人は、40代・50代・60代でも成長する!管理職・マネージャーのこれからのキャリアの描き方
[最終更新日]2023/11/06

「最近、記憶力が衰えてきた気がする・・・」
「新しいことを覚えるのが億劫になってきた・・・」
内心そう感じている管理職の方はいないでしょうか?
年齢を重ねるにつれてビジネスパーソンとしての経験や人脈は豊かになっていく面もあるはずですが、いざ自分自身のこととなると、どうしても「加齢=衰退」といったネガティブなイメージを持ってしまいがちです。
では、40代、50代、60代と年齢を重ねていく中で、ビジネスパーソンとして成長することはもうできないのでしょうか?
ミドル〜ベテラン層の管理職にとってのキャリアの描き方について一緒に考えてみましょう。
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Index
目次
1) 大人になっても、脳の成長は続く。

はじめに質問です。次の2人のうち、これから「伸びる」「成長する」と感じられるのはどちらの人でしょうか。
Aさん:26歳・チームリーダー
Bさん:48歳・事業部長
おそらく、この記事を読んでくださっている方々のうち、ほとんどが「Aさん」と思ったのではないでしょうか。
たしかに、若いということはそれだけ伸びしろがあり、知力も体力も十二分にあるわけですから、「これから」を考えるとAさんに軍配が上がると思われやすいのは致し方ないかもしれません。
では、Bさんはどうでしょうか。もう能力は伸びないと思いますか?これまで身につけてきた知識や経験を頼りに働いていくしか道はないのでしょうか。
いいえ、そんなことは決してありません。人は、40代・50代になっても充分知能・スキルを高めていくことができるのです。
実際に、偉業を成し遂げた人の中にも40歳を超えて新たな挑戦を試み、成功してきた事例はたくさんあります。
40歳を超えて成功を掴んだ人物の一例
- 池森賢二氏
化粧品・健康食品メーカー「株式会社ファンケル」を43歳で設立。 - 松本清張氏
41歳で「西郷札」が直木賞候補となり、44歳のとき「或る『小倉日記』伝」で芥川賞を受賞。 - カーネル・サンダース
65歳で現在のKFCの原型となるフランチャイズビジネスを開始。
また、年齢を重ねるにつれて、若い頃にはできなかったものの見方や考え方ができるようになる面もあるはずです。
脳が成長し能力を高めていくことができるのは、若いときだけではないのです。
知能の2つのタイプ 「流動性知能」と「結晶性知能」について

たとえば、「頭の良い人」とはどのような人のことでしょうか。
話題が豊富な人、仕事ができる人、適応力の高い人など、多様な捉え方があるはずです。
それだけ人の知能にはさまざまな側面があり、発揮される能力はまだら模様のようにひとくくりにできないものなのです。
一般的に「若い頃のほうが能力は伸びる」と言われているのは、計算力や暗記力など瞬発的な能力についてです。
しかし、人の能力は計算や暗記が得意かどうかだけで決まるものではありません。経験を積むことで複合的な知識や判断力が上昇していく傾向があるのも事実です。
このように、人の知能には大きく分けて2つの領域があり、前者の計算や暗記に代表される知能を「流動性知能」、後者の経験値や判断力といった知能を「結晶性知能」といいます。
流動性知能 | 結晶性知能 | |
---|---|---|
どんな知能? | 計算力や暗記力、集中力、IQといったタイプの知能 | 知識や知恵・経験値・判断力といった知能 |
どんな傾向がある? | 20代頃をピークに迎え、その後下降する傾向がある | 年齢増加と共に、上昇し続ける傾向がある |
たしかに、流動性知能だけを切り取れば「能力が伸びるのは若いうちだけ」「年を取るに従って衰えていく」というのは真実らしく思えるかもしれません。
では、「結晶性知能」についてはどうでしょうか。
知恵や経験値が身につくには、どうしても一定の年数が必要になります。一朝一夕に身につくものではなく、日々経験してきたことが結晶のように折り重なって発揮される能力なのです。
「大人の知能の発達プロセス」

さて、大人の知能とはどのように発達していくのでしょうか。
ハーバード大学のロバート・キーガン教授は、その著書『なぜ人と組織は変われないのか』において、人の発達プロセスを次のように説明しています。
「人間の知性は、大人になってからも年齢を重ねるにつれて向上していく。そのプロセスは高齢になるまで続く。人間の知性の発達は、20歳代で終わるものでは決してない。」
「(下のグラフのように)曲線がほぼ横ばいになっている「台地」上の箇所がいくつかあることから明らかなように、人間の知性はいくつかの段階を経て高まっていく。それぞれの段階ごとに、世界認識の仕方が明らかに違う。」『なぜ人と組織は変われないのか』(ロバート・キーガン著 英治出版)

まずは自身が置かれた環境に適応すること、周囲を引っぱっていくことができるリーダーとしての役割を担えるようになること、そして自身を変革させつつ周囲とも良い影響を与え合っていくこと、といったように、人の成長は一直線に伸びていくのではなく、各段階でステップを踏みながら伸びていくのです。
2) 30代・40代・50代からの成長を目指す際に、意識したい「ハリネズミの概念」
前項では、大人の知能の発達は右肩上がりで成長し続けるというよりは、一定期間は横ばいの状態が続く時期が訪れることについて見てきました。
少し見方を変えると、横ばいの時期こそキャリアに対するビジョンをしっかりと持ち、次の変革期まで「耐える」時期も必要になると捉えることもできるでしょう。
一見すると成長が鈍化または停滞しているように思える時期にも、成長を意識し続けるにはどうしたらいいのでしょうか。
ここでポイントになってくるのが「ハリネズミの概念」です。
「ハリネズミの概念」とは

