、プレイングマネージャーは良いものなのか、悪いものなのか」と、疑問に思われた方もいらっしゃることでしょう。
結論から言えば、「プレイングマネージャーという概念自体に、良い悪いはない」ということになります。
その組織やチームにとって、プレイングマネージャーの存在が必要不可欠になるときもあるでしょうし、逆にプレイングマネージャーの存在自体が組織や社内の人々の成長を阻害することもあるでしょう。
要は、組織内にプレイングマネージャーが登場するのは、その人当人の働き方の問題というよりも、その組織の環境・状態に拠るところが大きいのです。
ですが、そうは言っても「プレイングマネージャーに良し悪しはありません」で話が終わってしまってはこれ以上プレイングマネージャーに対する理解を深めていくことも困難になりますので、少し見方を変えて、「プレイングマネージャーのメリット・デメリット」で整理してみましょう。
プレイングマネージャーのメリット
- 現場の最新の動向をキャッチしやすく、業務上で適切な判断を下しやすくなる
- 部下の仕事内容に対する理解度を深められる
- プレイヤーとしての成果も出せている場合、部下やチームメンバーからの信頼を勝ち得やすい
プレイングマネージャーのデメリット
- 相対的に管理職・マネジメント業務にかけられる時間が減る
- 部下の指導品質と自身の業務パフォーマンスのどちらを優先するかを常に問われる
- (重要な現場業務を自身が担ってしまう為)部下の経験やチャレンジの機会を低減させてしまう
- 現場業務が忙しくなってきた際に、部下とのコミュニケーションの機会が減る
- 目の前の業務に追われ、中長期的な視点、俯瞰した視野を持つことが困難になるリスクがある
これらプレイングマネージャーのメリット・デメリットを参照して、「現在の自分の組織・チームで、より重要に捉えたほうが良いのはどちらか」の観点で、プレイングマネージャーの是非を検討すると良いでしょう。
大切なことは、「未来」をどう描いていくか
組織・チーム内でご自身が、または身近な人がプレイングマネージャーになった際に、意識しておくと良い考え方のフレームワークがあります。
それは、「4つの視点分析」です。
「4つの視点分析」では、過去の「1)何が起きたか」「2)なぜ起きたか」、そして、「3)何が起きるか」「4)その為に何をすべきか」を1~4の順番で考えて、思考を深堀していくことができます。
組織やチームで何かしらの問題・課題が発生したときに、人は「何が起きたのか」は気づけても、「なぜ起きたのか」であったり、その先の「これから何が起きるのか」や「そのために何をすると良いか」という気づきはなかなか得られにくいものです。
4つの視点分析では、そのなかなか気づきにくい図中の2)~4)について可視化し、適切な対応を取れることを手助けしてくれます。
試しに、「(意図せず)プレイングマネージャーになってしまった場合」のケースで、4つの視点分析をしてみましょう。
プレイングマネージャーの課題について、「4つの視点分析」を使いアプローチする
さて、「意図せず気づいたときには、自分自身がプレイングマネージャーになってしまっていた…!」と言った時のケースで、4つの視点分析で探求を進めてみたいと思います。
上の図の2)~4)には、どんな内容が入りそうでしょうか。
例として、私が過去にプレイングマネージャーになってしまったときのケースを紹介したいと思います。
参考:私(当時34歳 IT企業勤務)がプレイングマネージャーになってしまったとき
私が当時プレイングマネージャーになった経緯は、「新規事業設立に伴う、事業責任者に抜擢されたこと」からはじまります。
当初、事業部メンバーは私を含め8名で、うち4名はアルバイトでした。
収益事業として始めたはずが、目指していた市場はすでにレッドオーシャンで、思うようにシェアを獲得できず、毎月数千万円近くの赤字が出てしまったのです。
そして、「このままではまずい」と私は皆と一緒になって、昼夜を問わず働きました。──当時の私の業務割合としては、管理職業務5%、現場業務95%くらいです。
さて、その結果何が起きたかというと、上記図中の「3)何が起きるか」で記載された通りです。
