映画で学ぶ 「部下と向き合う」ためのヒント

[最終更新日]2019/11/01

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#1映画で学ぶ。部下育成

部下の育成、上司との関係、自身のキャリアアップ……。
管理職・マネージャーに、このような悩みはつきものでしょう。

そこでマネージャーライフでは、管理職・マネージャーのお悩みの解決のヒントを「映画」から学ぶ、特集記事を定期連載します。

第一回のテーマは「部下の育成」

管理職・マネージャーの多くの方が一度は悩むであろう、部下育成について、「映画の中の上司たち」はどのように立ち向かい、解決へと向かっていったのでしょうか。
ぜひ、参考にしてみてください!



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目次

「部下との向き合い方」に悩む管理職・マネージャーたち

今回、マネージャーライフでは20代~50代の管理職・マネージャーの男女に「現在、お仕事で悩まれていることは?」のアンケートを取らせていただきました。

集計の結果、最も多かったお悩みが「部下の育成・向き合い方」についてのものでした。

管理職の方の具体的な声を、一部抜粋させていただきます。




「部下の育成・向き合い方」に悩む管理職の声

「働き方改革」の導入から弊社も残業時間削減の方針になり、部下へ大きな仕事を任せるのがはばかられる状況です。
業務を通じて学ぶことの多い環境なので、部下にはなるべくチャレンジできる場を与えたいと思うのですが…。
部下に成長とやりがいをバランスよく提供するにはどうしたらいいのか……。

(HALさん/男性/31歳/金融業)

最近の若手は、こちらが叱っても、すぐに辞めてしまったり反抗してきたり、扱いに困ります。
悪いことは叱る。そのことは理解してもらって、向上心を持って仕事に臨んでほしいです。

(山田マンさん/男性/30歳/小売業)

部下が何を考えているかわかりません。
悩みがあるような感じも見受けられるのですが、相談に乗る事もできていない状態です。
そんな中、先日いきなり「転職をしたい」と告げられました。
転職自体は個々の人生ですから引き止めませんが、やはり事前に相談してほしかったな、というのが正直なところです。
仕事のことでもプライベートなことでも気軽に相談できる上司になりたいです。

(コロ太郎さん/男性/35歳/小売業)

部下に情熱を持って仕事をしてもらうにはどうすればよいか。
私も歳ですし、仕事が仕事なので、あまり現場に出て指示することができなくなってきています。
もうちょっと若ければ手取り足取り指導する、ということもできたのでしょうが、「遠くから指示を出す」ということが難しいのです。
彼らも決して情熱が無いわけではないのでしょうが、あと一歩ほしいところです。
その一歩があれば、今よりももっと仕事が楽しくなるでしょう。

(かんとくさん/男性/67歳/解体業)

部下への指導は丁寧に行ってきました。
少し丁寧にし過ぎたのか、部下が自分で考えず、すぐに私に答えを聞くようになってしまいました。
自分で考え、試行錯誤してから「こうしようと思っているのですが、どうでしょうか?」とできるようになってほしいものです。

(ゆこさん/女性/40歳/福祉)

上記に挙げたのはごく一部の方の声ですが、職種や年齢に関わらず、みなさん「部下の育成」について大なり小なり悩まれていることがわかりますね。
特に、

「部下にもっと成長してほしい」
「もっと向上心を持って仕事に臨んでほしい」
「部下が何を考えているのか分からない」

などといった声には、上司として部下を思う気持ちの強さゆえのもどかしさが伝わってきます。

それだけ部下のことを考えていたとしてもなお、管理職・マネージャーの方々が「部下へ思いが伝わらない」もしくは「部下の思いが伝わってこない」と感じてしまう理由は一体何なのでしょうか。

また、そうした思いを、どうすれば正しく部下に伝えることができるのでしょうか。

大切なのは、あなたは部下に「何を伝えたいか」

「こっちはこんなに真剣に伝えているのに、部下は全然理解してくれない…」
「せめてこちらが言ったことについて、どう感じたのかくらい教えてほしい…」

部下に対して一度はそう思ったことのある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

では、上司の指示や思いが部下に伝わらない原因は、一体何なのでしょうか。




上司と部下では、「見えてる世界(見てきた世界)」は違うもの

そもそも、上司と部下では仕事での立場はもちろんのこと、その見えている世界自体も違うものです。
仕事に関して上司の側が「これは分かっていて当たり前」と思っていることも、部下にとっては分からないということも往々にしてあるでしょう。