ハリネズミは決して屈強な動物ではありませんが、「全身の棘(トゲ)」という他の動物にはない独自の強みを持っています。
棘という強みを持つことで外敵から身を守り、生き残ることができているわけです。
ビジネスにおいても「この分野で力を発揮できる」と言える強みを1つ持つことによって、簡単には真似できないその人ならではの長所となり得るのです。
では、自分にとっての強みとはどのように形成していくことができるのでしょうか。
人が働いていく上で重視するものを「MUST」「CAN」「WILL」の3つに分けると、次のように考えることができます。
- MUST・・・するべきこと(例:売上をあげる・収入を得る)
- CAN・・・できること(例:自分にとって得意なこと・人より優れていると思えること)
- WILL・・・したいこと(例:情熱を持って取り組めること・好きなこと)
これらの3つが重なる箇所は、ハリネズミの棘にあたる「強み」となり得るポイントです。この部分において、その人の能力が最大限に発揮され、成長が促されるのです。

「ハリネズミの概念」(MUST CAN WILLの図)から考える、私たちの成長について
私たちは日々の仕事の中で「とにかく目の前のことをこなさなくては」「売上目標を達成しなければ」といったMUSTに意識を持っていかれがちです。
そのため普段はあまり意識する機会がないかもしれませんが、着実に積み重なっていく経験によってCANも強くなっているはずです。
若手の頃は知識を得たり技能を習得したりすることに意識が向いていた人も、ミドル以降からは知識と実体験を結びつけ、よりしなやかで深みのある判断ができるようになっていく面もあることでしょう。
さらに、「するべきこと」「できること」だけでなく、これから実現していきたいこと(=WILL)を意識することで、キャリアビジョンをより鮮明に描きやすくなっていきます。
前述の「結晶性知能」は経験に裏打ちされているため、流動性知能と比べてその人ならではの特性や傾向が表れやすくなります。
このような能力は他の人が真似をしようとしても簡単に模倣できるものではありません。
これまで取り組んできたことと、これからやっていきたいことが線でつながったとき、自分が進むべきキャリアの方向性が開けていくことでしょう。
3)「ハリネズミの概念」(MUST CAN WILLの図)を使い、キャリアをデザインする

キャリアをデザインすると聞くと、「いずれやるべき時が来たらやろう」と考えてしまいがちですが、大人の知性は常に上り調子とは限りませんので、変化があまり感じられないときこそ先を見据えていくことが大切になります。
ハリネズミの概念の中でも、とくにWILLについては自分の将来像や今後に向けての興味関心を持ち続けることに意義があります。
そこで、現時点で結構ですので「ハリネズミの概念」を使い、実際にキャリアをデザインしてみましょう。
「キャリアのデザイン」シートを使って、自身の「これからの望ましい将来」を描いていく

上の「キャリアのデザインシート」は、ハリネズミの概念のうち各要素について現状を書き出し可視化するためのワークシートです。
➀から④の番号が付いていますので、この順序で記入していきましょう。
漠然と頭の中で考えるだけでなく、文字にすることで思考が形になり、意識的なものへと変化していきます。
④は➀〜③の各要素が中心に集まってくるイメージを持ちながら考えてみてください。
ここがあなたにとってのコアとなります。3つの要素が合わさったコアの部分は、あなただからこそできる強みになっているはずです。
やってみたいこと・目指していきたいことが今後変わるかもしれない、と感じる人もいることでしょう。
CANやWILLはこれまで経験したことや得た知見によって変化していくはずですから、それらが重なった部分にあたる④が変化していったとしても不思議ではありません。
あくまでも今の時点でどうありたいか、どうなっていきたいかを具体的にしていくことが重要なのです。
参考:私(40代)の描く、これからのキャリアビジョン

この記事を書いている私自身の例で恐縮ですが、プロフィールにもある通り、ふだんは会社員として出版社に勤務している編集者です。
出版は古くからある業界ですので、MUSTやCANの範囲内で働いていこうとすると、実現できることや伸ばせる能力が限られてしまう傾向があります。
そのため、WILLはあえて幅を持たせ、学力というよりは「能力」、勉強というよりは「学び」を意識して将来へのビジョンを描いています。
これらのMUST、CAN、そしてWILLを踏まえると、私は従来の「教育」や「学力」よりも大きく枠を広げた「生き方」そのもののお手伝いをしたいのだな、ということが見えてくるのです。
教材の編集者は、いわゆる受験産業の一端を担っていると言っていいでしょう。
世の中が安定しているうちは、試験に合格して偏差値の高い学校へ行き、いずれ大企業に入る、といった生き方に希望を持つことができました。
しかし、これからの時代は自分の頭で考える人材でなくては生き抜いていくのが難しくなっていくはずです。
そういった時代を生きていく方々を応援していくためにも、自分自身が学び続けていく姿勢を大切にしたいと思っています。
まとめ)40代以降も「学び成長する」姿勢を持ち続けましょう

もし、あなたの職場に優秀な若手社員が転職してきたとしたら、どのように感じますか?
「自分のポジションが脅かされるかもしれない」
「若い人からも学べて、良い刺激になりそうだ」
どちらかと言うと前者の考えに近いという人は、ご自身の成長スピードに自らブレーキをかけてしまわないように注意しておいたほうがいいかもしれません。
このような心境になってしまうのは、「自分はもう成長しない」とどこかで諦めてしまっているからなのです。
学び成長することは、若いうちだけ許される特権などではありません。ミドル以上の世代には、いわば「大人の学び方」があります。
「自分はもうこれ以上成長しない」などと決めつけてしまわず、これからもいきいきと働き続けていくことができるよう、学び成長する姿勢を持ち続けたいものです。
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