部署内でメンバーをフォローする人もいなく、それでも業務は次から次へと降りかかってきます。
メンバーは皆疲弊し、部署内の雰囲気も悪くなり、離職者が続きました。
その後はなんとか収益向上の成功法則を見出し、なんとか黒字化を果たしましたが、もしそれが2~3か月遅れていたら事業閉鎖は免れませんでした(事業の累計損益はマイナス数億ほどにもなっていたので)。
当時の私は、4)で記載されていたような「今何をすべきか」について、一切考えが至りませんでした。
──今でも、当時去ってしまった部下のことを思い出すことがあります。
「あのとき、もっとこうしていれば良かった」と思うことは、本当に山ほどあります。
もし当時の私がこの「4つの視点分析」を知っていて活用できていれば、また違う未来が描けていたのかもしれません。
大切なことは、「プレイングマネージャーとして働く、その先の未来に何があるか」に気づけること
「4つの視点分析」では、今ある「プレイングマネージャー」の状況から、その背景、そして未来までをイメージしていく思考を進めやすいことを紹介しました。
ここでポイントとなるのは、「未来に何が待っているか」です。
多くの場合、「プレイングマネージャー」が必要となるシチュエーションは、「直面している現状」によるものです。
「この環境では、未来永劫的にプレイングマネージャー的な働きを行う人が必要だ」という職場はあまりないでしょう。
つまりは、「プレイングマネージャーとして働き続けた際に、何が起きるか」という、4つの視点分析における4)部分を考えることによって、プレイングマネージャーとしての働きかけをどれだけの強さで、どれだけの期間で行うかについてイメージを持ちやすくなるのです。
もし今、「自分自身がプレイングマネージャーだ」という状態でしたら、以下のことを振り返ってみると良いでしょう。
- 自身がプレイングマネージャーとして活動することによる、現時点のメリットは何か
- 自身がプレイングマネージャーとして活動することによる、現時点のデメリットは何か
- 自身がプレイングマネージャーとして活動することによる、将来的なメリットは何か
- 自身がプレイングマネージャーとして活動することによる、将来的なデメリット・リスクは何か
特に3つ目、4つ目の「将来的なメリット、デメリット」まで見ていけると、これからの自身の管理職・マネージャーとしての働きかけのイメージもつきやすくなるのではないでしょうか。
自身がプレイングマネージャーになったときに注意したい4つのポイント
ここまで、プレイングマネージャーの概要、メリット・デメリット、そして持つべき視点(「4つの視点分析」のフレームワーク)についてお話してきました。
続いては、プレイングマネージャーへの理解を踏まえたうえで、改めて「自身がプレイングマネージャーになったとき」にどんな点に注意していくと良いかについてまとめてみましょう。
プレイングマネージャーになったときに注意したいポイントは、以下の4点です。
- 個人目標より、組織・チーム目標を優先して行動すること
- 部署・チーム内の誰よりも、部署・チームの未来をイメージすること
- 管理職・マネージャーの本来の業務・役割への理解を深めること
- 「忙しさ」、「疲労」へのストレスが蓄積するようなら、働き方を変えていくよう努力すること
上記4点について、順を追って見ていきましょう。
個人目標より、組織・チーム目標を優先して行動すること
プレイングマネージャーになった際に、「プレイヤーとしての自分を捨てられない」状態となってしまうケースも多いようです。
これは、これまでプレイヤーとしての活躍や成功を経験し、そして周囲からも「今後も活躍してくれるだろう」という期待感を感じて、今までと同じように(または今まで以上に)プレイング業務(現場業務)に精を出してしまうケースです。
ですが、管理職・マネージャーに対して期待されるのは、「個人目標」ではなく「部署・チーム目標」です。
プレイングマネージャーとして期待される個人パフォーマンスに「きちんと応えよう」とするスタンスも大切なときも多々あるでしょうが、前提として「個人よりもチーム・組織」を見据えた行動を取れるように意識するべきでしょう。