たとえば、「自分が若手の頃はこれくらい努力した」「こんなところを上司に褒めてもらった」という記憶や経験は、あくまでその人自身の価値観です。

そんな個人の価値観が、いつしか「自分ができたのだから、部下もこれくらいはできて当然だ」という「社会全体としての価値観」に置き換わってしまっていることはないでしょうか。

当然のことですが、自分が見てきた世界、経験してきた世界を、相手は見ることができません。
だからこそ、相手に何かを伝えたいときは、言葉を尽くして伝えていく必要があるのです。




上司のあなたが思い描く「地図」を、きちんと部下に開示できているか

上司であるあなたの思いが、部下に正しく伝わらない原因は、先に挙げたような「見えている世界の違い」によるものの他にも、「あなたの伝えたいことと、実際に部下に伝えていることの本質がずれてしまっている」可能性もあります。

「なぜ、部下はこちらの意図を汲み取ってくれないのか」
「こんなに一生懸命に伝えているのに。もしかして私が間違ってる…?」

そのような思いは次第に「部下への不信感」、ひいては「自分自身への不信感」にも繋がります。
部下も自分も信用できない状態では、相手にはおろか、自分の本音ともかみ合うことが難しくなってしまいます。



たとえば、あなたが部下に伝えたい思いを「地図」にたとえてみましょう。

部下が道に迷っていて、上司であるあなたは正しい道を教えようと、地図を取り出したとします。
しかしあなたがどんなに精巧な地図を持っていたとしても、あなた自身が目的地への「正しい道筋」を把握していなければ、当然、部下にも教えることはできませんよね。

部下に思いが伝わらない時ほど、まずは冷静になり、自分が伝えたいことの本質を見失わないようにすることが大切です。

まずは自分自身の本質を正確に汲み取ることによって、部下もより上司の言っていることを明確に受け取ることに繋がるのです。



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ここまでは、部下と向き合うための「心構え」についてお話してきましたが、続いてはもう少し実践に寄った内容に触れていきたいと思います。

「管理職・マネージャーが部下と向き合う」ためのヒントとなる、2本の映画をご紹介します。

『マイレージ、マイライフ』(2009/アメリカ)
『マイ・インターン』(2015/アメリカ)

『マイレージ、マイライフ』

【あらすじ】

人事コンサルタントとして長年勤めているライアン(ジョージ・クルーニー)は、雇用主に代わって解雇を宣告する、いわば「リストラ請負人」。
対象者へリストラを告げるため世界中を飛び回るライアンのもとに、ある日ナタリーという新入社員がやってくる。
業務の「効率化」しか頭にないナタリーに、ライアンは「その人の気持ちに寄り添うこと」の大切さを教えていく。




見どころ1 新入社員ナタリーが示す、現代の働き方の理想

(c)角川映画

この作品のライアンのように、ある日配属された部下が、自分とはまったく正反対の価値観を持つ人間だったらどのように対処すればいいのでしょうか
実際、同じような悩みに直面する管理職の方は非常に多いことでしょう。

この作品における新入社員のナタリーは、いわば「現代の若者」の象徴に置き換えが可能なキャラクターです。
仕事には意欲を見せるものの、その意欲の内訳は「目の前の利益」や「効率」を追求するだけの、ある意味即物的なものです。

だからこそ劇中、彼女は仕事に熱中するあまり結婚を約束していた恋人にフラれてしまうのですが、途端に彼女は仕事への意欲も失ってしまいます
彼女にとっての「仕事への意欲」とは、自身の実生活の安穏とセットだったわけです。

しかし彼女が特殊なのだとは決して言いきれません。
ここ数年で働き方にも随分と多様性が生まれた背景に目を向けてみるべきでしょう。

「ワークライフバランス」という言葉が頻繁に聞かれるように、仕事とプライベートの両立を重視する社員は、今や少なくないのです。

ナタリーというキャラクターはまさに、これからさらに変遷を見せていく現代社会での「人それぞれに働き方の理想がある」というメッセージを象徴しているとも言えるでしょう。




見どころ2 当たり前だが見失いがちなもの

(c)角川映画

一方のライアンは、絵に描いたような「仕事人間」です。

彼は仕事の関係上、世界中へ出張するのですが、その際の渡航で溜まる「マイル」を眺めるのを趣味としています。
言い換えれば、彼の趣味とは「仕事」なのです。

そんな彼の仕事ぶりはある意味ではルーティン化された単調なものにも見えるのですが、そんな彼がこれだけは忘れまいと誓うある思いがあります。
それは『「人」と仕事をしている』ということ。

当然ながら、わたしたちのいずれの仕事も、「人」の媒介なしには成立しない仕事ばかりです。
たとえ、たった一度だけしか会うことのない営業相手であったとしても、確かにその一瞬は、互いに言葉を交わし合うのです。

