管理職から「降格したい」と思ったときに知っておきたい注意点

[最終更新日]2019/08/06

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一般社員の中には、昇給や職責・職域が広がることを目的に、管理職を目指している人もいることでしょう。

しかし管理職になったことで、自分だけでなく部下の責任も問われ、結果的に長時間労働を強いられるなどして心身に変調をきたす人がいるのもまた事実です。

その際に退職して転職するのも一つの方法ですが、選択肢はそれだけではありません。

「降格願い」を出すという方法もあるのです。

そこで今回は、管理職からの降格を考えた時に知っておくべきことについてお話しします。

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そもそも、降格は可能なの?

日本のサラリーマンには、「降格願い」という言葉そのものが耳慣れないかもしれません。

公務員の場合は、数年前から「希望降格制度」が利用できるようになっています。
しかし民間企業のほとんどは、希望降格制度を就業規則として定めていません。

そのため、民間企業では降格を決められるのは、あくまで会社側だけというのが一般的です。

管理職が勤務先に降格願いを提出することはできますが、それが認められるかどうかは企業によって異なることが予想されます。

公務員は制度があるため降格しやすい

地方自治体によっては、条例として公務員や教員に対する希望降格制度を設けているところがあります。

公務員の場合は「希望降格制度」、教員の場合は「希望降任制度」と呼ばれているようです。
文部科学省では、教員の希望降任制度の状況を情報公開しています。

平成28年度の内訳をみてみると、「校長からの希望降任」が5人、「副校長等からの希望降任」が110人、「主幹教諭からの希望降任」が167人となっています。

すべて合わせると、282人が希望降任しているということです。

教員が希望降任する理由はさまざまですが、担任を持たない副校長や主幹教諭の場合、教員をまとめるだけでなく、保護者対応や庶務・雑務に追われ、平均残業時間が60時間を超えることも珍しくないことも要因のようです。

担任を持つ教員の平均残業時間が40時間であることを考えると、降格を希望したくなる気持ちはわかるような気がします。
そして、希望降任制度があることで教員の退職を避けられるという意味では、意義のある制度といえそうです。

民間企業は自主的な降格の希望が通りづらい会社も多い

民間企業の多くは、公務員のような希望降格制度を設けていないことは前述しました。
半面、職能や実績に応じて会社が査定を行い、社員を強制的に降格しているところが少なくありません。

会社に降格される前に自ら申し出たいと思う管理職もいそうですが、制度がない場合は希望が叶わない可能性もあります。
過去に勤務先企業で希望降格の前例があるかどうか、リサーチすることから始めましょう。

また、管理職からの降格願いを出す際には、必ず理由を問われます。
その理由に妥当性がなければ、会社に認めてもらうのは難しいです。

また、長時間労働やストレスで心身に変調が出ていることが理由の場合は、業務との因果関係を示す資料や診断書が必要になるケースもあります。

そして何より、希望降格を申し出ることでリスクを負うことも理解しておくことが大事です。

降格することで起こる可能性のあるリスク

管理職が降格を希望した場合、影響が出るのは所属部署だけではありません。
別な管理職をつけるためには、会社側でも異動や昇格を検討しなければならず、当然部下にも影響は及びます。

また、希望降格の前例ができることを避けたいと考える会社もありそうです。

そこで、降格により予想されるリスクについても考えておきましょう。

降格とともに減給される可能性が高い

管理職に昇格した際、給与に手当てがつくことが多いです。
もし管理職から希望降格した場合、そうした手当てがなくなるのは当然のことです。

ですが、降格による減給は手当てだけに留まらない可能性があるので注意が必要です。

基本給や職能給が減給になったり、賞与の支給額が下がることもありえます。
さらに、希望降格の理由によっては、不当な大幅減給が行われるかもしれません。

それは希望降格を申し出た管理職は、会社にとってみると「責任を放棄した」あるいは「能力に欠けていた」人材でしかないからです。

降格願いを出す際には、「会社がどのような降格を行っても不服申し立てをしない」という一文を、明記するのが基本です。

その書面が残ることで、職階が大幅に下がるなど、給与を含めて不利益のある降格を避けられないなどのリスクがあることも、きちんと理解しておきましょう。

もう一度管理職に就くことが難しくなる

希望降格の原因が心身の不調だった人が、回復するにつれてもう一度管理職を目指したいと考えることもあるでしょう。
しかし、その意欲を会社が認めてくれるとは限りません。

民間企業では、降格願いを出した社員と、会社の人事通りに働く社員とを同列に扱うとは考えにくいからです。

今は回復していても、似たような状況に陥れば変調をきたす可能性がある社員を、責任の重い管理職にしようと考える会社は少数派でしょう。
つまり、一度希望降格を申し出ると、同じ会社で再び管理職になるのは難しいということです。

民間企業に希望降格制度が定着しない限り、こうしたリスクはついて回ります。

希望以上の大きな降格をさせられる可能性がある

社員が希望する降格が、課長から係長あるいは係長から主任など一段階下に戻ることだったとしても、会社がその通りに人事発令してくれるとは限りません。
降格願いを出した社員を、管理職から平社員に戻すという決断をする可能性もゼロではないのです。

その場合、大幅な減給となり、生活に支障をきたす人もいることでしょう。

そうした事態を避けるためには、降格願いを提出する際に、会社側とよく話し合っておくしかありません。

とはいえ会社の立場で考えると、平社員から管理職になるまでにかけた時間や費用、希望降格させた場合に周囲に与える影響の大きさを鑑み、あえて社員の希望を通さないという判断をするのは仕方がないともいえます。