部署・チーム内の誰よりも、部署・チームの未来をイメージすること
前述しましたが、プレイングマネージャーになった際は「未来」のイメージを描いていくことが大切です。
そして、その未来の描き方は、あなた自身のものだけでなく、部署・チームの未来も併せて行っていくこと。
部署・チーム内メンバーの誰よりも先に、そして誰よりも深く、部署・チームの未来を描いていくことを意識していくと良いでしょう。
管理職・マネージャーの本来の業務・役割への理解を深めること
管理職・マネージャーになった際に、多くの方は新たに幅広い業務を担われることになるでしょう。
部下の育成計画から評価、定例会議の参加(それに伴う報告レポートの作成)、予実管理、そして労務管理やコンプライアンス管理・・・。
これら管理職・マネージメント業務をどこまで担い、どのレベルまでの品質を求められるかは、企業や部署によっても変わってくるでしょうが、それでも「一般的な管理職の役割」は理解しておくべきでしょう。
プレイングマネージャーとしてプレイング業務ばかりに目が行き、例えば、部下の就労規則を全く把握していなかった──といったことがあったら、当然ながら部下からの信頼は失墜することでしょう。
管理職・マネージャーの業務・役割については以下記事にも詳しく記載しています。 宜しければ、併せてご覧ください。
「忙しさ」、「疲労」へのストレスが蓄積するようなら、働き方を変えていくよう努力すること
もしあなたが今プレイングマネージャーだったとしたら、それは「あなたがなりたくてなった」のではなく、「その環境ではプレイングマネージャーが必要だった」からなのかもしれません。
そして、そのことで自身の働き方についての「自責の念」はあまり持たなくても良いでしょう。
ですが、それでもプレイングマネージャー業務を続けていって、「忙しさ」や「疲労」へのストレスが溜まっていくようでしたら、その働き方は改めるように行動を起こすべきです。
管理職・マネージャーの余裕がなくなると、それはダイレクトに部署・チームに悪影響を及ぼすものです。
そして、部下の多くは「人の二倍三倍と仕事を抱える上司」や「いつも業務過多で疲労困憊している上司」に対して尊敬はしないものでしょう(心配はされるでしょうけど)。
上司は、部下に不安や心配をかける存在ではなく、安心とやる気を与える存在であるべきだと、私は考えます。
責任感のある方や部下想いの方で、「皆を助けよう」という気持ちからプレイングマネージャー化するケースもあるでしょう。その際に、その人がこなせる業務範囲でそうなる分には問題はそれほど起きないかもしれません。
ですが、キャパオーバーになってまで業務を抱えてしまった場合、それは部下も自分自身にとっても不幸な結果へとつながります。
くれぐれも、管理職・マネージャーの方は、プレイングマネージャーとしての働き方が自身の「過度な疲労」や「ストレス」とのトレードオフにならないよう、ご注意ください。
「プレイングマネージャー」という型に囚われず、「目指したい将来」のイメージを育もう
ここまでお読みになられて、いかがでしたでしょうか。
プレイングマネージャーについて書かれている書籍やWeb記事は多くありますが、今回は「プレイングマネージャーの捉え方と、実際にプレイングマネージャーになったときに意識すること」を中心に紹介させていただきました。
前にもお伝えした通り、「プレイングマネージャー」という言葉自体に良し悪しはない(判断しがたい)と、私は考えています。
そして、それゆえに「プレイングマネージャー」という言葉にあまり意識しすぎるがあまり、本来考えるべき「自身と、そして部署・チームの目指したい将来像」への意識がおろそかになってしまうこともあるように感じています。
現在管理職・マネージャーの方は、プレイングマネージャーの概念、役割についての理解は深める一方で、そのプレイングマネージャーという型や定義には囚われすぎずに、ご自身が描く「目指したい将来像」のイメージを育むことに注力すべきでしょう。
本記事が、皆様の日々の業務の遂行に向けて、少しでも参考になることを、心より願っております。
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