この本質は、当たり前のようでいて忘れてしまいがちなものでもあります。
その当たり前を、ライアンはナタリーに教えていくのです。

しかし本作の白眉は、「ありがちな教訓」で終わらない意外な展開が待ち受けているところにあると言ってもいいでしょう。
その「ある出来事」は、ナタリーにもそしてライアンにも大きな変化をもたらしていきます。

その結末は、ぜひご自身の目で確かめてみてください。

『マイ・インターン』

【あらすじ】

ニューヨークの大手ファッションサイト運営会社の社長ジュールズ(アン・ハサウェイ)。
会社の売上も上昇中、プライベートでは結婚もして、公私ともに順風満帆な日々を送っていた彼女。
そんなある日、会社へシニア・インターンのベン(ロバート・デ・ニーロ)がやって来る。
ジュールズとベンの年齢差は40歳。年上の部下ベンとの接し方に、はじめは戸惑うジュールズだったが…。




見どころ1 2人の年齢差は40歳。ジェネレーションギャップが生み出すおかしみ

(c)映画『マイ・インターン』公式サイト

ジュールズとベンの年齢差は実に40歳。先に挙げたライアンとナタリーが父娘のような年齢差であったのに対し、こちらは祖父と孫と言っても成立してしまいそうです。
おまけに『マイレージ、マイライフ』と異なるのは、年下であるジュールズが上司、という点。

この作品はまさに、男女の、そして年齢差の生み出す価値観の相違と、そこからの学びを描いています。

物語はジュールズの視点で進んでいくため、女性の管理職・マネージャーはより共感しやすい作りになっているでしょう。

ジュールズは若くして大企業の社長になるという「理想のキャリア」を叶え、家に帰ると、専業主夫である夫と娘が待ってくれています。

そんな順風満帆な彼女の人生に突如介入してくるのが、シニア・インターンであるベンです。

しかし、そこには単純な「できる上司とできない部下」という図式は当てはまりません。
ベンは定年を迎えたものの、「再度自身の経験を社会に役立てたい」という意思でジュールズの会社へやってくるため、実は「とてもできる男」なのです。

しかし、そんな彼が、時代の最先端であるファッション業界に飛び込み右往左往する様は、演じるロバート・デ・ニーロの名演も相まって、実にチャーミングで、展開的にも飽きずに見ることができます。




見どころ2 部下の姿から、上司もまた学んでいくということ

(c)映画『マイ・インターン』公式サイト

この作品から得られる「部下育成」の学びは、ずばり「部下から教えられるものもたくさんある」ということ。

ベンは、初めてのこと尽くしの仕事においても、その豊富な経験と知恵により、活路を見出していきます。
そしてそんなベンの姿からジュールズもまた、上司としてのあるべき姿を学んでいくのです。

2人の年齢差や、ベンもかつては上司であった境遇などにより、すべての管理職の方に置き換えられるシチュエーションとは言い難いかもしれません。
しかし、たとえ親子ほど年の離れた若い部下であれども、学ぶべき点はたくさんあるでしょう。

「上司=教える立場、部下=教えられる立場」という固定化された概念は、やがては両者の関係に行き詰まりを生んでしまいます。
反対に、たとえば上司のあなたから、

「○○くん、この作業、もう少し効率よくできそうなんだけど、何かいいアイデアは無い?」

と尋ねてみたとします。

そこで思わしい返答が無かったとしても、決して肩を落としてはいけません。
ここで大切なのは「上司が積極的に学びに行く姿勢」を、部下に見せることにあるのです。

その「学ぶ」姿勢が伝われば、部下もまた、上司から学ぼうという意欲を高めてくれることでしょう。

まとめ)フィクションの中にも、答えは見つけられる

映画は、そのほとんどがフィクションです。
今回取り上げた2作品も、実際にはライアンという男性もジュールズという女性も存在しません。

しかし、作品内に込められたメッセージはどれも本物であると、わたしは考えます。

よく言われるのが「管理職は上司と部下の板挟みになって大変だ。誰も味方がいない」というもの。
今回のアンケートで寄せられた意見からも、ある種そうした「孤独感」から来る切実さを感じ取ることができる回答が多くありました。

「周りに相談できる上司や知人がいない」という方もご安心ください。
「映画」は時に、現実世界で活かせるアドバイスに満ちた「よき相談相手」にもなり得るのです。

単純な娯楽として見るのもよし。問題解決の糸口として見るもよし。
そんな間口の広さこそが、映画の魅力かもしれませんね。