人によってはそれまでの部下と同等の立場で仕事をするように求められるケースもあり、それが新たなストレスを生むというリスクもあります。

会社の人事は自分の思い通りにはならないことを念頭に置き、降格願いを提出する覚悟が必要です。

周囲のモチベーションにマイナスの影響を与える場合も

管理職本人は降格願いを提出して気が楽になったとしても、率いていた部下がそれを納得するかどうかは別問題です。
直属の上司が希望降格することで、部下のモチベーションが下がる可能性は十分にあります。

降格後も同じ部署で仕事をする場合、かつての部下との関係が悪化することで業務に支障をきたせば、それが自分への査定となって跳ね返ってくるかもしれません。

また、自分の後任の管理職とかつての部下の相性が悪く業績が悪化してしまうと、会社も不利益を被ります。
その場合、社員のモチベーション低下の原因を、希望降格した元管理職と考える会社もありそうです。

その結果、会社からさらなる報復人事を受けるかもしれません。

会社に疎んじられている社員に対して、周囲は冷ややかなものです。
特に管理職として活躍している同僚は、希望降格した人を見下すこともあるでしょう。

そうした自分を取り巻く人間関係の変化についても、考えておくことをおすすめします。

合わせて検討したい「降格」以外の解決法

管理職を辞すことと、会社を辞めて転職をすることはイコールではありません。

勤務先企業に残って働き続けるための方法に、降格を願い出ることがあるのです。

ですが、管理職を辞める方法は降格願いの提出だけではありません。
企業の規模が大きくなればなるほど、いろいろな可能性が考えられます。

そこで、降格願いを提出する以外に考えられる解決法を紹介しておきましょう。

降格希望を伝える前に!まずは状況を変えられないか上司に相談を

会社に降格願いを提出する前にまず行うべきことは、直属の上司に相談することです。

管理職の職責を辞したいと考える理由と、その後も勤務を続けたいことを、きちんと上司に伝えるのです。
その結果、上司が申し出を妥当だと思えば、状況を変えるよう協力してくれるでしょう。

ただし、上司に丸投げするのではなく、状況をどう変えることで自分がモチベーション高く仕事ができると思うか、きちんと考えを整理して提案するのがポイントです。
その結果、仕事がしやすい環境がつくれれば、管理職を降格せずに済むかもしれません。

とはいえ、上司に相談しても状況を変えられないことも十分に考えられます。
きちんと手順は踏みながら、希望降格以外の別な方法も検討してみましょう。

「降格」以外にも「部署異動」「転職」という選択肢もある

企業の規模によっては、「部署異動」を打診するという方法もあります。

会社の就業規則に基づいて、「異動願い」を出すのです。
この場合も、事前に直属の上司に相談する必要があります。

ただし、異動願いを出したからといって通るとは限りませんし、その行為自体がマイナス査定に結び付く可能性もあります。

異動希望が通りにくい会社であれば、その行為は希望降格を申し出る場合と大差ない結果になるかもしれません。

異動も降格も難しいとなれば、最終手段は「転職」です。

今の会社で管理職を続けるのは難しくても、社風の違う転職先では問題なく仕事ができる可能性があります。
年齢が若ければ転職先に困りませんし、結果として年収アップにつながれば、より前向きに仕事に取り組めるはずです。

ミスマッチの転職を避けるためには、転職エージェントなどプロの力を借りるのも一つの方法です。
自分にとってベストな方法は何か、時間をかけて検討しましょう。

体調不良やメンタルへの影響が出ている場合は早めの対策を

とはいえ、いち早く管理職からの降格を申し出た方がよいケースもあります。
それは、サービス残業の増加やストレスフルな状況が災いして、心身に不調があらわれた場合です。

偏頭痛や腹痛、胃腸の不調、肩こり、動悸、めまい、生理不順、倦怠感、睡眠障害、食欲不振などの身体的症状の原因が、ストレスであることも珍しくありません。

また、情緒不安定や気分の落ち込み、注意力・集中力の低下などの心理的症状が出る人もいます。

職場で部下や同僚とできるだけ交流しないようにしている、遅刻や欠勤が増えた、仕事のミスやトラブルが多発している、笑う・怒るなどの感情がわかない、身だしなみを整える気力がない場合は、うつ病が疑われます。

そうした自覚症状がある場合は、すぐに精神科や心療内科を受診し、お医者さまとも相談のうえで、降格願いを出すかどうかを検討することをおすすめします。
職責を担う管理職が心身に変調をきたして起こしたミスを追及された結果、自殺してしまったケースもあります。

命より大切なものはないので、上司に報告したうえで早めに対処しましょう。

まとめ 降格のリスクや周囲への影響も考慮して決断しよう

今回は管理職から降格を考えた時に知っておくべきことについて、まとめてみました。

  • 公務員には希望降格制度が、あるが民間企業にはないケースが多いこと
  • 民間企業で降格願いを出した場合にはリスクがあること
  • 管理職から降格する前に検討したい対処法があること

は、皆さんにも理解していただけたと思います。

とはいえ、管理職になったばかりの人が安易に降格を検討することはおすすめできません。
特に初めて管理職になった人は、結果が出るまでにそれなりに時間がかかるのはやむを得ないからです。

しかし、心身に変調が起こるなどそのまま働き続けるのが難しいと感じた時には、転職活動を始める前に、希望降格を検討する価値はあります。

この記事が悩んでいる管理職の皆さんにとって、少しでも参考になれば幸いです。




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